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プロサッカー選手としての経験がない自分にとって、「プロの選手とは何か?」を知ることは重要なテーマの一つです。今関わっている選手がプロになることを一つのゴールとするなら、そのゴールを知ることは指導者にとって欠かせないものですが、それが大きく自分の足りないものでもあります。
トップレベルの選手の試合を見て学ぶこともできますが、もっと細かい感覚的な部分や、プレー以外でどういったメンタリティーを持っているのか、サッカー、人生に対してどのような考えを持ち、どんな生活をしているのかといったようなことは、実際に選手と身近に接しなければ、なかなか理解できるものではありません。
しかし先日、運よくトップレベルの選手と接し、さまざまな話を聞く機会に恵まれました。大学の友人とともに、現在エバートンのキャプテンとして活躍するフィル・ネビルに話を聞く機会があったのですが、雑誌や新聞のインタビュー等では聞けないような、リアルな話をたくさん聞くことができました。
フィル・ネビルは、ベッカム、ギグス、スコールズ、そして兄のガリー・ネビルらと同時期にマンチェスター・ユナイテッドの下部組織で育ち、18歳でプロデビュー。イングランド代表にも名を連ね、両サイドバック、ボランチをこなすイングランド屈指のユーティリティープレーヤーです。
もう32歳となりベテランの域に入っていて、国内でも世界でも数多くの経験をしている選手なので、さまざまな面白い話を聞くことができたのですが、全体的な印象として非常にインテリジェンスがあり、話すことも論理的で分かりやすく、特にフットボールの話をするときにはその言葉に力がこもっているのを感じました。一緒に聞いていた友人は「あんなに頭のいいフットボール選手初めて見たよ」といっていました(笑)
そんなフィル・ネビルとの会話の中で、個人的に最も印象に残ったのが”I had to make sacrifice”ということを何度か、力強くいっていたことです。「プロ選手になるために数多くの犠牲を払わなければいけなかった」と。
「ユースチームでプレーしていたとき、学校の友達と遊ぶこともできないし、普通の学生のような生活をすることはできなかった。いわば友達や普通の生活を捨てなければいけなかった。でもプロになるという意志があったから、今ではそれに見合ったものを得ることができていると思う」
他にも、今では考えられないことですが、彼の下部組織時代には、今とはフットボールを取り巻く環境や文化も違って、トップチームの選手の靴磨きや、監督の車を洗ったり、その他にもさまざまな雑用もしていたそうです。
今では下部組織の選手であっても、多くのものが「与えられ」ます。奨学金をもらうなど生活や教育面でのサポート、スポーツ科学面を含めプレーの質を上げるため、コンディションを整えるためのサポート……。それらは選手がプロになる可能性を上げるためには当然必要なことだと思います。
しかし、それが選手を「受け身」の姿勢にさせ、プロになるという意志、ハングリーさをなくしてしまっているという側面もあるのではないか? とフィル・ネビルは危惧していました。ベッカムもチーム練習以外で、1日3回、毎日壁に向かってキックの練習をしていたそうです。ユース時代からプロになってもずっと、です。
さらに、現状を理解した上で、「厳しさ」やピッチ内外での「ハードワーク」等、精神的なことについて話していて、日本で話題にされるようなことと似た話が多くありました。
日本でも与えることと、自主性を促すことのバランス、規律と自由のバランス、厳しさとほめることのバランス等はよく議論されることだと思いますが、今回のフィル・ネビルとの対話を通して、選手としてバランス以前に根本的に持たなければいけないプロ意識、何かを犠牲にしてフットボールに集中すること、自分自身に対しての厳しさの重要性を改めて感じました。
プロの選手という限られた者しかなれない場所にたどり着くための覚悟。そして選手を指導する立場の指導者は、その意識を当然選手以上に持ち続けなければいけないと感じました。 |