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深澤 佑介
イングランド

新・イングランド通信 ~No Football No Life~

深澤 佑介
1986年8月1日生まれ。静岡県出身。
高校まではとにかくサッカーに明け暮れ、卒業後、指導者の道を志し2006年に渡英。1年間アマチュアクラブでプレー後、2007年にリバプールに移り、リバプール・ジョン・ムーアズ大学のサッカー科学部に進学。同時にイングランド・ディビジョン1(プロ3部)のトランメア・ローバーズにて育成部のアシスタントコーチに就任。リバプールFCの下部組織でも研修を受ける。サッカーの母国にて日々悪戦苦闘中。
FAレベル1コーチングライセンス取得。

イングランド

■ヒルズボロの悲劇

2009.4.15


今から20年前、1989年4月15日。この日はリバプールにとって、いやすべてのイングランドフットボールファンにとって忘れられない重要な1日です。

世界のフットボールファンの間でも知られるイングランドフットボール界最大の事件「ヒルズボロの悲劇」。FAカップの準決勝リバプールvsノッティンガム・フォレストの試合が行われたその日、会場であるシェフィールドのヒルズボロ・スタジアムの立ち見席に観客が押し寄せ、96人が死亡、200人以上が負傷するという大惨事が起きました。

この事件を契機にイングランドでは立ち見席を廃止。スタジアムの改装も進み、警備も強化。より一層の安全を目指した努力が繰り返されてきました。現在イングランドのスタジアムが世界有数の快適さを誇る作りになっているのも、このヒルズボロの悲劇が契機となっています。

リバプールのホームスタジアム、アンフィールドの一角にはこの事件の祈念碑が建てられ、”You’ll never walk alone”の文字があるゲートと共に、訪れる人々の足を止めています。

先日のプレミアリーグ、リバプールvsブラックバーン戦。試合前にはヒルズボロの悲劇の犠牲者に対しての追悼セレモニーが行われ、一分間の黙とうが捧げられました。僕自身はこの試合をパブで観戦していたのですが、スタジアムの選手、観客はもちろん、僕のいたパブの店員や客も、普段の騒がしさがうそのように一瞬で静まり、全員で黙とうを捧げました。

当然僕も黙とうしたのですが、正直それまではヒルズボロの悲劇について知ってはいたものの、その事件の持つ意味の大きさ、リバプールの人々が抱いている感情が、ここまでのものだとは理解していませんでした。

ただ黙とうが捧げられたということだけではなく、その厳かな雰囲気、心から犠牲者を悼む気持ち、今後フットボールで悲劇を起こさないという思いが伝わるような雰囲気がそこにはあり、その時間をリバプールの人々と共有することで初めてヒルズボロの悲劇の大きさを多少なりとも感じた気がしました。

あのような空気を感じたことはイングランドでの生活の中でも初めてで、普段は決してヤジや声援のやむことのないスタジアムやパブが完全に静まり返り、人々の特別な表情が生み出すあの空気は、自分にとってある意味ショッキングなものでした。

悲劇から20年ということで、テレビでも特別番組が編成されたり、新聞や各メディアでも改めて20年前のヒルズボロの出来事に対して言及されています。

現在のリバプールFCのキャプテン、スティーブン・ジェラードの従兄弟も、この悲劇の被害者の一人で、この事件が、ジェラードがリバプールFCから離れずプレーを続ける理由だと、本人も語っています。

そのジェラードも”I’ll never forget the Hillsborough.” (僕は決してヒルズボロの悲劇を忘れない)とコメントしていましたが、その気持ちはリバプールファン、イングランドのフットボールに関わるすべての人たちにとっても同様で、僕もその一人として、あのパブで感じた空気を絶対に忘れないように、胸に留めておこうと思いました。

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