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Column コラム

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鈴木 達朗
ドイツ

ドイツ通信
~Probieren wir mal!~
(とりあえず、一緒にやってみよう!)

鈴木 達朗
宮城県出身。中学生からサッカーを始め、大学1年まで競技を続ける。サッカークラブも無い町で、一人でストライカーなどの雑誌を読んでは友人に薦め、「サッカーマニア」と呼ばれる少年時代を過ごす。中学では、クラブチームに所属。小学校で全国大会に出た選手たちを目の当たりにして、早々に挫折。頭を切り替えて、選手時代からコーチの目線で過ごす。学者になるつもりで渡った先のベルリンで、たまたま試合に誘われたクラブから、コーチになることを頼まれて、指導者になる。二足のわらじで大学も卒業し、現在に至る。タイトルは練習中に発する自分の口癖から取ったもの。
Webサイト:http://www.tatsurosuzuki.com/

ドイツ

■インタビュー マーロン・ベントさん
(ベルリンサッカー協会フットサル部門リーグ運営担当、ヘルタ06監督)(後編)

2016.03.08

みなさん、グリュース・ゴット! 前回はベルリンのフットサル界の現状を実際に現場のオーガナイズをしているマーロンさんから話を聞きましたね。1年半ほど前に僕自身が実感に基づいて書いた記事と比べて読んでみると、よりわかりやすいのではないかと思います。現状認識にはそれほど違いはなくとも、現場で働くマーロンは僕ほど楽観的ではなく、現実を見ていることも見て取れると思います。今回のテーマは、ベルリンから離れて、ドイツフットサル界の現状やこれからの見通しについて見ていくことになります。

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マーロン・ベントさん (筆者撮影)

――少し話題を変えようか。つい最近まで、州選抜同士のフットサル・トーナメントを見てきた、といったけれど、ドイツではどの州が強いの?

マーロン いちばんレベルが高いのは西のほうだね、レギオナルリーガ・ベスト(BFLVレギオナルリーガ)がある。それは西ドイツサッカー連盟によって運営されているんだけれど、そこがいちばん強い。この地域はドイツ国内ではフットサルの中心地という利点がある。とてもスリリングなリーグで、高いレベルの試合が見られる。観客やスポンサーといった興行面での動きも見られるし、ドイツが本来ならこうやってフットサルを運営すべき、と考えているロールモデルになる環境が整っているんだ。ここを見れば、将来的にフットサルのブンデスリーガができたときに、どのチームが優勝するのかいつもわからないような緊張感のあるリーグになることが予想できるんじゃないかな。他の州のリーグを見ると、インフラストラクチャーの面でも、競技レベルの面でも、トップとその他のチームの差が大きすぎる。地域差といってしまってはしょうがないけれど、ドイツ西部は彼らの優位な点を生かしていると思うよ。とはいえ、他の地域の州も強豪チームを持っていて、良い選手を輩出しているし、発展していくポテンシャルはある。例えば、ハンブルク、何度もドイツ王者に輝き、強豪チームのハンブルク・パンサーズを基盤にしている。彼らは、ドイツのチームとしてはUEFAカップの第1ラウンドを突破した初のクラブでもある。ドイツのフットサルが徐々に発展している証明でもあるとは思うんだけれど、彼らが均衡しているリーグでプレーしているかといえば、そうではないんだ。だから、レギオナルリーガ・ベストのように均衡したレベルで常に試合ができる環境は理想的だとは思うんだ。

――レギオナルリーガ・ベストって具体的にはどの辺なんだろう? ケルン、ドルトムントあたりかな?

マーロン そうそう、ベストファーレン協会、ミッテルライン協会、ニーダーライン協会やオスト・ベストファーレン協会あたり…、一度確認しないといけないけれど、ケルンやミュンスター、ビーレフェルト、ドルトムント…、まあ、その辺かな。

――ベルリン選抜はそのトーナメントで何位だったの?

マーロン ベルリンは22チーム中6位だったよ。良い結果が出せたと思うよ。僕らがドイツではトップグループに入っていることがわかったからね。メダルがとれるかどうかも、組み合わせの運次第、ということはあるけれどね。ベルリンは最後の試合に勝てば銀メダルを取れる可能性があったんだ。その試合で負けて、最終的に6位まで順位を落としてしまって、その代わりにニーダーザクセンが銀メダルを獲得したんだ。そういうディテールが勝負を分けたわけだけれど、まあ、ベルリンがトップグループに入っていることがわかったのは自信になったし、サッカー協会も喜んでいたよ。

――サッカーのブンデスリーガクラブが本格的にフットサルに参入することはありそう?

マーロン まあ、今でもブンデスリーガでプレーしていて、フットサル部門も持っているクラブはあるけどね。ベルリンのヘルタBSCとかね。ただ、問題は、どの程度クラブから結果を求められていて、それだけのサポートを受けているのか、という点だけれど。ただ、その部門を置いているだけなのか、実際に予算を割いてアクティブに活動しているのか…。現状のフットサルでは後者であることはまずないけれどね。それに、クラブの年会費も払っているのか、どうかもテーマになるし、そういう点では、ブンデスリーガでプレーするような大きなクラブでプレーすることが他の街クラブでプレーすることに比べて大きなメリットかといえば、大した差はないと思うよ。もしかしたら、体育館を使える時間が確保できるメリットは有るかもしれないけれど。でも、まあ、そういったブンデスリーガの大きなクラブがフットサルに競技としても興行としても、その魅力を「発見」して、本格的に動いてくれる可能性がないわけではないしね。そうして、「おお、フットサルでも観客を感激させることができるぞ、興行として成り立つぞ!」というように各クラブが動いてくれれば、大きな成長につながる可能性もあることは考えられるし、そうすれば例えばヘルタ対ウニオン・ベルリンのフットサルの試合でサッカーのダービーと同じように盛りあがるようになるかもしれない。

――ドイツサッカー連盟は冬の室内サッカーをハレンフッスバール(室内サッカー)からフットサルに移行しようとしていて、実際、若い選手たちはフットサルをプレーしている。これから、育成のトップレベルでプレーしていた選手たちがフットサルの選手として参入してくる流れは出てくるのかな?

マーロン 今すぐに、というわけではないけれど…。今の若い子らが幼いうちにフットサルに触れて、大人になるにつれてフットサルに専念するか、サッカーに専念するか、という選択をするタイミングも来るとは思うんだけれど――他の国々もそうだろうし…。フットサルとサッカーの両方を長い期間すること、例えばブラジルはフットサルから始める選手も多いよね。そうして、もし、可能なら、ある程度の年齢になるとサッカーをプレーするようになる。だけど、選手によっては、室内の狭いスペースでプレーに向いている選手もいるし、一方でサッカーの大きなフィールドでのプレーに向いている選手もいる。いつかドイツでもそういった住み分けができるように、育成年代にもフットサルチームができるようになればいいね。現状では、かなり先のことになりそうだけれど、そうなることをフットサルに関わる人々は願っているんだ。

――フットサルのドイツ代表がようやくできるわけだけれど、いつかワールドカップやユーロみたいな国際舞台で他の国々と互角にやり合えるときが来ると思う?

マーロン まあ(苦笑)、それについて話すのはまだまだ、まだまだ早いよ。結成したばかりの新参者のドイツ代表がユーロの予選突破をするのは、とても厳しいものになることは明らかだよ。他国のレベルは圧倒的に高い。彼らはもうずいぶん長い間フットサルをプレーしているんだから。選手ひとりひとりを見ても、彼らは幼いときからトップレベルの環境でフットサルをプレーし続けている。そういった選手が集まって作られるチームは、もちろんプロの世界のレベルだよ。ドイツもいつかはそのようなフットサルのスペシャリストを養成しなければならないし、それが僕らの仕事なんだ。少なくとも、ピッチレベルでのタクティカル、テクニカル、そしてフィジカルのレベルのトレーニングに関しては他国が行っているものと同じレベルのものを提供できるようにしないといけない。今すぐ、プロのブンデスリーガが作られるなんてことはないし、将来的に発展していく可能性はあるとはいえ、現実を見ないといけない。ドイツ代表がフットサルでユーロ予選を突破するには多くの難題が待ち受けていることは確実なんだから。スペインやイタリア、ロシアみたいなトップレベルのチームのことなんて、まだまだ先の話で、彼らについて話すことなんかよりも、まだまだやらなければならないことはいっぱいあるんだ。そんな圧倒的に差がある国々とドイツを比較する必要もない。僕らはフランスやイングランド、スイスにオーストリア、スカンジナビアの北欧の国々といったところと競争していくことになるだろう、というのが現実的なところだね。

――日本のフットサルについても、何かしら耳にすることはある?

マーロン もちろんだよ。代表チームはここ最近のトーナメントで躍進しているし、国際的なビックトーナメントで良い順位を狙える、というのは広く知られているから。国内リーグに関してはよくわからないけれど、代表チームは国際大会では決勝トーナメントに入ってくるチームだからね。そういうところから見て、日本のフットサルリーグはとてもレベルが高いということは当然予想できる。選手一人ひとりのテクニックは高いし、少し遠い将来になるけれど、ドイツが日本のレベルにまで追いついて切磋琢磨できるようになればいいんだけれどね。

――ユーロの最初の何試合かを見てきたんだよね? 面白かったり、興味深いな、と思ったチームだったり気に入ったチームはあった?

マーロン うーん、そうだな…。どのチームが、というのは難しいな。それぞれのチームが各自、自分たちのスタイルを持っているから。一方で、フットサルは発展し続けて、いろんな要素が絡み合って、バリエーションも増え続けているからね…。このチームのスタイル、というよりは、そうだな…。試合の中で起きる現象といったほうがいいかもしれないな…。まあ、そういったことをいえるほど十分な時間、各チームをずっと追いかけてはいなかったけど…(筆者注:インタビューは2月6日に行われた)。ただ、イタリア代表はとても強烈なインパクトがあったことは間違いない。彼らの信じられないほどの戦術的な面での規律、それがパフォーマンスにつながっていたのにはリスペクトをせざるをえないよ。でも、一方で、いわゆるアウトサイダーのチームもとても面白かったよ。ある意味では”大胆”ともいえるようなプレーを見せたアゼルバイジャンやカザフスタン、そしてハンガリーといったチームだね。だから、ユーロという大舞台では、どの試合でも各国が自分たちの持っている可能性を最大限に生かそうとしているのが見て取れるのはやっぱり面白かったよ。

――そろそろまとめに入ろうか。まずは、ドイツのフットサルはドイツ代表ができる、という大きな一歩を踏みだした。これからどうなるか、興味を持って見守っていくことになるね。

マーロン そうだね。ドイツ代表ができる、というのはドイツのフットサル界が発展していくにはとても大きな一歩だよ。その代表がどのような結果を残せば成功か、というような話をするよりも、まずは代表チームが結成されるということそのものが非常に大きな一歩だということ、それ自体がドイツ全土のフットサルが進展していくためのメリットになるということだね。今すぐ、結果を求めるというよりは、現実を知ったうえで、その動向を楽しみながら追っていかないといけない。でも、代表チームがあるだけで、注目度はだいぶ変わってくるし、もっと真面目に競技として取り扱ってくれるようになる。そうすれば、これから成長していく若い選手たちにフットサル代表選手という目標を提供することができるようになる。そういった目標やプランが定着するようになれば、将来的に、フットサルがもっとプロフェッショナルな環境の中でプレーされるようになることにつながるはずだしね。そういった環境も整えば、選手たちもコンスタントに高いレベルでの試合を繰り返し、大会そのものも面白くなるし、代表のレベルの向上にもつながる。代表チームというシンボリックなものができたことで、僕らが経験してきたものよりも速いスピードで発展していくようになるんじゃないかな、と思っているし、そうなることを願っている。

――今日は時間を取ってくれてありがとう。チームの活動も成功を祈ってるよ。

マーロン ありがとう(笑)今日は君らに負けちゃったけどね(苦笑)

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インタビュー当日に行われた試合の様子(筆者撮影)

今回はここまでです。サッカーではドイツは憧れの舞台のひとつとして数えられますが、ドイツでフットサルの現場に関わっている人たちにとっては、日本は見上げる存在です。もしかすると、日本にいる方々は「それほど環境に恵まれていない」と思われるかもしれませんが、もしかするとドイツの人々も同じように感じているかもしれません。つまるところ、完ぺきなユートピアのようなものはどこにもなく、それは目指すべき場所(トポス)として各個人の頭のなかにある、ということですね。そこを目指して、今ある環境の中で淡々と仕事をし続けていくことは大変なことで、すごいことです。今回のインタビューでは、現場で働いている人々がどんなことを考えているのか、どのようにものを見ているのか、ということが伝わればうれしいです。それでは、チャオ!

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