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鈴木 達朗
ドイツ

ドイツ通信
~Probieren wir mal!~
(とりあえず、一緒にやってみよう!)

鈴木 達朗
宮城県出身。中学生からサッカーを始め、大学1年まで競技を続ける。サッカークラブも無い町で、一人でストライカーなどの雑誌を読んでは友人に薦め、「サッカーマニア」と呼ばれる少年時代を過ごす。中学では、クラブチームに所属。小学校で全国大会に出た選手たちを目の当たりにして、早々に挫折。頭を切り替えて、選手時代からコーチの目線で過ごす。学者になるつもりで渡った先のベルリンで、たまたま試合に誘われたクラブから、コーチになることを頼まれて、指導者になる。二足のわらじで大学も卒業し、現在に至る。タイトルは練習中に発する自分の口癖から取ったもの。
Webサイト:http://www.tatsurosuzuki.com/

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■サッカーのABC(後編)-戦術と言葉とチームプレー

2014.1.24

皆さん、こんにちは。前回は、FCバイエルンのトマス・ミュラーが「自分にとって重要な指導者の一人」といっていた、キムさんの話をしましたね。サッカーのABCのAは基礎動作、Bは戦術、そしてCは適切にボールを扱う感覚ということを話しました。覚えていますか? 前回はA(基礎動作)とC(適切にボールを扱う感覚)の違いについて調べてみました。ですから、今回は、残りのB(戦術)について調べていきましょう。

僕は、このA,B,Cの順番というのはよくできているな、と思います。前回は、言葉の意味をはっきりさせるために、AとCについて書きましたが、実際にはAとCをつなぐものがBの「戦術」ですね。なぜなら、サッカーや対戦相手と勝敗を競い合うゲームでは、Cにある「適切にボールを扱う感覚」の「適切」というものを決めるのが、戦術だからです。戦術という言葉を聞いて、難しく考える必要はありません。状況に応じて、「適切な」行動を行う基準になるのが戦術ということです。

もっと分かりやすくなるように、皆さんが日常で使う言葉で例えてみましょう。みなさんは、朝起きて、「こんばんは」とはいいませんよね? そして、夜寝るときには「おはようございます」ともいわないと思います。ご飯を食べる前には「ごちそうさま」とはいいませんし、食べた後に「いただきます」ともいいません。それはなぜでしょうか?

言葉の意味を考えてもそうですが、そういう当然なものとしての暗黙の了解とされている規則(常識)があるからですね。皆さんは、たぶん深く考えずに、お父さんやお母さんが「おはよう」「こんばんは」「いただきます」や「ごちそうさま」というのをマネしてきたと思います。少なくとも、僕はそうで、言葉の意味を考えたのは、たぶん小説で漢字で書かれているのを読むようになってからです。「お早うございます」「今晩は」「頂きます」「ご馳走様でした」というような漢字ですね。そして、その状況に合わない言葉を使ったとき、両親や先生からは「こういうときに、そういう言葉は使わない」。あるいは「こういうときは、そういう言葉を使いましょう」というように直されたと思います。

サッカーも同じようなものです。つまり、「こういうときは、そういうプレーを選択しない」あるいは「こういうときは、そういうプレーを選択しましょう」ということです。そして、日常生活がそうであるように、「絶対にしてはいけないこと」は決まっているけれど、「ベストな言動」というのは、はっきりしていません。その状況に応じて「適切な」言葉や行動の例があるだけです。つまり、「絶対にしてはいけないこと」をしなければ、チームメイトに被害を与えない範囲で自由を確保されているのがサッカーです。いい換えれば、「試合中の選手の自由を保証するためのルール」が戦術です。これから歴史や公民、倫理の授業で憲法なども習うと思いますが、自由というのは、市民として、公共のルールを守ることを前提としたときに、初めて保証されるものです。

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(バイエルン・ミュンヘンの育成部門用のクラブハウス。筆者撮影)

ここで、先のABCのAの基礎動作を「話すこと、発音の仕方」、Bの戦術を「言葉を使い分けるためのルール(いつ、どこで、だれと、何を、どのように)」、Cの適切のボールを扱う感覚を、「そのルールに則って、適切な言葉を表現する感覚」といい換えてみるとどうでしょう。AとBは教えることも、教わることもできますね。しかし、それらをいかに使うか、というCの部分はその人の感覚によるものです。人を笑わせることができる人、人を感動させることができる人、人を納得させることができる人、いっぱい話すけれど、何をいいたいのか分からない人、いろんな人がいます。サッカーもそうで、例えば、右サイドから相手ディフェンスを避けながらクロスをあげるときに、右足のインフロントで蹴る人や、左足のアウトフロントで蹴る人もいれば、ラボーナで蹴る人もいます。そして、それが目的のところにしっかり飛んで、狙いどおりアシストにつながれば、どれもベストなプレーとなります。

つまり、ある状況(いつ、どこで)何をしなければならないか、というルールに則って(B)、それをしっかりできる技術があれば(A)、「いかに」それを実行するのかは、選手の自由だということです(C)。サッカーで求められる自由、想像力とはそういうものだと、僕は思います。

キムさんがトマス・ミュラーを最も評価している点は、「彼がチームプレーヤー」だという点です。キムさんにとって、もっとも重要なことは「選手がチームの一員として考えること」だそうです。チームとしての目標を達成するために、自分の能力を最大限に生かす方法を考えることができる、ということがトマス・ミュラーの最大の特徴だと思います。つまり、彼は「戦略的に」、どうやったらチームがもっとも機能するのかを考えることができる選手だということです。

選手には、2種類いて、ひとつは「自分の得意なプレーでチームに貢献するするために、とりあえず最低限のルールを守る選手」と「チームをうまく機能させるために、自分に与えられた自由を使う選手」がいると思います。チームスポーツにはどちらのタイプも必要ですが、トマス・ミュラーは間違いなく後者で、こういうタイプの選手を、僕ら指導者は、戦術理解度の高い選手と評価する傾向があると思います。というのも、そういう選手はオフ・ザ・ボールの動きもたいていの場合、的確だからです。

「日本サッカーの父」とも呼ばれるドイツ人のデットマール・クラマーさんは、たまたま練習を見学していて、このキムさんを発見してバイエルン・ミュンヘンにスカウトした方ですが、その方はチームプレーに関して、このようにいっています。「サッカーは思いやりだよ」。つまり、ボールをパスするとき、受け手が次のプレーに移りやすいようにパスを出してあげる。パスを受けるとき、相手が出しやすいタイミングで動いて顔を出してあげる。味方が次にそのスペースを使いやすいように、相手ディフェンスを引きつけてスペースを広げてあげる、といったことを自然にできる選手を「チームプレーヤー」というのだと思います。

皆さんが、このサッカーのABCを身に着けて、グラウンドの上で表現してくれることを願っています。

次回は、今回、少しだけ触れた「戦略」と「戦術」の違いについて書くことにしましょう。

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