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松本 量平
ポルトガル

ポルトガル通信
~Vai evoluir um individual(個人を育てる)~

松本 量平
1983年4月4日生まれ。近大附属高校・関西学院大学卒業。
大阪のスポーツネットサッカークラブでキッズ・ジュニアの指導にあたり、ASラランジャ京都(関西リーグ1部)のTOPチームのコーチを経て、2009年8月にポルトガルに渡る。
ベンフィカU-17・ベンフィカスクールでコーチ経験を積み、現在はポルトガル1部リーグに所属するリオ・アベのTOPチームで研修中。日本サッカー協会公認B級コーチ。

アイルランド

■心電図

2012.1.17


島国である日本に住んでいた者として、海外に出て受ける衝撃というものは、誰もが感じると思いますが、今回は私がポルトガルに来て受けたいちばんの衝撃について紹介したいと思います。

ポルトガルに来て4カ月目、ベンフィカスクールのコーチとして活動させてもらっていたときのこと。

img01

当初はまだ新入りということもあり、アシスタントという立場に従事していました。
ところがある日、メインコーチから「マツモト、来週はお前が練習を担当しろ」という話をもらいました。

私にとってはこの上ない話であり、次の練習までの1週間はどういう練習をしようか、こうゆう場面ではポルトガル語ではこういうんだな、選手たちに気づかせるためにはこんなストーリーの練習の組み立て方をしたほうがいいよな、などと考え、入念な準備を行いました。

そしていざ迎えた練習当日、プランどおりに練習をオーガナイズして選手たちにも内容を説明。ベンフィカでは、練習をオーガナイズするメインコーチにアシスタントコーチが必ず2、3人ついて練習を行うので、この日も私の周りには3人のアシスタントがついてくれていました。

そして練習が始まると思わぬことが起きました。

img02

アシスタントコーチが「ストップ!」といって練習を止めては、「もっとこうするべきだ!」と選手たちに力説し出すのです。私のシナリオでは、そこを選手たちにわざと失敗させることで、自分たちで気づかせたいという意図で練習を組んでいたところでも、他のアシスタントコーチが「ストップ!」「そこはそうじゃない!」と、どんどん勝手に修正を施していくのです。

右側では1人のアシスタントコーチがワーワー、反対側では他のアシスタントコーチがワーワー、その中の選手たちもワーワー、さらには観客席で見ている親たちもワーワーいっていて、感覚としては、自分の練習として全く機能していなかった感覚です。

後で考えれば、事前のスタッフ間の打ち合わせで自分のやりたい意図を伝えておくべきだったと思いますが、アシスタントコーチはメインコーチの主旨に沿うような形で、黒子となって動くのが普通だと思っていたので、衝撃を受けました。

その練習後は相当落ち込みました。

img03

そうしていると私に練習を振ってくれたメインコーチがこんな言葉をかけてくれました。
メインコーチ「マツモト、今日はどうだった?」
マツモト「最悪でした……。全然練習が機能しなかった……」
メインコーチ「これがポルトガルの指導の現場だ。私はこう考える。お前は心電図を知っているよな? 波が上がったり下がったりするアレだ。私にとって人生とはこの波のようなものだと思っている。波の高低が大きいほど生きている証拠だ。もっと強烈に前に出ることもあれば下がるところもある。それこそが指導者にとって大切なことなんじゃないか? その点で考えるとお前の今日の練習はどうだ? 全然、波打っていないよな。すなわち今日のお前の練習は死んでいるのと一緒だよ。もっと前に出るときは出ていく、そういう姿勢でないと、到底この厳しい指導者の道では戦っていけないぞ」

その練習以来、自己主張すること、どうやったらポルトガルの指導現場で自分らしく自己表現ができ、どうやったらアシスタントコーチが口を出せなくなるくらいオリジナルなものを提供でき、選手たちをうまくさせられるかということを必死に考えるようになりました。

この「お前は死んでいるのと一緒」といわれた経験は、もう周りの目は関係なく、とにかくやるしかないと思わせてくれるほど衝撃的であり、貴重な経験になりました。

img04

おかげで今はしっかり生きています(笑)。

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