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井上 信 1983年生まれ。神戸市出身。中学時に在籍していたクラブチームのイタリア遠征がきっかけでカルチョ(イタリアサッカー)の虜になる。2005年夏の阪南大学在学中にペルージャへ旅立ち、イタリアサッカー協会所属のチームと選手契約を交わした。チームとの契約を代理人なしでやり遂げ、フットサルチームなどでもプレーした後、帰国。現在はフレスカ神戸チームスタッフとして活躍中。
Ciao tutti さて、みなさんイタリア人と聞いてまず何をはじめにイメージしますか?
イタリアに留学経験のある人にこの質問をすると、たいていの場合“適当”という答えが返ってきます。これは、イタリア滞在4年の僕も同じことを思うのですが、この適当という言葉、実は2つの意味があるのを皆さんご存知でしたか?
1つ目は、いい加減な様子。 これは、みなさんが想像するいわゆる適当なのでしょう。しかし、もう1つの意味合いとして、ちょうどいい様子・ふさわしい様子とあります。 実は、この2つの意味の「適当」がイタリア人には兼ね備わっているのです。
普段の生活の上で、イタリア人はよく時間を守れない人種というふうにみられています。実際に、僕もイタリアで経験したのですが、待ち合わせ時間に相手が来ないのはよくあり、例えばこんなこともありました。僕が小学生年代の監督をしていたときのこと、ある選手が遅刻してきたのですが、そのときの言い訳が、『だって、渋滞していたんだもの!』。「なんだ、普通に渋滞があっただけなら仕方ない」と思われるかもしれませんが、そうではないのです。というか、僕の教えていたチームは田舎にあるので、到底、渋滞なんてものがあるとは考えられないのです。それでも、子供は平気で渋滞のせいにしようとするのです。それくらい、遅刻を重く見ていないということです。大人の選手でも同じような言い訳を平気でしますからね(苦笑)。
それ以外にも、FSと呼ばれるイタリア国鉄も予定通りに電車が着くほうが珍しいほど、毎回のように遅れてきます。日本では、ほんの数分遅れるだけで大問題ですよね? というように、イタリアでは、時間ひとつとってみても適当、すなわちいい加減な様子がおわかりいただけるでしょう。
そして、もう一つの適当は、カルチョにまつわる適当、すなわちちょうどいい様子です。 例えば、サッカーの練習内容でも、どれだけ指導者が考え抜いたものでも、選手の中にはずる賢い選手もいて、いろいろとルールの裏をついてきます。そのときに、いかに柔軟に練習内容を変更できるかです。こういうときにイタリア人指導者たちは面白いように、うまく練習メニューを変えるか、選手をいいくるめるかしています。そういう、とっさの判断が素晴らしいのです。適当そうに見えて、というか、適当なのだけれども、どんな状況になっても対応できる指導者。適当という言葉は、一見マイナスに見えてプラスでもある。これこそ、カルチョの中での適当なのです。それに、選手の発想力にも驚きます。いかに練習のルールをかいくぐって簡単にこなそうとするか、これが、ファンタジスタの卵たちなのかもしれませんね。
友人のイタリア人指導者も、そういう選手が出てきたときには、ルールを守ろうとしなかったことを怒るのではなく、なぜそうなったのか聞いてあげて、そのこのファンタジーを大事にするそうです。
どうです? みなさんも、選手のファンタジーを消してはいませんか? そして、選手も指導者も、もっともっとファンタジーを持って練習に取り組んでいってはいかがでしょうか?