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倉本 和昌
スペイン

スペイン通信 ~Entrenador KAZU~

倉本 和昌
1982年5月19日生まれ。広島県出身。中学生時代に選手としての限界に気づき、指導者になろうと決意する。高校卒業後、アルバイト期間を経てバルセロナへ。
2006-2007シーズンより、バスク人のみで構成されるアスレティック・ビルバオの育成部コーチに。さらに地元のチーム(U-12)で監督を務めている。スペイン公認コーチングライセンス中級取得。08-09シーズンは、スペインリーグ2部B、バラカルドのスカウト兼ビデオ係およびサントゥチュ13歳チームの監督を務めている。「Entrenador」は指導者の意。

スペイン

■バルサでもっとも速かった選手は……

2009.6.19


パコ・セイルロという名前を聞いたことがあるでしょうか??
現バルサのフィジカルコーチです。最近僕がいちばん気になっている人物でもあります。

彼はもう20年以上もバルサのスタッフとしてクラブに携わっています。それと同時にバルセロナにある体育大学で講師として授業もしているんです。

彼は幼いころからとても目が悪かったそうで、眼鏡をかけてサッカーをすることはできないと、陸上競技に移りました。

そして体育大学を卒業し、バルサに最初に入ったきっかけもバルサの陸上チームのコーチとしてだったんです。バルサに陸上チームがあることも驚きですが……。

そこから偶然にも、バルサのハンドボールチームのフィジカルコーチに就任することになり、彼はそこで「陸上競技(個人競技)とボールを使う団体競技の違い」に気がつきます。そして彼独自の理論を用いて、バルサのハンドボールチームに関わり、結果を出しました。そんなときにある人物が彼を呼んだのです。

そう。それはバルサの監督に就任したクライフなんです。クライフは「私はフィジカルのことについて詳しくないから君がやってくれ」と、パコ・セイルロにお願いしたそうです。それから、会長が変わっても、監督が変わってスタッフ陣が一新しても、ずっとパコ・セイルロはバルサのフィジカルコーチを続けているのです。そのことが彼への信頼を証明することになりますし、その間のバルサの成功は改めて語る必要はないでしょう。

彼の理論は「No- lineal (ノー リネアル=No-ライン)」というもので、サッカーは開かれたスポーツ(状況がめまぐるしく変わるスポーツ)であり、外的要因や内的要因が影響し、「同じ動き」というのは2度と起こらない。
だから、練習でもそのように刺激をさまざまに変えて、同じ動きにならないようにしようというものです。とても簡単にいうとですが……。要するに周りの状況を的確に認識し、それに応じて的確な判断を下せるようになることが、より速く走ることやより力強くキックをすること、よりたくさん走れるようになることより、大切だということです。

しかも彼はフィジカルコーチでありながら「フィジカルトレーニングというのは存在しない」と公言しています(笑)。つまりフィジカル能力を極限まで上げて、そういう選手にサッカーを教えるのではなく、サッカー選手を作り上げるためのフィジカルトレーニングをしましょうということなんです。

この理論は国内でも肯定派、反対派に別れています。僕が通うコーチングスクールでも話題になりました。それもそのはず。彼は「フィジカルコーチはいらない」といっているわけですから、フィジカルコーチとして仕事をしている人からすると面白くない。なので反対しているんです。
それにちょっと抽象的でもあるので分かりにくい。そこでパコ・セイルロが面白い話をしました。

「これまで見てきたバルサの選手でグアルディオラがいちばん速かったといったら皆さんは信じますか?(注、ご存知の通りグアルディオラの足はとっても遅かったですし、当時のメンバーでいちばん速かったのはフィーゴとセルジでした)
私がスピードトレーニングをすると、グアルディオラが最も速く問題を解決し、実行していました。5メートル~20メートルの単なる直線勝負になるとセルジは彼よりはるかに速かったですが、ダッシュの前にプレー状況を読み、走りながら周辺状況を確認し、そしてそのタイミングでそこにいないといけないというときに、必ず彼はそこにいたんです。それによってボールを持つと誰よりも速くプレーをすることができていました。
私はそれができる選手がもっとも速い選手だと認識しています」と。

コンセプトは分かりやすい。
単純にフィジカルの要素だけ切り取ってそれを練習し、サッカーに適応させるのではなく、サッカーの中で必要なフィジカル要素をトレーニングしていくという考え。
むしろフィジカル要素と切り離すのではなく、もっとグローバルな状態、試合に近い状況を作り出すこと。

そういう「速い選手」の流れをくんでいるのがシャビであり、イニエスタなのかもしれません。
知覚、判断の速さもそうですが、サッカーインテリジェンスとも呼べるでしょう。タイミングと的確なポジションニング。正しいポジションとはとどまっていることではなく、タイミングよく(早過ぎても遅過ぎてもいけない)そこに到達することなのです。

ここまでくると、具体的にはどんなトレーニングをしているの? というところが気になりますが、それは彼の下で大学に通って教えてもらうしかなさそうです(笑)

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