|
前回紹介したとおり、今回のテーマはバルダーノ氏による「ラウルトップチームデビューのときの話」。
バルダーノ氏は「ラウルをトップチームに引き上げたときの話は、もうかなり有名かもしれないが、当時17歳だった彼は体も小さく、華奢(きゃしゃ)で、とてもサッカー選手のようには見えなかった。それにそのころはレアル・マドリードBではなく、さらのその下のCチームでプレーしていたんだから。
それこそ誰も知らなかったし、クラブの人間ですら『ホルヘ! 頭がおかしくなったか!』というほどだった。それに当時彼のポジション(センターフォワード)にはレアル・マドリードのアイドル的存在だったブトラゲーニョがいたんだからね。余計にいつ使うのかなど難しい問題だった」
そして、ここでラウルがデビューしたアウェーでのサラゴサ戦のプレー映像が流れました。当時のサラゴサは上位に食い込む強豪チームで、厳しい試合になることが予想されました。まずそんな大事な試合に17歳の選手をデビューさせるなんてすごいですよね……。
ラウルは再三チャンスを作るのですが、とにかくシュートをふかし、ことごとく外していました。おまけに試合にも負け、メディアはこぞってラウルと、そして起用したバルダーノを批判しました。ラウルは1部どころか2部でも使えないなどと。
しかし映像を見る限り、僕は彼のボールを引き出す動き(マークを外す動き)はとんでもない質の高さだとびっくりしました。シュートは確かに外していましたが、そこにいたるまでの動きが美し過ぎる。こんな17歳がいたら確かにすごいと……。
同氏は続けて「しかし、メディアは目の前の結果しか見ず、面白いネタに興味を持ち、誰を標的にするか探っているが、私には彼らには見えないものが見えていた。なぜならラウルとずっと一緒に練習し、彼がどのようなプレーをし、どういう選手かをいちばん知っているのは私(監督)だからね。
試合が終わってものすごい批判がラウルに浴びさせられるだろうと考えたし、それで彼が自信をなくしてしまうことだけは避けたかった。
だから試合が終わった後すぐにロッカールームに入って『ラウル。今日は素晴らしい出来だったぞ。次の試合も当然お前はスタメンだ』とはっきりいって落ち着かせたんだ。
自信をここで失わせてはいけないし、彼なら絶対にやってくれると信じていたからね」と、バルダーノは彼の才能に賭けたわけです。
そして迎えた次の試合はホーム、サンティアゴ・ベルナベウでのアトレティコ・マドリードとのマドリードダービー。
公言したとおりラウルはスタメンで出場。そのときの映像も流れました。
この試合3-0でレアル・マドリードが勝つのですが、なんとラウルは先制点となるPKを奪取、2点目をアシストし、3点目を自ら左足で決めているんです。
バルダーノ氏は「デビュー戦は、右足でばかりシュートを打っていたから外してたけど、次に試合は左足で蹴っているからゴールになったね」と冗談をいっていましたが、事実でした(笑)
3得点に絡む大活躍。それだけでこれまでのラウルに対する批判は吹き飛んだわけです。そして彼へのご褒美として、途中交代させることによって、ラウルがファンからの大きな拍手をたった1人で浴びる機会を作ったのです。
これはこちらでよくやる方法で、その日いちばん活躍した選手を途中交代すれば、その選手一人に拍手が送られるわけで、ラウルに対して観客総立ちで拍手を送っていました。そこからの活躍はあえて語ることもないでしょう。
その後、ラウルとバルダーノの親交は厚く、頻繁に会い、話しをしたり食事をしたりしているそうです。
そしてバルダーノが再びテクニカルディレクターとしてレアル・マドリードに戻ってきたとき、ラウルはチームのキャプテンでした。ロッカールームの中心であり、その彼の信頼を勝ち得ていることで本当に仕事がやりやすかったといっていました。
「自信を誰かに与えることができれば、それは信頼となって必ず自分に返ってくる」とも彼はいっていました。
さて、今シーズンが終わるとレアル・マドリードの会長選挙が行われます。現在有力候補であるフロレンティーノ・ペレス氏が当選すれば、再びバルダーノ氏がテクニカルディレクターとしてレアル・マドリードに戻ってくることになります。
銀河系軍団の再来なるか? 注目ですね。 |