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あなたはプロ監督です。今、2人の優秀な高校生のうち、どちらかをトップチームに引き上げようとしています。あなたならどちらを選びますか?
一人はチームのキャプテンであり、ずば抜けた才能を持っているわけではないが努力家で責任感が強く人望も厚い選手。
もう一人はチームメートにも監督にもまともにあいさつできない変わり者だが、信じられない才能を持っている選手。
これは先日行ってきたホルヘ・バルダーノ氏の講習会で聞いた話です。同氏は86年メキシコワールドカップ・アルゼンチン代表メンバーであり、マラドーナと共にプレーした名選手。引退後は指導者としてレアル・マドリード、バレンシア、テネリフェなどのクラブで指揮を取りました。それだけではなくフロレンティーノ・ペレス会長の下でテクニカル・ディレクターとしてレアル・マドリードの銀河系軍団を作り上げた人物です。
その彼が「タレント(才能)に賭ける」という話をしてくれました。
人選の際、見なければいけないのはその人の欠点ではなく、飛びぬけた長所があるかどうかである。
欠点は誰にでもあるし、そこを見ていたらきりがない。ずば抜けた才能をまず見分けないといけない。
バルダーノ氏がレアル・マドリード監督になった当時、レアル・マドリードは財政難で大物外国人を買ってくることもできず、大幅なプランの修正が求められていました。
そこでバルダーノ氏は「外から連れてこれないなら、下部組織からいい選手を引っ張りあげよう」と思いつきました。
しかし、その当時「下部組織から選手を引っ張ってくる? そんなのわれわれレアル・マドリードがやることではない。そもそもトップチームで使えるわけないだろう? 何を考えているんだ」という意見、批判が圧倒的だったそうです。
ところが彼は「レアル・マドリードというプライドや誇りがあるのはいいが、今は非常事態。非常事態にはこれまでやったことがなかったこともやってみないといけない」と考えました。この考えが後々にジダネス・パボネス(ジダンたち、パボンたちという銀河系軍団のときのプロジェクト)のアイデアにつながっていきます。
そしてBチームやユースの試合を見に行ったり、ダイヤの原石を探しました。
そう、若手選手を本気でトップチームに引き上げようとしていたんです。
そこで目についた選手が2人いました。下部組織の責任者に相談すると一人のほうは「あいつはサッカー選手として才能にあふれているかもしれないが、監督にもチームメートにもあいさつしない。人間的にダメだ。でももう一人は才能は少し劣るかもしれないが、キャプテンとしてチームをまとめてくれているし、真面目で人間的にも優れている。だからそっちのほうがいいんじゃないか」といったそうです。
そこでバルダーノは「そのあいさつできない天才君をくれ。俺が探しているのは人間的にどうのこうのというより、優秀なサッカー選手なんだから。全部責任は取るし俺にその子を6カ月預けてくれたら、チームメートどころか用具係、グラウンド管理人まであいさつできるようにするから(笑)」と強引なまでに、その選手をトップチームに引き抜いたんです。
そう当時を振り返りながら「私はサッカーの監督である。第一にその選手が良い選手かどうかを見る。良い人間であってほしいし、そうあるべきだが、極端な話、あいさつができるかどうかは二の次だ。私は6カ月で彼にあいさつの大切さを教えられるが、彼が持っているサッカーの才能を他の選手に教えることはできない。」といっていました。
面白いです。自分だったら……と考えましたが、ついつい人間的に難のある選手、クセのある選手より、真面目なキャプテンを選んでしまうでしょう。もちろんその選手によると思いますが、考え方としてはそうなりがちです。
つまりバルダーノ氏のいう「才能に賭けていない」ということになります。
この考え方にはハッとさせられました。「そうだ。自分はサッカーの監督になりたいんだ。だったらどうするべきかもう一度考え直さないといけないな……」と。サッカーがうまかったら後は何でもいい、ではいけないですし、限度もあると思いますが、先入観や欠点を先に見て、その選手の長所が見えなくなってしまうということは、気をつけないといけないと思いました。
ちなみに話に出てきた才能あふれる天才君、誰だかわかりますか?
それはグティなんです!! で、グティはその後レアル・マドリードの中心的な存在になっていますが、その真面目なキャプテン君は結局トップチームに上がることもできなかったそうです。
次回は引き続きバルダーノ氏の話で、「ラウルのトップデビュー」について書きたいと思います。 |