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倉本 和昌
スペイン

スペイン通信 ~Entrenador KAZU~

倉本 和昌
1982年5月19日生まれ。広島県出身。中学生時代に選手としての限界に気づき、指導者になろうと決意する。高校卒業後、アルバイト期間を経てバルセロナへ。
2006-2007シーズンより、バスク人のみで構成されるアスレティック・ビルバオの育成部コーチに。さらに地元のチーム(U-12)で監督を務めている。スペイン公認コーチングライセンス中級取得。08-09シーズンは、スペインリーグ2部B、バラカルドのスカウト兼ビデオ係およびサントゥチュ13歳チームの監督を務めている。「Entrenador」は指導者の意。

スペイン

■ファンが及ぼす影響

2009.4.6


なんで「たかがサッカーにこんなに熱くなるんだ?」とふと考えたことはないでしょうか? スポーツの勝敗になんでこんなに一喜一憂するのか。

先日サッカーの素晴らしさを改めて感じる試合に立ち会うことができました。スペイン国王杯準決勝第2戦、アスレチック・ビルバオvsセビージャの試合です。

この試合は水曜日に行われたのですが、なんと偶然にもその前の週の土曜日にも全く同じカードの試合があったのです。つまり土曜日、水曜日と続けてホーム、サン・マメスでセビージャと戦うと。

アスレチック・ビルバオのホアキン・カパロス監督は勝負に出ます。リーグ戦、セビージャ戦のメンバーはほとんどサブで臨み、国王杯に賭けたのです。一方のセビージャもメンバーを落としていましたが、カヌーテやディエゴ・カペルなど主力選手は出場していました。この試合の結果は1-2でセビージャの勝利。

国王杯も同じようになるんじゃないか……と嫌な感覚を覚えましたが、僕以外はそんなことは関係ない。この試合は捨てたんだ。次の国王杯で勝てばいいんだという雰囲気が充満していました。ビルバオに住む人にとって国王杯で決勝に進むことは、チャンピオンズリーグ出場に相当するか、それ以上のことです。
かれこれ24年以上もタイトルから見放されているわけですから。

そして迎えた国王杯当日。すでに1週間前からチケットは完売です。決勝進出するためには絶対に勝たなければいけないアスレチック・ビルバオは、4万人のファンの大声援に支えられていました。

試合開始から声援とブーイングで主審の笛が聞こえないほど。あんな雰囲気でサッカーを見たことはこれまで一度もありません。近い感覚でいえばクリスマスに行ったリバプールのアンフィールドでしょうか。

そのファンの声援に応えようと選手たちは必死に戦っていました。そして……。
開始わずか3分でゴール!! そのゴールで勢いに乗ったアスレチック・ビルバオは立て続けにゴールを決め、なんと前半で3-0。ゴールが決まるたびに揺れ動くスタジアム。僕も隣に座った全く見知らぬ人と抱き合い喜びました。セビージャはもう成す術なしという感じでうなだれていました。まさかこんなことが起こるなんて……と。

あんなプレッシャーの中でまともにプレーすることは難しいんじゃないかと思います。土曜日のリーグ戦とはまるで違う雰囲気、全く違うチームのようでした。

僕の目には3点ともファンの力が生んだゴールに見えたんです。あと一歩で入りそうなところを押し込んだのは彼らの力だったんじゃないでしょうか。ファンの「念」が通じたんじゃないかと思います。

後半はホアキン・カパロス監督直伝(?)の時間稼ぎで相手のリズムを切り、ファンもスタンドにボールが放り込まれるとなかなか返さない。そして別のボールでプレーが再開されそうになると、持っていたボールをグラウンドに投げ込み、試合を中断させるんです(笑)。スタジアムにいる全員が「今、何をしなければいけないか?」をちゃんと把握していました。

結局このまま3-0でアスレチック・ビルバオの勝利。24年ぶりの国王杯決勝進出に感動したファンは、試合後一気にグランドになだれ込みました。その様子はまるでチャンピオンズリーグで優勝したかのよう。

4万人の人を感動させられる。サッカーってすごいです。それにリーグ戦を捨ててでも国王杯に賭けた監督の決断。

同じようにファンの力がすごく、その勢いが試合に影響を与えるなと思ったのはリバプールvsレアル・マドリードのチャンピオンズリーグ。以前友人であるリバプール在住の佑介君も試合のことを書いていましたが、「俺たちの応援でチームを勝たせるんだ」というスタジアムの雰囲気の中で、敵チームが正常にプレーするのは難しいですよね。おまけにゴールを決められたら完全に勢いに乗られてしまいますし。

そんな多くの人に感動を与えられるような試合ができるチームの監督になりたいものですね。


アスレチック・ビルバオvsセビージャ
アスレチック・ビルバオvsセビージャ
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