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倉本 和昌
スペイン

スペイン通信 ~Entrenador KAZU~

倉本 和昌
1982年5月19日生まれ。広島県出身。中学生時代に選手としての限界に気づき、指導者になろうと決意する。高校卒業後、アルバイト期間を経てバルセロナへ。
2006-2007シーズンより、バスク人のみで構成されるアスレティック・ビルバオの育成部コーチに。さらに地元のチーム(U-12)で監督を務めている。スペイン公認コーチングライセンス中級取得。08-09シーズンは、スペインリーグ2部B、バラカルドのスカウト兼ビデオ係およびサントゥチュ13歳チームの監督を務めている。「Entrenador」は指導者の意。

スペイン

■スーペル・デポルの生みの親

2008.12.8


先日行われたコーチングスクールの戦術の授業で、03-04シーズン、チャンピオンズリーグ準々決勝第2戦 デポルティーボ・ラ・コルーニャvsACミランの試合を見ました。

戦術の講師は……そう! その当時、デポルを指揮していたハビエル・イルレタその人です。
先日の授業中にクラスメートからぜひとも試合の解説をしてほしいと要望が出て、それならばとイルレタ監督直々に試合のDVDを持ってきてくれたのです。

今でも語り草になっているこの試合。第1戦ACミランのホーム、サンシーロスタジアムでデポルはなんと1-4で粉砕され、「いくらホームとはいえ第2戦であのミランに3点差以上つけて勝つのは無理だ……」と、誰もがデポルの準決勝進出は不可能だと思っていました。そう、当時のミランはその年のセリエAに優勝するほどの強さを誇り、あのシェフチェンコが全盛期だったのです。

当時のイルレタ監督は「デポルは絶対に準決勝に進出できる。もし、それができたらデポルのマークの入ったポンチョを着て、私は歩いてサンティアゴ・コンポステーラ(巡礼の道)まで行く」と宣言したんですよね。

僕もとても気になっていました。一体その週にどのような準備をしたのだろうかと。歴史的な試合はどのようにして生まれたのか? そのとき監督としてどのように考えていたのかなど。

イルレタ監督は「実は第1戦サンシーロでは1-4で負けたが、前半はかなりうちが有利に試合を進めていたんだ。ゲームを完全に支配していたからね。でも、チャンピオンズリーグで、このレベルの試合になると、寝ぼけていたら一気に叩き潰される(約8分間の間に3点取られた)。
後半に入って立て続けにゴールを決められたからね。でも実際は、点差ほどの差があったわけじゃなかったんだ。だから、ホームでいい試合ができれば逆転も可能だと思っていた」と解説してくれました。

そして、「それでどう準備したかって?? 大量得点で逆転勝ちを収めなければいけないような試合で大切なのは、とにかく早い時間にゴールを奪うこと。そうすれば相手は焦るし、こっちは勢いに乗れる。その週はそのことを徹底的に選手たちの頭にたたき込んだよ」と話をしてくれました。

結果はみなさんもご存知の通り、前半5分にパンディアーニのゴールでデポルが先制するとその後、さらに2点を追加。後半にも1点を取ったデポルが4-0で勝利し、合計得点5-4でACミランを上回って準決勝進出を果たしたのでした。

試合を見て勉強できることもありますが、当時どんな思いで指揮を執っていたのか。チームの雰囲気はどうだったのかなど、その場にいる人しかわからない実態を包み隠さず語ってくれ、本当にためになりました。

ただただ、「すごいなぁ」と感嘆するだけではありましたが。

第1戦、結果だけ見ると大敗ですが、実際の雰囲気や感じ方はそうじゃなかったこと。だからこそ第2戦で逆転できると信じることができたようです。

こうして一流の監督の話が聞け、その人が講師として授業をしてくれるなんて本当に感動です。

尚、授業の終わりに別のクラスメートから「今度はモナコの試合も分析してくれませんか?」と冗談半分でコメントが出ると「モナコの試合のDVDは持ってない!」と見事な返しをしてくれたイルレタ監督。でも、ぼそっと「確かに負けた試合も分析しなければいけないね。見るのも嫌だけど(笑)」とつぶやいていました。

注)同じ03-04のチャンピオンズリーグ予選リーグで、デポルはモナコにアウェーで3-8というとんでもないスコアで敗れているため。

12月中盤になるとテストがあり、戦術の授業も終わり。それでイルレタ監督ともお別れになってしまいます。

彼はきっとその後、どこかのチームで指揮を執ることになるのでしょう。教えてもらったのは短い期間ではありますが、僕にとってイルレタ監督はたくさんいる師匠の一人であります。

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