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倉本 和昌
スペイン

スペイン通信 ~Entrenador KAZU~

倉本 和昌
1982年5月19日生まれ。広島県出身。中学生時代に選手としての限界に気づき、指導者になろうと決意する。高校卒業後、アルバイト期間を経てバルセロナへ。
2006-2007シーズンより、バスク人のみで構成されるアスレティック・ビルバオの育成部コーチに。さらに地元のチーム(U-12)で監督を務めている。スペイン公認コーチングライセンス中級取得。08-09シーズンは、スペインリーグ2部B、バラカルドのスカウト兼ビデオ係およびサントゥチュ13歳チームの監督を務めている。「Entrenador」は指導者の意。

スペイン

■大人の駆け引き?

2008.8.22

先日行われた、バラカルドvsレモナの試合で信じられないことが……。

この試合は4チームによる小さなトーナメント大会だったのですが、僕らは金曜日に準決勝を戦い、その試合に勝てば日曜日に決勝戦を、負けると翌日の土曜日の朝から3位決定戦を戦うという日程でした。レモナはリーグでも戦う相手であり、ここで下手な試合はできません。それに互いがビルバオのチームということで、ライバル関係にもあるわけです。

しかし、チームと選手には色々な思惑がありました。

実はアルベルト監督自身、「この準決勝、いい試合をして負けるっていうのがいちばんいいんだよなぁ……。もちろん最初から負けにいくなんてあり得ないけど、3位で当たる相手のほうがグラウンドの状態もいいし、おまけに日曜日に休める。でも、勝ってしまうと決勝の相手は荒いし、ケガも怖い。しかもグラウンドも悪いしね。さらに日曜日に試合になるから土曜日も練習で、結局休みがなくなるんだ」と話をしていました。

つまり条件的にいうと、いい内容で負けて3位決定戦を戦うほうがチームにとってプラスであると。3位決定戦の場合、相手はバスコニア(アスレチック・ビルバオのサテライトBチーム)であり、場所はアスレチック・ビルバオ総合練習場の立派な天然芝。

それにバスコニアはプロ傘下のチームですから、質の高い選手が多く、しっかりとボールをつないでくる相手なので、力任せに戦ってくる相手と比べたらプレシーズンの調整としてはそっちのほうがいい。

それに決勝まで進むと、土曜日も練習をして日曜日のオフが削られることに。平日に別に仕事を持っている選手たちにとってオフは重要な問題です。

しかし、最初から負けにいってなんてやっていると、今後のチーム作りに響きますし、あからさまにやれば選手自身の評価を下げることになります。いいサッカーをして負ける。そんな理想どおり物事は進むわけないと思っていましたが……。

そして試合は本当にその思惑通りになりました。内容的には完全にレモナをバラカルドが圧倒しているんですが、先制点を取ってさらに攻撃に手を強めるかといったらそうでもない。すると後半ロスタイム(まさにプラン通り?)に、ミドルシュートを相手に決められ1-1の引き分けに。

大会規定で引き分けの場合はPK戦となっており、バラカルドの選手たちは蹴る前から「日曜日休みたいヤツは手を上げて」と、全員わざとPKを外すことに賛同していたようです(失笑)。

そして2-3で迎えたバラカルドの5人目。ここで決めれば3-3の同点でサドンデスに突入。しかし外せばバラカルドの負けが決定。

もう僕は、蹴る前から「絶対外すだろう」と読めていました。もちろんシュートは思いっきり枠を外れ、バラカルドの負け(笑)。これはプレシーズン中の調整試合だったからこそやったことです。

それにしても大人の駆け引きのずるさ、怖さを垣間見てしまいました……。なぜなら次の日のバスコニア戦では、まるで別人のようなパフォーマンスを出していましたから。「いつも全力で」というのは当たり前なのですが、「力の出しどころを知る」ということも必要なことなのだと感じました。

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