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倉本 和昌
スペイン

スペイン通信 ~Entrenador KAZU~

倉本 和昌
1982年5月19日生まれ。広島県出身。中学生時代に選手としての限界に気づき、指導者になろうと決意する。高校卒業後、アルバイト期間を経てバルセロナへ。
2006-2007シーズンより、バスク人のみで構成されるアスレティック・ビルバオの育成部コーチに。さらに地元のチーム(U-12)で監督を務めている。スペイン公認コーチングライセンス中級取得。
「Entrenador」は指導者の意。

スペイン

■プロ選手になるということ

2008.3.27

現在僕がアシスタントコーチをさせてもらっている、サントゥチュ Juvenil A(18歳)が所属するリーグは、育成年代で最も上のカテゴリーに属していることは以前にも紹介したと思います。

過去に何度もこのカテゴリーに昇格していたのですが、これまで一度も残留したことがありません。しかし、今シーズンは残り4試合で、降格圏内にいるチームとの勝ち点差を10にまで引き離すことに成功。
順位も8位と、このままいけばクラブ史上初めて残留という目標を達成することができます。

地域の一クラブであるサントゥチュがそうやって良い成績を収めるとなると、やはり選手たちを見るスカウトの目も光り始めます。これまで誰もマークしていなかったわけですから。

同じリーグにはレアル・ソシエダ、オサスナ、バジャドリッド、アスレティック・ビルバオ、アラベス、ヌマンシアというプロクラブの下部組織のチームがおり、厳しいリーグだけに注目度も高い。活躍すれば注目されるというわかりやすい図式がそこにはあります。

すでにマジョルカ、ヘタフェなどのプロクラブが選手たちのスカウティングにやってきているそうです。

しかし、選手たちがここからいきなりスペインリーグ1部でプレーするわけではありません。それはほとんど不可能です。
ボージャンとかメッシ級でなければ……。
そもそもそんなレベルの選手がいれば、プロクラブの下部組織のスカウトが放っておくことはないわけで、うちにはそんなレベルの選手はいません。

通常、どんな選手も19歳から20代前半はスペインリーグ4部や3部でプレーし、そこで経験を積み、活躍が認められ、さらに上へと上がっていくのです。
上にいければ……の話ですが。

なので、10代後半や20代前半でスペインリーグ1部でデビューし、その後もコンスタントに試合に出ている選手というのは本当にスーパーな選手というわけです。

先日のコラムで紹介した、アスレティック・ビルバオのアイトール・ラモスも3部のチームで活躍し、それが認められアスレティック・ビルバオのサテライトチームに移籍し、そのままトップデビューしています(第39回参照)。

それにメッシにしても、ボージャンにしても、トップデビューする前に高校生の時点でバルサのサテライトチームでプレーしているんです。

なので、マジョルカやヘタフェのスカウトもトップチーム用ではなく、日本でいうサテライトチームのためのものです。

スペインリーグ1部に所属しているクラブのほとんどのサテライトチームは、スペインリーグ3部に所属していますから、そこで経験を積ませるわけです。

日本だとJFLにチームを持っているジェフのような感じですね。
スペインリーグ3部といっても、これから期待の若手や引退間際の元1部の選手などがいるわけですから、レベルは高い。

事実どんなに優秀な若手をそろえても勝ち抜くのは難しく、サテライトチームがスペインリーグ2部にいるチームは現在セビージャだけであり(昨シーズン、レアル・マドリードのサテライトチームは3部へ降格)、さらにバルサのサテライトチームは現在、4部にいるんです。

とはいえ、プロクラブのサテライトに入ることができれば、一応はサッカー選手として食べていくことができます。つまりプロ選手ですね。ただし、いつクビになってもおかしくない世界ですから、ほとんどの選手は大学に通いながらプレーしたり、勉強をして資格を取ったりしています。
つまり「サッカーだけじゃない人生」についても現実的に考えている選手が多いです。中にはサッカーだけで何もしていない、何も考えていない選手もいますが……。

また、プロクラブ傘下のチーム以外で、3部や4部でプレーしている選手のほとんどは、仕事とサッカーのかけ持ちとなります。

そのような世界を実際に見て、経験してきた人がクラブにはいます。
サントゥチュからユース時代にオサスナに引き抜かれ、そのままオサスナのサテライトでプレーし、その後3部や4部のチームを渡り歩いた経験がある人。そう、サントゥチュのJuvenil A(18歳)の現監督であるエリッ。

エリッ監督は先日ミーティングにて、選手たちに「残りリーグ戦は4試合。今いる選手のほとんどは今シーズンが終われば、大人のサッカー界へ仲間入りすることになる。お前らの中にはサッカーをやって食って生きたいってヤツもいるだろうし、頑張り次第では、本当に良いチームから誘いもくるはずだ。
でも、それで浮かれていたらおしまいだ。
現実は厳しい。俺も3部でプレーしていてケガもあったりして、クビになってチームを探し回ったこともある。
それだけリスクの大きな職業だし、足元をしっかりと見据えていかないといけない。『サッカーだけやっていればいい』じゃダメなんだ。好きなサッカー、それも頑張る。でも、少し現実的にもなって、サッカー選手が終わった後の人生のほうが長いということを知っておかないといけない」と彼の体験談を合わせて話をしました。

選手たちはいつも以上に真剣に耳を傾けていたことが印象的でした。

実際に僕たちが関わっていた選手たちの何人かが、もしかしたらプロ選手になる。もちろん彼らの努力、そしてチャンスをつかめるかどうかによりますが。

少なくとも来シーズンは、名のあるクラブに移籍することになる。
そういう状況を目の当たりにできる環境。

そこにいさせてもらえるだけでも光栄なことです。

数年後にもし、誰かがスペインリーグ1部でデビューしたら、泣いて喜びたいと思います。
あっ。今のうちにサインをもらっておかなくちゃ(笑)。

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