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倉本 和昌
スペイン

スペイン通信 ~Entrenador KAZU~

倉本 和昌
1982年5月19日生まれ。広島県出身。中学生時代に選手としての限界に気づき、指導者になろうと決意する。高校卒業後、アルバイト期間を経てバルセロナへ。
2006-2007シーズンより、バスク人のみで構成されるアスレティック・ビルバオの育成部コーチに。さらに地元のチーム(U-12)で監督を務めている。スペイン公認コーチングライセンス中級取得。08-09シーズンは、スペインリーグ2部B、バラカルドのスカウト兼ビデオ係およびサントゥチュ13歳チームの監督を務めている。「Entrenador」は指導者の意。

スペイン

■一生に一度しか来ない列車

2007.11.8

人生の中でたった一度しか来ない列車が今あなたの目の前に止まっています。行き先は遠く離れた夢の国。

この列車に乗るためには、これまで得た物、地位、安定した生活などすべてを捨てなければいけません。この列車には誰もが乗れるわけではありません。
そう。あなたしか乗れないのです。

もし、この列車に乗ってしまったら信頼していた仲間から「裏切り者」と一生呼ばれるかもしれません。友達から「金の亡者」と呼ばれるかもしれません。
二度と今いる場所に戻って来られないかもしれません。
行き先は夢の国というだけで、本当に到着するかどうかもわかりません。

出発はもうすぐ。

さて、あなたはその列車に乗りますか? それとも乗りませんか?――。

シーズン途中にも関わらず、とんでもない契約金を積まれ(推定年俸700万ユーロ=約11億2000万円)、セビージャからイングランドのトットナムに電撃移籍したフアンデ・ラモス監督。

フアンデ・ラモス監督は一生に一回しか来ない列車にちゅうちょもせず乗り込んでしまったというわけです。

フアンデ・ラモス監督の移籍の理由はいろいろあるようですが、
なんといってもトットナムから届いた目もくらむような莫大な金額のオファー、それにセビージャの会長およびテクニカルディレクターとの確執が大きかったといわれています。本当のところは本人しかわからないことでしょうが。

しかし、すごい金額の契約金です。普段もらっている給料の10倍以上のオファーが来れば、誰でも揺れてしまいますね。お金の力は怖い。

ファンデ・ラモス監督は、実はセビージャとは今シーズン終了と同時に契約を打ち切ることが決まっており、もし、このままセビージャに残っていたとしても、来シーズンにはいられないことが、ほとんど確定していました。

ちなみにトットナムからは今シーズン、スタート前からオファーが届いていたのですが、そのときは「セビージャに残る」ことを固く誓っていた同監督。

今シーズン、初めてのチャンピオンズリーグ参戦、プエルタの死と、大きな事件がありました。そして、プエルタのショックからなかなか立ち直れないチーム。
ようやく本来、チームが持つ力を取り戻しつつあるなと思っていた矢先に、同監督の電撃移籍のニュースが……。

まさかね……本気でお金に目がくらんでしまったの? と思いたくなりました。
確かに新しい挑戦であり、監督としては素晴らしいオファーが届いて、プレミアリーグで指揮が執れるという事柄は魅力的に映ったのでしょう。
おまけに所属クラブの会長やテクニカルディレクターとはうまくいっていない。

「出るなら今だ」と考えたのでしょうか。

もちろん僕、一個人の立場から、フアンデ・ラモス監督の状況をすべて把握することはできませんし、同監督の決定に文句をつける権利もないです。

しかし、せめて今シーズン最後までは、セビージャに残ってほしかったというのが僕の思いです。

最後まで事を全うして去るのであれば、理にかなったことであり、きっとセビージャファンからも拍手で送り出されたことでしょう。それだけ大きなことをセビージャで成し遂げてきたのですから。
間違いなくセビージャの歴史の中で、最も優秀な監督であると評価されるでしょう。

しかし、終わり方があまりに悪かったような気がします。プロの世界なら、より良い条件のチームに行くというのは当たり前の行動なのかもしれませんが、今回はあまりに非人道的な気がします……。

セビージャファンは、そしてセビージャの選手たちはどう思っているのでしょうか。

話は始めに戻りますが、僕の場合、一生に一度しか来ない列車に乗るかどうか、一日ぐらいじゃ決断できないです……(失笑)。

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