GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■フットサル女子、ユースオリンピックで銀メダル

2018.10.25

ブエノスアイレスで行われていた15歳から18歳のアスリートによるユースオリンピックで、フットサルの女子日本代表が銀メダルを獲得した。女子フットサルの勢力図は、ブラジルがナンバーワンでそれをスペインとポルトガルが猛追している。今大会は男女そろっての参加ができないため、ブラジルは男子を送り込み女王が不在。当然のごとく、優勝候補はスペインとポルトガルに絞られた。参加は10カ国で、5カ国ずつに分かれてグループリーグを戦い、各グループの上位2カ国がタスキ掛けの準決勝へ進む。スペインとポルトガルは、もちろん別のグループに分かれた。いわば、ガチガチのシード国だ。

日本のU-18代表は、自分たちで予選を戦って出場権を得たわけではない。アジアにはこの年代の国際大会がないのだ。そのため、今年5月にタイで行われたA代表によるアジア女子選手権がユースオリンピック予選を兼ねることとなり、日本は2位で出場権を得た。アジアにU-18の大会がないのだからその年代の日本代表も存在しておらず、今大会のためにチームを編成。9月28日が初顔合わせで、わずか2日間の練習を経てブエノスアイレスへ乗り込んだ。当然、チームとしては初の国際大会参戦であり、国際試合すら経験していない選手もいる。

ポルトガルと同組となった日本は初戦でカメルーンと対戦。フィジカルが強く足が長いという特徴に加え、パスよりも積極的にドリブル突破を仕掛けてくる変則スタイル。フットサルというより、サッカー選手が行うミニサッカーのようでもある。当初は戸惑ったものの、やがて持ち前のパスワークで優位に立って6-2の勝利。次戦のチリにはプレーの正確さで上回り4-1、さらにドミニカも6-2で下して3連勝。この段階で2位以内を確定した。日本は試合順に恵まれたといえるだろう。最も異質なカメルーンが初戦だったことで、国際大会に早く順応することができた。また、いきなりポルトガルと当たって敗れていれば、「もう負けられない」というプレッシャーにより実力が出し切れなかったかもしれない。最終戦はポルトガルに0-2で敗れたが、ここから学ぶものは多かった。

準決勝の相手は、もちろん4戦4勝39得点5失点で1位通過のスペイン。その前に行われた準決勝第1試合は、ポルトガルがボリビアに16
2で大勝。これを観てホルヘは、「よし、銅メダルは獲れる」とほくそ笑んだ。要するに、準決勝は負けると思っていたのだ。

この試合の次の次には男子の準決勝第2試合があり、そのカードがアルゼンチン対ブラジル。地元でもあり、前回のワールドカップ王者のアルゼンチンはグループリーグでイラクに不覚を取って2位通過。早くも準決勝でライバルのブラジルと戦うこととなった。会場には早くもアルゼンチン人観客が大挙詰めかけ、そこにブラジル応援団が国旗を振りながら入場してきた。すさまじいブーイングが飛び交い、やがて両国のチャント合戦という、異様な雰囲気の中で試合は開始された。

日本は先のポルトガル戦同様、非常に守備的な戦術で臨んだ。「ポゼッションは捨てて、とにかくボールをゴールから遠ざける」(木暮賢一郎監督)ことを徹底した。ボールを持った相手選手にフタをし、横や後方へパスをさせる。横へパスされれば再びフタをする。「ラインが上がりすぎると後ろの穴を突かれるので、そこを注意した」(木暮監督)という指示どおり、高からず低からずの絶妙のラインをキープし続ける。これが、ポルトガル戦から学んだことだ。もちろんスペインもあの手この手で切り崩しにかかるが、日本選手は積極的にボールを奪おうとしないため、足を出して逆を突かれることがなく、なかなか数的不利には陥らない。終盤にキックインからミドルシュートを決められ、前半は0-1で終了。しかし内容は一方的だった。

ホルヘは日本ベンチや守備を撮りたかったので日本のゴール際にいたが、日本の攻撃を撮ろうと逆サイドへ陣取った日本人カメラマンのもくろみは大きく外れた。

ところが後半に入ると日本が覚醒。というか、全く別のチームになった。積極的にボールを奪いに行くようになり、そこからアタックという意識をチーム全体が持つようになった。閉めるときは閉めるが、行くときは全開という小気味よいプレーで、なんと立て続けに3得点を決めてしまった。そして、パワープレーの反撃を1失点でしのいで決勝進出。男女各年代を含め、これが日本代表のスペイン戦初勝利となった。予想外の敗戦にスペイン選手はぼうぜん、そして涙、涙だった。

勝因を「プランどおり」と語る木暮監督。前半はボールを遠ざける守備で0-0もしくは0-1で押さえる。さらに前半はスタミナ温存で後半勝負という作戦が見事に決まった。ハーフタイムには「自分の力を出し切れ」とゲキを飛ばし、それが選手たちに火をつけた。前半は、たまに日本ボールになっても、単純なミスキックを連発していた。スペインという名前に負け、ビビッていたのだろう。きっと、相手選手が実際より大きく見えたに違いない。しかし後半になって立ち向かっていくと、自分のプレーが通用することで自信をつけ、互角以上の戦いに持ち込んだ。木暮監督によると、選手たちは試合ごと、あるいは試合の中でどんどん成長していったそうだ。

そして迎えたポルトガルとの決勝戦。ホルヘはゲンを担ぎ、今回も日本ゴール際でカメラを構えた。キックオフからしばらくは日本ベンチを撮影していると、突然「ワー」という大歓声。なんと8秒でポルトガルがゴールを挙げてしまった。

これはゴンカウベスのミドルシュートによるもの。”フィフォー”の愛称で呼ばれる彼女は、ここまでの5試合で17得点を挙げた絶対エース。日本も4分台にポストをたたくなど2回の絶好機があったが、これをものにできず。そして前半さらに2回、後半にも1回“フィフォー”に決められ、1-4で終了した。木暮監督のプランはスペイン戦と同様のものだったが、女性版クリスティアーノ・ロナウドのような“フィフォー”にそれを打ち砕かれた。

しかしスペインを下しての決勝進出は、フットサル界に衝撃を与えた。選手も今大会で成長し自信をつけ、今後はA代表入りしてチームをレベルアップさせていくだろう。「年代別の大会とはいえ世界2位になったことで、これまでは見えていなかった世界1位というものが見えてきた。これからは、それを具体的な目標とすることができる」と木暮監督が語るように、この銀メダルは今後の日本フットサル界発展のための大きな一歩となるだろう。

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