GAKKEN SPORTS BOOKS 最新版サッカールールブック
最新版
サッカールールブック
監修: 高田静夫
著: 三村高之
とっつきにくいサッカールールの内容を、日本人が理解しやすいようにジャンル分けして構成。判定の難しいケースもイラストを多く使って、簡単にわかるように解説。「日本でいちばんわかりやすいルールブック」の最新版。何かあったときに簡単に調べられる。
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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■モンゴルに学ぶ

2015.12.08

 急逝した大相撲の北の湖理事長。現役時代は本当に強かった。当時の力士というのは口が重く、インタビューでも今のようにスラスラとしゃべらなかった。そんな中でも、北の湖は特に無口。インタビューでは、相づち程度の受け答えしかしていなかった記憶がある。通信簿は体育以外オール1だとか、漢字が書けないなどのうわさもあり、しゃべらないのではなく、しゃべれないのだと思っていた。ところが親方や理事長となってからは、いろいろな場面でちゃんと話しており、「北の湖はバカだ」というのはデマだったことがわかった。彼と輪島が両横綱として君臨し、「輪湖時代」といわれたのは1975年前後。大関以下にも人材はおり、日本人力士同士の熱戦がファンを楽しませていた。綾小路きみまろではないが、「あれから40年」。今や横綱はすべてモンゴル勢。大関の照ノ富士、逸ノ城など、他にもモンゴル出身の有望力士がいる。モンゴル相撲経験者の彼らは、足腰が強くて粘りがあるのだそうだ。

 少し前、アマチュア相撲の女性力士のドキュメンタリー番組を見た。国内では第一人者だが国際大会での優勝経験はなく、世界選手権だかに向けて稽古を重ねている日々を追ったものだった。彼女は子どものころから相撲をしているが、外国の選手はレスリングや柔道など他の競技からの転向者がほとんど。相撲経験でははるかに上回っている彼女が、外国勢に勝てないのだ。脚を取るなど変則的なこともするが、とにかくパワーがすごい。彼女曰く、相撲の王道は、低く強く当たって押し出すことだという。立ち合いがすべて。ガーンと当たって相手をのけ反らせ、一気に土俵際へ押し込む。そういえば、相撲の稽古では徹底してこれを行っている。相撲界ではこれが基本と考えられ、子どものときからたたきき込まれているのであろう。まずは立ち合い。まわしを取ってどうこうするのは、二の次と考えられているようだ。

 彼女は男性力士を稽古相手に立ち合いに磨きをかけたが、またしても優勝はできなかった。ここでも、お家芸である相撲で日本人は外国人に後れを取ったのだ。ここでホルヘは、「ひょっとして、稽古の方法が間違っているのではないか」との疑問を持った。モンゴル相撲に立ち合いはない。土俵もないから押し出しもない。初めから組んで、相手を倒すことだけに心血を注ぐ。子どものころからこれだけをやっているから、足腰が強くなる。さらに、相手を振ったり投げたりするので、握力や引手の腕力が鍛えられる。振られたり投げられたりするのを堪えることで、体幹が鍛えられる。しかし王道の相撲では、脚力は前へ出る動きしか養われない。動きは常に直線的なので、粘りに必要な横への動作が不足する。腕力も押す力がメインとなり、引っ張る力はあまり使われない。つまりトレーニングとしては、バランスの悪いもののように思える。王道の立ち合いを否定はしないが、特に子どもの稽古では、もっとほかの要素も取り入れるべきではないだろうか。地方の学校には、校庭の隅に土俵が造られているところがある。そんな環境なら、土俵が開くのを待つ間、校庭でモンゴル相撲のような、相手を倒すことに専念した稽古をすることができる。素人の発想であるが、モンゴル勢と日本人力士の間には少年期の稽古に著しい違いがあるのは明らかで、それが現在の力量の差になっていると推察することは、それほど的を外れているとは思えない。

 サッカーにおいても、トレーニングというか子どもの遊び方に違いがあるように思う。アルゼンチンに限らず南米の国々では、小さな子どもが2人で遊ぶとき、それはボールの奪い合いになる。ボールを持ったほうがその場でキープしたり、狭い範囲をグルグルとドリブルし、もう1人がそれを奪おうとする。ゴールとか攻撃の方向はない。だから、ドリブルも適当な方向。相手を振り切るような早いドリブルではない。ただ、取られないようにするだけ。ボールを取ろうとする相手との対決を楽しんでいる。取ろうとするほうは、手で押したり引っ張ったり反則まがいのこともするが、それも遊びのうち。日本で、子ども2人にボールを与えたらどうなるだろうか。向かい合ってパスをしあうか、攻守を決めてドリブルで相手を抜くようなことをするだろう。国民性なのかどうか知らないが、日本では「対ボール」への意識が強い。しかし南米は「対相手」も同時に意識している。小さなときから、ボールと相手を均等の存在として扱っている。日本人はキックもトラップもドリブルもうまい。しかしフリーでは問題なくできることが、相手のプレスやコンタクトがあると、極端に精度が落ちる。球際に弱いなどとよくいわれるが、実は弱いのは「人際」なのだ。幼少のころから、相手とボディーコンタクトしながらボールに触れている南米のほうが、その点で一日の長があるのは当然だろう。

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