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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■チリ地震が奇跡を呼んだ

2010.3.2

 この週末はチリ地震で大騒ぎだった。日本でも朝から晩まで津波の情報を流して対応を呼びかけていた。その効果があったことと、予想されたような3メートル級の津波が来なかったので、たいした被害は出なかった。しかし地球の裏側の地震で、日本まで津波が届くのだからすごい。ホルヘが生まれた1960年のチリ地震では、発生から約22時間後に4メートル級の津波が三陸地方などを襲い、142人の死者と行方不明者が出たという。そのときは今回のような情報もなかったため、無防備な状況だったことから被害が大きくなった。それにしても、22時間で地球を半周するとは驚きだ。日本からチリまでの直行便はないが、ロサンゼル経由の場合、乗換えを除くフライト時間だけで約22時間。もちろん直線距離を飛行するわけではないので、津波のほうが飛行機より遅い。しかし、プロペラ機より早いのではないか。自然の力は恐ろしい。

 ホルヘのアミーゴはチリにもいる。早速メールを打ったが、返事はない。彼が住んでいるサンティアゴでも、国際空港のロビーで天井が落ちるなどして3日間の閉鎖になったそうだ。地震国なのに、最近の建物でも意外にもろい。アミーゴの家は大丈夫だったのだろうか。3月3日に予定されていたチリ代表のテストマッチも中止となった。これは、コスタリカと北朝鮮相手のワンデー・ツーマッチで、初の試みとして注目されていただけに残念だ。しかし、ビエルサ監督は運が悪い。昨年組まれていたドイツとのテストマッチも、元ドイツ代表GKの自殺でキャンセルとなった。計画が狂ってばかりで、さぞや頭が痛いだろう。

 最近の大地震といえばハイチだ。死者は20万人以上とかで、今回のチリ地震の比ではない。命は助かった被災者たちも、町の崩壊や物資の不足などで復興が見えずに苦しんでいる。こうした人たちに義援金を送ろうと、チリ地震の1日前にベネズエラでチャリティーゲームが行われた。試合はハイチ代表vsオールスターズ。オールスターズのメンバーは現役でないが、元アルゼンチン代表ソリン、元コロンビア代表イギータ、元ボリビア代表エチェベリ、元ウルグアイ代表フランチェスコリ、モンテーロ、元パナマ代表バルデス、元エクアドル代表アギナガら豪華な顔ぶれ。しかし笑っちゃうのは(笑っちゃいけないが)、元チリ代表のサモラーノも参加していたこと。ハイチを励ましに行ったら、自分の国が被災してしまったのだ。お気の毒様、というしかない。

 チリ地震の揺れは、直線距離で1100キロメートル以上離れたブエノスアイレスにも届いた。高層マンションの上のほうはユラユラしたらしい。しかしブエノスアイレスに住んでいる人のほとんどは地震の経験がないので、地震だと思わなかったり、わずかな揺れなのにパニックになったりしたそうだ。また、アルゼンチンでもチリとの国境に近いところでは、建物の崩壊などで6名の死傷者が出ている。

 さて、朝から津波騒ぎだった2月最後の日曜日、ホルヘは東京・杉並リーグのグループリーグ最終戦に臨んだ。A、B、C各グループの1位と、最も成績のいい2位がベスト4に進出するシステム。わがチーム“スーパーミラーズ”は、すでにグループ首位の目はなくなり、2位抜けのワイルドカードに望みを託す。前節を右足親指の負傷で欠場したホルヘにとって、復帰戦が重要な試合となった。何度も書いていることだが、ホルヘの実力はとてもこの大会のレベルにない。他のメンバーが優秀だから、チームとして過去に何度も1部で優勝してきた。もっとも、今は高齢化が進み2部に落ちてしまったが。ハッキリいえるのは、前回のチリ地震と同じ1960年生まれの年寄りで、小中学校時代にサッカーのない環境に育ったホルヘのプレーは、3部リーグでも通用しないということだ。それなのに、これまでのしがらみからチームのドンとして君臨しているのだからタチが悪い。周囲の迷惑かえりみず、10番背負って先発FW。年に3試合程度の参加だが、もう10年くらい得点していないし、最近はシュートすら放っていない。こりゃひょっとして、2部に落ちたのはホルヘのせいか。

 今回の試合は、幸いなことに相手のメンバー到着が遅れて10人でスタート。こちらにはホルヘがいるので、実質10人対10人の五分だ。本当に、数的優位を感じさせない展開だった。ホルヘがボールを触ることはほとんどないのだ。だって、パスが来ないんだもん。そりゃそうだ、パスなんか受けたらすぐに取られる。だから、これは正解。しかし、ダテにフォトジャーナリストとしてトップレベルのサッカーを見ているわけではない。動きの質には自信がある。右からクロスが上がるとき、そのままゴール前に入ったのではかなわないので、こぼれ球を狙い、グッと我慢して遅れて入った。狙い通り、味方FWがトラップミス(本人が「落とした」と主張しても、あれは明らかなミスだった)をして、そのボールに回復したばかりの右足を一閃。アウトにかかったシュートはGKから逃げるようにカーブを描き、右ポストに当たってゴールイン。南米帰りのホルヘが“チリ地震津波パワー”を授かったこのゴールにより、スーパーミラーズは見事に準決勝進出を果たしたのだった。

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