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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■日本代表の秘密兵器

2010.1.7

 年末に帰国したホルヘ。牛丼が300円以下で食べられるし、スーパーに入れば驚きのプライスが並んでいる。これがデフレというやつか。モノによっては、インフレのアルゼンチンより安い。これは、消費者にとってうれしいことだ。しかし、デフレというのは経済状態として正しくない。不況の産物ということだろう。2010年はぜひ、この不況から脱却したいものだ。

 不況は世界的な連鎖だが、日本は独自の力で立ち直れる可能性を秘めている。資源のないわが国は、モノを作ることを産業の柱にしてきた。しかし普通に作るだけだったら、ここまでの先進国になっていない。常に便利なモノ、優れたモノを発明や開発することによって日本製品は世界をリードしてきたのだ。これは、「こんなモノがあったらいいな」とか「こうなれば便利なのに」あるいは「お客さんがより使いやすいように」という発想と、それを実現する技術力があったればこそ。最新のテクノロジーはもちろんのこと、四角いスイカなんかまで作ってしまう。この四角いスイカは、箱詰めのロスをなくすために考えられたらしい。丸いスイカだと箱に3個しか入らないが、四角なら4個入れられて効率がよくなる。この話を外国ですると、「四角いスイカなんて、バカじゃないの?」と笑われる。たしかに、このスイカはさほど普及していないので、成功とはいえないかもしれない。しかし他人が考えつかない新たなアイデアへの挑戦は、失敗や嘲笑(ちょうしょう)がつきものだ。それを恐れずに発明や開発に打ち込んだから、今の発展がある。この道を見失わなければ、日本は他国より早く不況から立ち直れるだろう。

 話は変わるが、帰国したホルヘは行きつけの飲み屋数軒に早速顔を出した。そこで顔なじみの常連から、「ワールドカップでの、日本の組み合わせはどうなの」という質問をたびたび受けた。彼らはサッカー素人の年配者なので、分かりやすく答えなければならない。そこで、「朝青龍と高見盛の対戦では、どっちを応援しますか」と逆質問をしてみた。年配者は、モンゴル人対日本人なので民族意識が刺激され、ヒールの横綱対ベビーフェイスの平幕ということで判官贔屓(はんがんびいき)の気持ちになり、全員が「高見盛を応援する」との答え。そしてその応援の気持ちとは、「なにがなんでも勝て。負けたら承知しねーぞ」という過激なものではなく、「10回やれば1回は勝てるかもしれないから、がんばれ」というソフトなものだという。それは当然だ。朝青龍に敗れ、うつむいて引き上げる高見盛に罵声(ばせい)を浴びせる人などいない。そこでホルヘはいう。「ぜひ、そういった気持ちで日本代表を応援してください」。

 どの試合のデータか知らないが、デンマーク代表の平均身長は183センチ台で、オランダ代表は182センチ台だという。それに対して、日本代表は177センチ台らしい。5~6センチの差というのは大きい。文部科学省の統計では、中学2年生男子の平均身長が159.9センチ、中学3年生が165.4センチとなっている。つまり日本が中2でデンマークやオランダは中3というわけだ。スピードのあるチームとか個人技に優れたチームを相手にする場合は、成功するかどうかは別にして、少なくとも対抗策というものが立てられる。しかし、高さに対してはどうしようもない。どうしようもないから、名古屋のケネディも活躍できるのだ。唯一できることは、ゴール前へクロスが上がったとき、相手のシュートミスかGKのセーブを祈るだけ。何というハンディ戦であろうか。

 しかしここで頼りになるのが、これまで不可能を可能にしてきた日本のテクノロジーと開発力。「サッカーは戦争だ」という言葉もある。ワールドカップには、日本のすべての力を投入しなければならない。わが国の技術屋が本気になれば、ルールに適合した上でプレーにも影響しない、「履くだけで身長が5センチ伸びるシークレットスパイク」というものが作れるのではないか。これさえあれば、身長差など関係なくなる。高さ以外の部分でも優れているオランダには敵わないとしても、デンマークとは互角になれるだろう。問題は、開発費をどこが出すかだ。本来、こういったものはスポーツメーカーが開発する。しかしこのシークレットスパイクは、完成した段階ではルールに適合していても、日本代表がこれを履いて成果を残すと、「不公正だ」ということでやがて使用禁止になる可能性が高い。となると、メーカーは開発費をかけても利益につながらない。したがって開発はメーカーが行い、お金の部分はサッカー協会の受け持ちとする。あとは時間との戦い。本番まではわずか半年。開発チームには、不眠不休でがんばってもらおう。

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