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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■マルガリータ、カンペオン!!

2009.12.25

 “日系人サッカー夏の大会”にマルガリータというチームで参戦したホルヘ。チームは好調で、グループリーグを3-0、4-0、8-0と楽勝で突破し、決勝トーナメントに進出した。しかし、ベスト8からの相手は強豪ばかり。元プロ選手とか元有名クラブのユース選手なんていうのがいるらしい。1回戦、ホルヘは2-0でリードしていた後半開始から出場。しかし、チームの中心であるコージが退場を食らってしまう。相手の1人も同時に退場となったので数的不利は生まれないが、フィールド5人の中にヘタクソが1人いるのと、4人の中に1人とでは大変な差がある。4人に1人ということは、ヘタクソ率25パーセントだ。残りの3人ではとてもカバーしきれない。案の定、すぐに失点して1点差に迫られ、ホルヘはここで交代を命じられた。このさい配が功を奏し、1点を加えて3-1でベスト4へ進出。準決勝の相手はさらに強力だが、ラッキーなことに退場を食らったコージは出場停止にならないという。しかし、試合のレベルがさらに高くなり、メンバーの人数が足りているということは何を示すのか。そう、もはや出場のチャンスはない。ホルヘの夏は、ここで終わった。

 と思っていたが、サッカーは何があるか分からない。0-0の接戦が続く後半11分、点取り屋ニコの負傷により、出番はないと応援に専念していたホルヘに出撃命令が下る。そして試合はそのまま終了し、3人ずつのPK戦に突入した。ここのルールでは、PKの際に軸足を踏み込めない。ボールの横に置いたまま蹴らなければならない。しかも、フットサル用のゴールは小さい。ところがみんな、ポコポコ入れる。「たいしたもんだ。オレだったら、絶対入らないな」と感心して見ていたホルヘだが、フト大変なことに気がついた。「サドンデスになったら、どうしよう」。その不安は的中し、両チームとも3人全員が成功。そしてサドンデスの1人目も両方成功。「次、ホルヘさん行ってください」といわれたが、「いや、GKのユージに蹴ってもらおう」と逃げた。絶対、失敗する。絶対、蹴りたくない。このときの心境を正直に明かすと、「ここで決まってくれ。負けてもいいから、回ってくるな」というものだった。なんというチキンであろうか。

 しかしその願いも空しく、またも両者が決めてしまう。かくして、ついにホルヘに回ってきた。「失敗する、失敗する」と極端なナーバスになっているので、先攻の相手が外したのに全然気が楽にならない。「トゥーキックで思い切り行くしかないな」と意を決しPKポイントに立つと、なんと、ゴール裏には約100名の大観衆がホルヘに注目しているではないか。緊張で脚が震えてきた。だんだん震えが激しくなる。「これ以上激しくならないうちにやっちゃえ」と蹴ったら、ボールが小さいこともあり、ヒットしたのは上の部分。ライナーでズドンをイメージしていたのに、ボールはドライブ回転でコロコロと右ポスト際に転がっている。「ウワッ、やっちゃた」とホルヘは心中で叫び、相手GKはおそらく「ラッキー」と思ったことだろう。事実、GKの手はボールより早くそのコースに届いていた。しかし強力なドライブ回転により、ボールがその手をくぐり抜けたのだ。この奇跡のコロコロドライブシュートにより、マルガリータは決勝進出を決めた。思うに、GKのいないほうへ転がす遠藤より、GKのいるほうに蹴って入れるホルヘのほうが、コロコロPKとしてはレベルが高いのではないだろうか。

 ホルヘのおかげでファイナリストとなったマルガリータは、決勝戦も0-0からPK戦で勝利。今回は3人目で決まった。こうして、初出場初優勝の快挙を達成し、賞品のユニホームを獲得した。まさか、優勝するとは思わなかった。本当に信じられない。すでにお役ご免と思われたホルヘだが、決勝戦にもわずかながら出場している。全員がケガや疲労でボロボロという、「猫の手」ならぬ「ホルヘの足も借りたい」状況だったのだ。そしてそこで、右で切り替えして左でシュート、あわやゴールという見せ場を作った。帰り道、ケントだかタイゾーだかが、「あのプレーには癒されました」といってきた。180分間フル出場した彼らは、現役とはいえ相当きつかったはずだ。そこで、ヘタクソな年寄りががんばっている姿を見て、「励まされた」とか「元気をもらった」ということなのだろう。一生懸命やった当人とすれば、「癒された」という言葉には抵抗がある。しかし次元の違うレベルの高い選手から見ると、ホルヘの一生懸命なプレーはユーモラスに映り、それが癒しとなったのかもしれない。知らないうちに「癒し系選手」になってしまったホルヘ。今後はどの方向に進めばいいのだろうか。


準決勝、決勝のPK戦をしぶとく勝ち上がり、マルガリータ、カンペオーン!
マルガリータ
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