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ブエノスアイレス市内には、A線からE線まで5路線の地下鉄が走っている。この中のB線は、丸の内線の中古車両が使われているので面白い。以前は行先表示も「方南町」などと書かれたまま運行されていた。さすがに今、それはないものの、窓に書かれた「乗務員室」の文字は残っている。
ホルヘの家はC線とE線が交差するインデペンデシア駅に近いので、地下鉄はよく利用する。つまり、慣れ親しんだ乗り物だ。それなのに先日、車両のドアにはさまれるという失態を演じた。額から股間までの身体の中心線を、前後からきれいにはさまれた。ドアはすぐ開いたので車内に滑り込めたが、さすがに恥ずかしかった。こんなことになったのは、習慣による間合いの取り違えだ。ホルヘがドアの約2メートル手前に来たとき、「ブー」という発車のブザーが鳴った。それで小走りに乗り込んだらはさまれたのだ。これは、駆け込み乗車というレベルではない。ドアが目の前にあり、そこでブザーがなったから急いで乗り込んだだけのこと。ブザーが鳴ってから2秒程度でドアが閉まったのだ。いくらブエノスの地下鉄を利用していても、体の奥底には、日本の発車ベル(最近はアラームや音楽か)の長さが感覚として残っている。いうなれば、日本式の間合いが身についていたのだ。その間合いでは「楽勝」のはずだったが、アルゼンチン式の早さの前に惨敗してしまった。
こういうことは、サッカーでも起こる。外国人と試合をすると、間合いが日本人のそれと違うので戸惑うのだ。脚が長くてスピードがあるのはもちろんのこと、体の寄せ方も異なっている。しかもレベルが高くなると、いつも同じリズムでは寄ってこない。意図的か無意識か分からないが、寄せ方に変化をつけている。これは、プロの練習を見ているとよく分かる。だから南米に来たサッカー留学生は、初めのうちはボールキープで苦労する。
しかしいくらアルゼンチンとはいえ、発車ブザーが2秒間というのは短すぎる。そこで、これまで気にもしなかった発車ブザーのデータを取ってみた。すると、ほとんどの場合3.5秒から4秒間は鳴って、それからドアが閉まる。しかし、たまに2秒程度で閉まる場合もあった。日常の中に、決まったリズムで飼いならされないような状況が存在しているのだ。また1913年に開業したA線は、発車の合図は車掌の笛だけ。しかもピーと鳴った後、車両が動き始めてからドアが閉まる。停車の際はもっと危ない。止まる前にドアが開き、ひどいときはそのまま5メートル以上走るのだ。ジェットコースターなどとは違ったスリルが味わえる。そして、このA線の車両は昔ながらの木製。鉄道マニアにとってはお宝のようなものだろう。
さて話は変わるが、下半期の南米チャンピオンを決めるコパ・スダメリカーナの決勝が12月2日に行われ、エクアドルのリーガ・デ・キトが初優勝を飾った。地元の第1レグを5-1の大差でものしたリーガだが、アウェーの第2レグはフルミネンセに圧倒され0-3の敗戦。しかし辛うじてトータル5-4で逃げ切った。リーガはベスト16のトーナメント1回戦でラヌースに4-0、準決勝でウルグアイのリーベルプレートに7-0、そして決勝でもフルミネンセに5-1と、高地キト(標高2800m)の地の利を十二分に生かしての優勝だった。昨年はコパ・リベルタドーレスを制し、今年7月には08年のコパ・リベルタドーレス王者とコパ・スダメリカーナ王者が戦うレコパでブラジルのインテルナシオナルを一蹴と、南米タイトルを総ナメにしている。昨年のコパ・リベルタドーレス制覇後、監督や主力が入れ替わったにもかかわらず、さらに2つのタイトルを獲得。来年はスルガバンク・カップで、ナビスコカップ優勝のFC東京と対戦する。しかしFC東京サポーターは、リーガに勝ったとしても、「南米王者を破った」などと喜んではいけない。その言葉がはけるのは、ホーム&アウェー方式で下した場合だ。平地の、しかもホームの1試合に勝っただけで南米王者を倒したと思われては、フルミネンセなどの高地に散ったクラブに怒られる。
それはともかく、リーガの優勝は縁起がいい。ホルヘが老骨にムチ打って出場する日系人大会が目前に迫った。正式な大会ではないのでユニホームをそろえる必要はなく、チームでシャツの色を統一すればいいらしい。そこでホルヘのチームは、どちらがメインか知らないが、白と黒のシャツで挑むことになった。メインが白、サブが黒というのがリーガのユニホーム。コパ・スダメリカーナ優勝にあやかれるかもしれない。日々トレーニングを積んで体調は万全。帰国直前に一発花を咲かせてやろうと、やる気も満々。さて、どうなるか。詳細は次回。 |