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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■ベテランのトレーニング

2009.11.16

 若者たちに交ざり、たまにミニサッカーをしている。メンバーはほとんどが日本人で、そこにアルゼンチン人とブラジル人が加わる。日本人は元選手か現役なので、なかなかレベルは高い。そのハイレベルなゲームの中で、ホルヘは最近調子がいいのだ。はじめの1、2回は、胸はバクバク、脚はピクピクで10分以上プレーを続けられなかった。楽しさはほとんどなく、苦しむために参加していたようなものだった。しかし回を重ねるごとに体力がアップし、プレー時間は比較にならないほど伸びた。メンバーからも、「最近、動けてますね」とほめられている。彼らはほぼ毎週やっているが、ホルヘが行けるのは月に1度くらい。その程度で体力が向上するわけはなく、好調の理由はジムでトレーニングしているからに他ならない。

 いつもは仲間内でチーム分けをして楽しんでいるのだが、12月の第1日曜日に行われる日系人大会に、このメンバーで出場しようということになった。ホルヘにも、「戦力として参加してください」といううれしいオファーが届いた。なんか、代表に召集されたような気分だ。しかし、これを真に受けるほどホルヘもトント(間抜け)ではない。たまに彼らを食事に招待するから、気を使ってくれているだけなのは百も承知。しかしそれでも、大会出場となるとワクワクする。

 ただ問題なのは、大会が「日系人大会」ということだ。参加する選手のほとんどは、当然のことながら2世から4世の日系人。そして彼らは、ことサッカーに関しては日本人に異常な敵対心を持っているという。日本が貧しかったころ、新天地での成功を夢見て多くの人々が南米へ渡った。そしてそのころ、アルゼンチンは裕福だった。アルゼンチンでは小遣い程度の金額でも日本では価値があり、祖国に残った家族や親戚に送金すると非常に感謝されたそうだ。しかし時は移り、日本は躍進してアルゼンチンは没落。逆に日本へ出稼ぎに行くようになった。日本に行っても外国人扱いされるし、日本企業のアルゼンチン支社へ就職しても日本人社員との待遇の差は大きい。こうした境遇にある日系人の中には、「少なくとも、サッカーでは負けられない」と思っている者がいるそうだ。「裕福な日本から来ている、親のスネかじりのサッカー留学生なんかに負けられるか」という気持ちなのだろう。しかし、アルゼンチンまで来るほどなのだから、留学生はサッカーがうまい。まともにやれば、日系人が負けるかもしれない。そこで、ヒジがズドン、ヒザがボコンということになる。こうしたことで、日本人と日系人が対戦すると、一波乱あることが多いらしい。

 12月の大会ではそんなことにならないことを願うが、いずれにせよ、ホルヘはさらなる向上のためにトレーニングを積まなければならない。しかし、ガンガン鍛えればいいというものではない。ギックリ腰や坐骨神経痛という爆弾を抱えているし、右ヒジはゴルフエルボーになって痛い。したがって、過度のトレーニングは逆効果になりかねない。ストレッチなど入念なアップをし、ウエイトトレーニングは腰やヒジ、ヒザに負担がかからないように気をつける。マシンでのランニングも、時速4.5キロのスロージョギング。ベテランの体調管理とはこういうものだ。カズやゴンも、きっと似たようなものだろう。

 しかし、これほどまでに気をつけていたというのに、つい先ほど、3時間前に大変なことが起こった。それは、ゴミを出しに行ったときのこと。ゴミ捨て場はマンションの各階にあり、そこに置いておけば管理人が土曜日以外の毎日回収してくれる。複雑な分別もなく、非常に便利だ。ホルヘはレジ袋に詰まった一般ゴミをポイと放り、ワインのビンを置いた。すると、ビンが倒れて転がった。それを拾うためにしゃがんだとき、左ヒザの皿のあたりがピリっときた。なんだか不明だが、とにかくヒザを痛めたのだ。こんなことでケガするとは、なんと情けないことか。アップをしなければ、ゴミ出しにも行けないようになってしまった。このヒザが治ったとしても、こんなにモロイ体が日系人大会の「ズドン、ボコン」に耐えられるとは思えない。ハッキリいって、出場するのが怖い。せっかく呼んでもらったが、断ろうか。でもそれって、代表辞退みたいでカッコイイかも。

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