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救世主パレルモ



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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■救世主パレルモ

2009.10.13

“ミドルシュート”という言葉が広く使われるようになったのは、いつごろからだっただろうか。Jリーグが始まったときにはすでに一般的だったと思うが、20年前になるとそうでもなかったはずだ。遠めからズドンと突き刺すのは、すべて“ロングシュート”と呼ばれていた記憶がある。ボールやスパイクの進化によりシュートレンジが伸びたため、ボクシングでスーパー○○級というのが新設されたごとく、ミドルシュートというカテゴリーが登場したと考えられる。しかし、ミドルシュートとロングシュートの境界線はどこなのか。マッチリポートを書くときに、しばしばこの問題に直面する。ロングシュートと書くべきか、ミドルシュートと書くべきか悩むのだ。新聞社などでは、「何メートルから何メートルまでがミドルシュート、それ以上はロングシュートと記すべし」というような社内規定があるのだろうか。それとも、日本のサッカーライターは全員この基準を知っていて、知らぬは地球の裏側のホルヘばかりなのだろうか。とりあえず、ストライカーDXの編集部に聞いてみよう。

 しかし、シュートも40メートルとなると、立派なロングシュートだ。むしろ、“超ロングシュート”と呼ぶべきかもしれない。アルゼンチンリーグの前節で、ボカのパレルモがこれを決めた。しかも、ヘディングでだ。ペナルティーエリアの外へ飛び出したGKが蹴ったボールを、そのままヘッドでシュート。スピンがかかったボールは、右に曲がりながらノーバウンドでサイドネットを揺るがし、決勝点となった。GKのキックをヘッドでカットすることは珍しくない。しかしこれだけの距離があるのに、パスやトラップではなく、ゴールを狙うところがパレルモの非凡さ。“ロコ”(クレイジー)と呼ばれるゆえんでもある。この試合の4日前に行われた、国内組だけによるガーナとのテストマッチでも2得点と好調の彼は、ワールドカップ予選のペルー戦にも当然のごとく召集された。代表の練習でも、当初はメッシやアイマールと同じ組に入り、先発出場となりそうな勢い。しかし、結局は初召集のイグアインにとって代わられた。

 マラドーナは、右SBに起用するためマンチェスター・Cのサバレッタを召集した。彼は右サイドのスペシャリストで、MFの能力もある。守りを固めるであろうペルーに対し、右SBを上がり気味、すなわち3バックに近い形で臨もうという意図。しかし、サバレッタは合流直前の試合で負傷してしまう。この戦術でいくなら、サネッティやアンジレリなどの同タイプを召集しておくべきだが、左SBは3人も呼んでおきながら、右SBのサブはなし。先が読めないというか、抜けているというか、一体マラドーナの頭の中はどうなっているのだろう。そして自分のことは棚に上げて、「(サバレッタを試合に出さない)交渉をするために、誰かがマンチェスターに行かなければならなかった」と、名指しこそしないもののGMのビラルドを批判して責任を押しつけた。なんというワガママ暴君であろうか。もっとも、このときは多少弱気になったようで、日本でも報道されたように、辞任の可能性を口にした。しかし後日の記者会見では、この件を一切否定している。たぶん、一晩寝たら立ち直ったのだろう。

 結局右SBには、このポジションを経験したことがないというMFのグティエレスを起用。これによる守備面の不安を補うため、前線でボールを追えるイグアインがパレルモに替わりレギュラーとなった。しかし試合前のメンバー紹介のとき、最も拍手が多かったのはサブのパレルモに対してだった。またこの試合は、久々に代表復帰を果たしたアイマールがエンガンチェでプレー。マラドーナはこれまでエンガンチェを置かないシステムで戦っていたが、やはりアルゼンチンにはエンガンチェが必要。アイマールを基点にパスがよく通り、前半は終始圧倒した。しかし、ゴールは生まれない。スタンドからは、パレルモコールが沸きあがる。

 そしてついに、後半開始からMFのペレスに替わりパレルモ登場。グティエレスが本職のMFに戻り3-4-3の布陣となった。開始2分、アイマールのパスをイグアインがゲット。マラドーナ采配(さいはい)ズバリ的中、かと思ったが、その後は一方的に攻めまくられる。思いつきで3-4-3にしたが、たぶん練習などしていないのだろう。全く前へボールがつながらない。後半10分ごろから降り出した雨はやがて強さを増し、滝のような豪雨になった。この最悪のコンディションの中、44分にペルーが同点に追いつく。地元で、最下位のペルーに引き分ければ、マラドーナの運命はもはやこれまで。しかしそれを救ったのはパレルモ。ロスタイム2分、ゴールエリア内でインスーアのクロスを押し込んだ。この劇的な幕切れに、マラドーナは水の浮くピッチへダイブして喜びを爆発させ、その後はただ涙。それにしてもパレルモは、なんという強運の持ち主であろうか。そして、ミドルかロングかで悩む必要のないシュートでホルヘをも救ってくれた。グラシアス、パレルモ!


イグアイン
代表初召集で、先発で起用されたFWイグアイン

パレルモ
アルゼンチンを、マラドーナを救う起死回生の決勝ゴール!
パレルモが後半ロスタイムに決めた

雨中戦
滝のような豪雨になったワールドカップ予選ペルー戦
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