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例年、世界各国のリーグがスタートした8月や9月になると、書店に何種類かの「選手名鑑」が並ぶ。これらには、ヨーロッパ主要国の登録選手や移籍情報、リーグ展望などが網羅されている。出版社によって作り方の違いはあるものの、内容は同じようなものが多い。それは当然のこと。対象が同じで収集する情報も同じなら、出来上がったものに大差があるわけがない。
先日、ストライカーDX編集部から、「選手名鑑を作るので、アルゼンチンリーグの部分を手伝ってもらいたい」という連絡があった。「アルゼンチンリーグだと?」。ストライカーDXが選手名鑑を毎年出しているのかどうかは知らないが、今年作るものはヨーロッパの主要リーグ以外も取り上げるらしい。その中に、日本人選手はおらず、ケーブルテレビでも放送されていないアルゼンチンリーグを加えるのだという。暗黒の世界にスポットを当てるようなものだ。「他社とは違うものを作ろう」という意欲が強く感じられる。成功すれば大英断だが、失敗すれば……。いや、その先を考えるのはやめよう。
ホルヘにとっても、アルゼンチンリーグが注目されるのはありがたい話。やる気満々で仕事に取りかかったが、思わぬ苦戦を強いられた。移籍シーズンなので、予想メンバーやキープレーヤーに選んだ選手が次の日にはいなくなっていたりする。単に情報を羅列すればいいと考えていたが、その情報が日々変化したり、情報そのものが入ってこなかったりする。名鑑作りが、こんなに手間のかかる作業だとは思わなかった。日本からはうかがい知ることのできないアルゼンチン暗黒リーグだが、以前ヨーロッパで活躍し、日韓ワールドカップやドイツワールドカップに出場した選手が何人もプレーしている。さらに、近い将来ヨーロッパでスターになりそうな新鋭も豊富。歌番組にたとえるならば、ヨーロッパは「夜のヒットスタジオ」であり「ザ・ベストテン」なのだ。たとえが古すぎるが、ついてこられるだろうか。そして南米が「にっぽんの歌」を代表とする懐かしのメロディーであり、「スター誕生」のような新人発掘の場といえる。流行歌(この言葉も死語か)ばかりに流されず、古きよきものを忘れずに、また新しい息吹にも目を向ける。この思いを持てば、暗黒の南米サッカーも適度に楽しめるだろう。
さて、名鑑に載るまでに出世したアルゼンチンリーグだが、サッカー界全体の財政危機により、開幕が延期されていた。しかし政府の介入により、2週間遅れながら無事スタートを切った。この経緯を説明しよう。サッカー協会はT y C社と91年から放映権契約を結んでいた。T y C社はスポーツ映像製作会社で、ケーブルテレビに独自のチャンネルも持っている。今期の放映権料は約65億円で、すでに契約済み。しかしサッカー協会は、もっと金が必要になった。そこで倍増を要求するが、当然のことながら却下。そこで政府と話をつけ、国が約180億円を支出し、国営のテレビ局「カナル7」が放映権を持つことを決めた。明らかな契約破棄であり、今後T y C社は損害賠償請求を行うことになる。しかしこの決定により、これまでケーブルテレビかペイパービューだけだったものが、地上波で見られるようになった。6月の選挙で惨敗して落ち目の政府にとって、これは絶好の人気回復策。ちなみに放映は、カナル7だけでなく、他の地上波チャンネルにも割り振られている。
ファンにとって、試合がタダで見られることは喜ばしい。ところが、放送を見ているとどうも違和感がある。その原因は、アナウンサーとコメンテーターだ。これまではT y C社製作だったので、視聴者はその実況に慣れている。さらにこれまでの実績から、優秀な人材はすべてT y C社系列に流れている。人気アナウンサーは特徴を持っており、チャンスになると、「タンカタンカーン」と叫ぶ者などがいて楽しい。ところが地上波の実況は、まるでつまらない。リズムもないし、シャレもない。古館伊知郎の実況で人気を博していたアントニオ猪木の新日本プロレスが、突然NHKで放送されるようなものだ。今回は、たとえが古くて本当に申し訳ない。
放映権がT y C社から離れたことで、もうひとつ喜ばしい変化がある。それは、ゴールシーンが解禁になったこと。試合は金曜から日曜にかけてだが、これまでは日曜日の夜になるまで、スポーツニュースでもゴールシーンは流れなかった。日曜日の午後10時から2時間、「カナル13」という地上波局で「フットボール・デ・プリメーラ」というサッカー番組がある。カナル13とT y C社は同じ企業グループに属しており、まずはここですべてのゴールシーンが流される。そしてその後、深夜12時を過ぎなければ、他局はゴールシーンを放送できなかったのだ。しかし今は土曜日のニュースで、それまでの試合のゴールシーンを見ることができる。これまでは普通だと思っていたが、金曜日の試合の得点が日曜日の夜まで流されないというのは、考えてみればおかしなこと。国内においても、アルゼンチンリーグは暗黒だったようだ。 |