|
先週の日曜は、ボカvsリーベルのスーペル・クラシコだった。今年は両チームとも調子が悪く、この一戦が首位争いにつながらないとはいえ、伝統の大一番であることに変わりはない。外国からの取材も多く、警備の警官は1100人も動員された。しかし試合のほうは盛り上がりに欠け、パレルモの豪快なシュートでボカが先制するも、ガジャルドが直接FKをぶちこんで1-1の引き分けに終わった。
今季からリーベルには、ファビアーニというストライカーが新加入した。選手名鑑には189センチ、84キロなどと書かれてあるが、直近の計測では、100キロを軽くオーバーしているという。栄養士がついて減量作戦を行ったが、さほどの効果は見られない。ガタイを生かしてのパワーファイターだけに、ついたニックネームはオグロ(食人鬼)。その太り過ぎをからかうボカのサポーターは、「日本へ行って、相撲を取れ」と書かれたボードをかざしていた。この試合、彼の出来は悪く、翌日の新聞では3点とか4点という評価だった。しかし、あの巨体での突進は迫力充分。勢いがつくと、2人がかりでも簡単には止められない。今後も、オグロの相撲ファイトに注目したい。
サッカーでは、スタンドから投げ込まれたコインが選手や副審に当たって、試合が中断することがたまにある。あれはかねてから疑問だった。コインくらいが当たったってそんなに痛いわけがない、と思っていたのだ。選手が大げさに痛がるのは分かるが、公平なはずの審判まで、結構痛がっているのが不思議でならなかった。しかし、この疑問がついに解けた。スーペル・クラシコのハーフタイムに、コインがホルヘの頭を直撃したのだ。当たったのは25センターボのコインで、その大きさは500円玉よりわずかに小さい。察するに、スタンドのかなり上のほうから降ってきたのだろう。加速がコインを凶器に変えた。頭に「カチン」と当たった感じではなく、「バキッ」という重い衝撃だった。痛みは頭蓋骨の中まで走り、しばらくは目をつぶって耐えるしかない。幸いにも頭が切れることはなかったが、しばらくジンジンしてた。これにより、「コインは痛い」という教訓を得、銭形平次がまんざらウソじゃないことを実感したのだった。
ホルヘに当たった25センターボは、知り合いのカメラマンの前に転がった。それを拾った彼は、「はい、これはお前のもの」といってコインをくれた。ラッキー。25センターボといえば約7円なので、金額としては喜ぶほどのものではない。しかし今、アルゼンチンではコインが不足しているのだ。これは社会問題になっている。庶民の足はバスだが、車中の券売機はコインしか使えない。つまり、コインがなければバスに乗れないのだ。そしてバス代の大幅な値上げにより、コインが足りなくなった。この元凶は2ペソ札の存在にもある。5、10、25、50センターボと1ペソはコインだが、2ペソ札のおかげで、買い物してもコインでのお釣りは最高が1ペソ90センターボ。しかも正直者のホルヘは、コインを集めたくて3ペソ10センターボの品物に5ペソ札を出しても、レジで「10センターボ持ってませんか」といわれると、「持ってません」とウソがいえずに10センターボを渡して、結局2ペソ札のお釣りをもらってしまう。ああ、もっと図々しくなりたい。
ならば銀行に行けば両替ができるかというと、そこもコイン不足で、断られることが多い。両替してくれても、最高が5ペソ。バスを1回乗り継いだら、目的地までの往復で5ペソは飛んでしまう。このコイン不足を利用して、コインがザクザクと入ってくるバス会社は、これを売っているのだという。銀行が近くにない郊外の町では、「コイン売ります」という看板が出ているそうだ。バス会社から仕入れて、さらに利益分を上乗せして売っているのだろう。また、「お釣りはコインで渡します」を宣伝文句にして、安い駄菓子を高く売っている街頭商人も出没している。
コイン不足で特に困っているのは、喫茶店のウエイターと、往来で人々からの施しを受けている人たち。チップや施しをしようにも、コインは貴重だしお札では多過ぎる気がする。福祉や弱者救済が遅れている南米では、施しを生活の糧にしている人が多い。身体的問題などで働きたくても働けず、その道を歩むしかないのだ。正確なデータは知らないが、彼らの収入も大幅に減っているはず。そこで思い出したのが、コロンビアでの出来事。小さな女の子が、「お金恵んで」といって寄ってきた。あいにく小銭がなかったのでそう告げると、「お釣りがある」という。それで、お札を渡してお釣りをもらった。この手を使おう。2ペソ札を渡して、1ペソのお釣りをもらう。そうすれば彼らの役にも立つし、ホルヘはコインを得られるではないか。 |