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いやー、やっぱりマラドーナは笑わせてくれる。ベネズエラに4-0の後、ボリビアに1-6だもんな。勝っても負けても派手だから、マスコミも大喜びだ。とにかくネタになる。すべからくプロの監督は、こうあってほしいものだ。
ボリビアに敗れた1-6というスコアは、アルゼンチン代表のワーストタイ記録だそうだ。5点差というのは、93年のアメリカワールドカップ予選でコロンビア相手の0-5がある。6失点は、1910年のウルグアイ戦(コパ・オノール)と、1912年のブラジル戦(コパ・ロカ)での2-6が記録に残っている。そして、最多失点(6点)と最多得点差(5点)を合わせたワースト記録は、1958年のスウェーデンワールドカップでチェコスロバキアに敗れた1-6。マラドーナは50年ぶりにこの記録に並んだ。どうせなら、塗り替えてほしかったものだ。
この試合のボリビアは、下位に低迷しているチームとは思えない素晴らしいものだった。しかし、平地であればこんな結果にはならない。1-6と惨敗したのは、標高3650メートルのラパスだったからに他ならない。ところがマラドーナは、敗因が高地にあったことをガンとして口にしない。チェ・ゲバラを信奉する反体制派のマラドーナは、キューバのカストロ前議長やベネズエラのチャベス大統領、ボリビアのモラレス大統領といった左派リーダーと親交がある。FIFAが選手の健康上の理由から、高地での国際試合禁止を決めたときは、体制の権化FIFAに立ち向かうためと盟友モラレス大統領を応援するため、この決定に猛反発した。「人々は生まれ育った場所でサッカーを楽しむ権利がある。この権利は、たとえFIFA会長でも妨げることはできない」とブチ上げ、モラレス大統領とラパスで試合を行い、「健康には、何も問題ない」とアピールした。この活動の効果があったのか、ラパスでの試合は従来どおり行えることになった。こうした事情から、マラドーナは死んでも、「高地のせいだ」とはいえないのだ。
第11節と第12節が続けて行われた今回、代表の集合はボリビア戦の8日前だった。ホルヘが考えるベストの方法は、この時点で第1戦用と第2戦用、2つのチームを作り、ボリビア戦用のチームをラパスに送り込むこと。そうすれば、ラパスに1週間滞在して高地に順応することができた。これに近いことは、過去にパラグアイがやっている。たとえこの案が頭にあったとしても、アルゼンチンの立場ではプライドが邪魔してできなかったはず。しかし今回の惨敗で、プライドも粉砕された。再び同じケースがあれば、この方法を取るのではないか。
高地に苦しんだのは、前節のブラジルも同じ。エクアドルとキトで対戦し、ボロボロだった。1-1の引き分けというのは奇跡みたいなもの。エクアドルのシュートがド下手だったことと、GKジュリオ・セザールの好守に救われた。普通なら4~5点は入っている。日本代表のフィニッシュがつたないといわれるが、このエクアドルに比べれば100倍マシだ。
完全に高地に慣れるには、約1週間かかる。人にもよるが、1~2泊目は頭痛、発熱、下痢などに見舞われることが多い。このため、試合当日に高地入りするという対策が一般的になっている。アルゼンチンもブラジルもそうしている。ブラジルは97年のコパ・アメリカで、当日ラパスに入りボリビアを下して優勝した。しかし最近は、当日入りしてもえらく苦しんでいる。思うにこれは、ドーピング検査がきびしくなったからではないか。以前は、当日入りプラス薬物という方法がとられていたと考えれば納得できる。きっとマラドーナも、FIFAへの抗議としてラパスで試合したときは、何かやってたんだろうな。
ホルヘも、初めてラパスに行ったときは高地の洗礼を受けた。酸素が薄い上に坂が多いので、町を歩いていて酸欠になる。夜中は激しい頭痛に襲われる。ビールの栓を一気に開けると、中身が吹き出してもったいない。少しの酒で酔っ払う(これは経済的でありがたかった)。しかし、1週間もすれば問題がなくなる。ビールも、シューッとガスを抜きながらゆっくり開けるようになる。こうして体が完全に順応してから、チャカルターヤという、標高5800メートルにあるスキー場へ出かけた。ここは、世界でいちばん高いゲレンデだという。ラパスから自動車で約1時間半。着いたとたん、目まいがしてきた。3600メートルに慣れていても、6000メートル近くになると別物だ。スキーは、3回ターンしたら休まないと息が続かない。とにかく息苦しい。薬でも打たないと、とてもスポーツはできない。しかし、酸素不足を解消する薬なんてあるのかな。 |