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日本滞在も残りわずか。アルゼンチンへの帰国が迫っている。となると、忙しいのが買い出しだ。あちらでは入手しにくいものや、手には入るが高価なものなどを出発前に確保する。毎年恒例なのが、痔(ぢ)の薬の買いだめ。デものハレものところかまわず、というが、ホルヘのイボ痔はまさにそれで、普段は肛門の中に鎮座している内痔核(イボ)が突如ハレて、脱肛となって外部に出てくる。「ヤバイな」と思ったら座薬を挿入し、それでも出てしまったら軟膏を使って治療する。つまり、座薬と軟膏の両方を備えておかねばならないのだ。テレビCMで有名なボラギノールなどの市販薬もあるが、医師の処方せんで購入する薬のほうが効き目は強い。さらに、3割負担なので市販薬より安いというメリットもある。ただ問題は、1回で28日分、しかも軟膏か座薬のどちらかしか買えないこと。したがってかかりつけの肛門科に何度も足を運び、座薬28日分、軟膏28日分の購入を繰り返さなくてはならない。
しかし、今回はそんなにたくさんは持って行かないことにした。というのも、昨年座骨神経痛になったおかげでアルゼンチンの女医と懇意になり、彼女に頼めば処方せんを書いてくれるはずだからだ。断っておくが、処方せんを頼むだけで、診察を受けるわけではない。だから、女医さんに肛門をさらす必要もない。だいたいイボ痔の薬なんて決まっているのだから、患部を診なくても、チャチャッと書ける。そしてその処方せんをもって、薬局で購入すればいい。これなら実に合理的だ。さらに、あちらの薬はたぶん日本のものより強いだろうから、“悲願のイボ痔完治”なんてことになるかもしれない。今から、アルゼンチンの座薬を挿入することが楽しみでならない。
このように、現地で調達したほうがいいものもあるが、服などは日本で買っていくに限る。少なくともホルヘには、あちらのサイズが合わないのだ。メッシやアグエロのように、アルゼンチンにも小柄な人は多い。しかし西洋人と日本人は骨格が違う。身長や体重が同じでも、腕の長さや肩幅、胸板の厚さが異なるので、ポロシャツですらしっくりこない。長袖のものなどは、下手すれば指まで隠れてしまう。ところが同じ南米でも、ペルーやボリビア、エクアドルだと、結構サイズが合う。これは、われわれの仲間であるモンゴロイド系のインディオやその混血が多いからだ。しかし、デザインはあまりよろしくない。
日本のものはサイズが合うしデザインもいいし、さらに値段が安い。あちらでは安いものは粗悪品と決まっているが、今の日本はそうではない。中国で安く作ったものでも、生地や縫製はしっかりしている。そうした服が、たとえば無名ブランドのカジュアルシャツなどは、バーゲンなら2000円以下で買える。ときには1000円以下だ。こうなると、物価の安い南米よりも安くなる。
東京・中野ブロードウェイに、ホルヘお気に入りの洋品店がある。ここは、とにかく安い。先日、そこへ行ってきた。冬物バーゲンで、売れ残りのコートが2900円の捨て値で出ていた。アルゼンチンにコートを持っていないので、まずこれをゲット。続いて1000円の洒落たズボンを試着し、これもお買い上げ。店員が「すそ上げはどうしますか」と聞いて来たが、直し代が420円だというので、自分でやることにした。1000円のズボンに420円はかけられない。100円ショップのすそ上げテープが分相応というものだろう。
さらにシャツ類を数点選んだところで目にとまったのが、麻100パーセントのサマージャケット。この時期にあるということは、去年の夏の売れ残りのはず。色も仕立ても素晴らしいが、値段は2800円とバカ安。アルゼンチンはまだ暑いから、このジャケットはちょうどいい。試着すると、丈や肩回りはピッタリだが、胴回りがやや太い。特殊なサイズだったため、売れ残ったようだ。胴回りを直すとなると、5000円くらいかかるという。2800円のジャケットに5000円はかけられない。店員は、「これはボタンを掛けずに、ラフにスポーティーに着るものだから、太さはそんなに気になりませんよ」と無責任にあおる。そういわれると、胴回りの太さもおかしくないような気がしてくる。悩んだ揚げ句、アルゼンチンで直す、という名案に気がついた。あちらでは、多くの洋品店ですそ上げなどをしないため、洋服の修理や直しを専門とする店がたくさんある。値段は、日本より当然安いはず。そういう店に持ち込んで、直し代がジャケットの半額の1400円までだったら直す、それ以上だったら太さを気にせず着る、という決断を下して購入したのだった。
これで衣類の調達は完了したが、食品やお土産など、ホルヘの買い出しはまだまだ続く。 |