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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■ママさん、恐るべし

2009.1.27

 1月15日から、毎年恒例1カ月間の禁酒ラマダンに突入した。11カ月間は毎晩飲んでいるので、この1カ月で身体をリセットしようという、10年以上続いている健康法(?)だ。検査をすると、肝臓の機能だの中性脂肪だのがかなり悪い。しかしラマダン後の再検査では、これが基準値に下がっている。落語の枕で、こんな話を聞いたことがある。1年間の禁酒を決めた男と、その友達の会話。「1年間酒を飲まねえことにした」。「いきなり、そんな無理をすることはねえ。2年禁酒して、1日おきに酒を飲んだらどうだ」。「なるほど、それは名案だ。じゃあ、いっそのこと3年禁酒して、毎日飲もうか」。禁酒してると、この飲んべえの気持ちがよくわかる。しかし最近は、ラマダン後にどれだけ数値が下がるかが楽しくなり、一種のゲーム感覚でアルコールの欲求と戦っている。

 ラマダンに入ってからすぐ、某スポーツ雑誌のゴルフコンペがあった。ホルヘにとってハーフ終了後のビールは、節分の豆まきと同じ。つまり、つきものなのだ。しかし、耐えがたきを耐え忍びがたきを忍び、ノンアルコールでホールアウト。スコアについては、あえて記すまい。無事に終了しただけで御の字なのだ。なにしろ、座骨神経痛という爆弾を抱えている。ハーフスイングを徹底し、ビクビクしながらのラウンドだった。もっとも、フルスイングでブンブン振り回せばOB連発となるので、身体に故障があろうがなかろうが成績に大差はない。

 さて、ゴルフコンペが終わったと思ったら、一難去ってまた一難。25日にサッカーの試合が入った。東京都S区のリーグ戦が始まるのだ。我がチームは同区の名門で過去に何度も優勝しているが、最近は精彩がない。昨年は初の2部リーグを経験した。1年で1部に復帰したが、今年も降格の恐れがある。まあ、東京ヴェルディみたいなものだ。しかも今年の初戦の相手は、昨年のチャンピオンで、その後S区代表として出場の都大会も制した強豪。もとよりホルヘは、1部リーグでプレーできるようなレベルではない。しかしチームオーナーの権限を振りかざし、まわりに迷惑をかけるのを承知でプレーしている。スタメンでピッチに立ち、ひどいときは一度もボールに触らないまま、前半で退くというのがパターン。とはいえ本人なりに努力はしており、酒を抜きながら日々トレーニングに励んでコンディションを整えている。しかし今年は、座骨神経痛で無理ができず、トレーニングもおぼつかない。いまだに全力で走れない、というか全力を出すのが怖いという状況なのだ。それなら試合に出なければいいだろう、と思うだろうが、そうはいかない。人数がギリギリなのだ。ひょっとすると、ホルヘを入れて10人しかそろわないかもしれない。

 10人しかそろわないということは、途中で交代できないということだ。考えただけでも恐ろしい。しかし、やらねばならぬのだ。ということで、少なくとも足がツラないようにトレーニングをすることにした。パートナーに選んだのは、“フォルツァ下高”というママさんサッカーチーム。実はホルヘ、昨年からこのチームの練習のお手伝いをしている。そこで、お手伝いをしながら一緒に練習することにした。ママさん相手なら体力的にもちょうどいい。それに、このチームのレベルが高くないことは昨年で分かっている。

 今や女子サッカーも世界的になってきた。しかしまだ、発展途上国では女子サッカーが育っていない。男子サッカーはプロがあるので、貧しい国でも発展する。プロ選手になって金をもうけよう、という子供がたくさんいるからだ。貧乏から脱出するため、親もそれに期待をかける。しかし、プロのない女子はそうはいかない。たとえサッカーの好きな娘がいても、貧乏な家庭の親は、「そんなことしてないで、働け」という。中国や北朝鮮などの特殊な国家を除けば、女子サッカーの発展は、その国の豊かさのバロメーターといえるかもしれない。そしてママさんサッカーは、そのさらに上の豊かさを計るモノサシなのではないか。女子ワールドカップに出場しているブラジルやアルゼンチンでも、ママさんサッカーというのはあまり耳にしない。あくまで競技としてのトップリーグが存在するだけで、主婦のレクリエーションとしてのサッカーはないようだ。国が豊かで生活に余裕がなければ、ママさんが自分の健康や楽しみのためにサッカーすることは難しい。経済危機や麻生総理がなんだかんだいっても、日本はやっぱり恵まれている。

 さて、ママさんチームの練習に参加してみると、どうも去年と様子が違う。みんな明らかにうまくなっているし、体力もアップしているのだ。その週は火曜から金曜まで毎日練習があるし、2週続けて練習試合を組んでいるという。そりゃ、うまくなるわけだ。ミニゲームに入っても、本気でやったらこっちがケガしそう。スナックのママさんは色っぽくて優しいけど、サッカーのママさんは怖かった。というわけで、適当に流して練習終了。しかしこんなことで、今度のホルヘの試合はどうなるのだろうか。


ママさんサッカーチーム“フォルツァ下高”
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