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先日、東京都S区サッカー連盟の役員会と新年会に出席した。実はホルヘ、20年以上に渡りこの連盟の役員をしている。もっとも、最近はほとんど日本にいないので、常任理事から平理事に格下げされた。連盟の活動は、1月から4月までのリーグ戦と9月から12月までのトーナメント戦をメインに、シニア大会、高校大会、少年大会、さらに選抜チームによる都民大会、リーグ戦覇者が出場する区市町大会、またサッカー教室や審判講習会の開催などがある。ようするに、年間を通してかなり忙しいのだ。このように充実した組織にあっては、1年の内3カ月しか日本にいない者など役に立たない。平とはいえ理事にすえ置いてもらえているだけでも感謝しなければならないだろう。
一昨年、アルゼンチンの審判事情を取材したとき、あちらの審判用品メーカーの社長と仲よくなった。この会社は審判服、警告退場カード、トス用コイン、副審のフラッグなど、審判用グッズだけを扱っている。ブランド名はREGLAⅩⅧ(レグラ18)といい、第18条という意味だ。「サッカーのルールは第1条から第17条までだが、最も大切なのは第18条。第18条、それは“常識”だ」という言葉がある。これは審判講習会などでよく聞かされるもので、サッカー界の名言のように伝えられている。したがってこの審判用品メーカーの名前も、当然ここからつけたのだと思っていた。しかし社長によると、第18条というのは審判の七つ道具という意味だそうだ。「第18条=常識」というのは世界共通ではなかったのだ。
S区サッカー連盟の初代会長は、元国際審判員の福島玄一という方だった。すでに故人となっているが、彼は日本人として初めてオリンピック(東京大会)で笛を吹き、日本人として初めてFIFAから表彰された。連盟の現役員のほとんどは、不肖ホルヘを含めて福島御大の弟子筋にあたり、日本リーグやJリーグの審判員を務めた者もいる。新年会でこの話をすると、アジア諸国では「第18条=常識」が定着しているという。意味からいうと、この「常識」というのは「フェアプレー」に置き換えることもできる。ようするに「常識をもって」、つまり「フェアプレー」でサッカーをしなさいということだ。したがって、これは審判に対する言葉ではなく、選手に対する訓辞といえる。仏教の強いアジアには受け入れられやすい言葉でもある。しかし勝つためには何でもありの南米では、こんなことはチャンチャラおかしい。時間を稼ぐためなら、蹴られてもいないのにノタウチ回るのが常識なのだ。そこで、審判業界の符丁(ふちょう)として「第18条=七つ道具」となったと推測できる。ヨーロッパやアフリカでは、第18条のことを何というのだろうか。
今回の帰国では、S区連盟から注文を受け、REGLAⅩⅧ社のオレンジ色の審判服10着を持ってきた。素材や縫製はイマイチだが、南米らしく色彩は素晴らしい。最近は黒いユニホームが増えているので、カラー審判服も必要だ。しかし個人持ちだと、主審と副審が赤青黄色の信号トリオになることもある。そこで、審判からオーダーをとって一括購入したようだ。しかしこんな準備をしたにもかかわらず、日本サッカー協会が「黒いユニホームは禁止」というルールを追加した。これは国際ルールではなく日本独自の規則。FIFAクラブワールドカップではリーガ・デ・キトが黒いユニホームで戦った。カラー審判服も普及し、地味な存在だった審判がおしゃれになったのに、なぜ日本だけが逆行するように黒のユニホームを禁止するのだろうか。まったく合点がいかない。実はホルヘのチームのユニホームが黒なので、このルールでエライ迷惑を被っている。ホルヘは選手兼監督兼会長兼スポンサーという立場にあり、選手たちから一銭も取らず、大会参加費やユニホームの面倒をみている。こうでもしなければ、48歳のロートルな上、ド下手なホルヘは試合に出られないのだ。この不況下で、約20着を新調するのはつらい。やりくりして資金を捻出(ねんしゅつ)したとしても、日本滞在約3カ月なので、年間3試合程度しか参加できない。引退かチームの身売りを、真剣に考える今日このごろだ。 |