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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■酒と涙と坐骨とお灸

2008.11.12

 標高2800メートルに位置するエクアドルのキトで発症した座骨神経痛は、平地のブエノスアイレスに戻っても、治まるどころか悪化の一途をたどった。左のでん部からふくらはぎがジンジン、ビンビンと痛む。動きによってはビリッとくる激痛もあるが、立っていたり歩くだけでは、シビレ痛いという感じになる。正座して足がしびれたときに似ていなくもない。ジンジンして痛さとかゆさが同時に襲ってくる、あの感覚。ただ、痛みはもっときつい。

 電話帳でみつけた日系の鍼灸医に行くために家を出た。なんとか歩けそうなので、節約のためバスに乗ろうと、約200メートル離れたバス停を目指す。しかし30メートルほど歩くと、左足にジンジンビリビリが始まった。こうなると、一歩も動けない。痛みが引くまで2~3分待って、再び歩き始める。するとまた、20~30メートルでジンジンビリビリ。これを4回繰り返したが、まだバス停までは半分ほどしか来ていない。やむをえず、タクシー利用となった。本当に、エライことになったものだ。

 3日後、ノンストップで50メートル以上歩けるようになったので、バスで鍼灸医に通った。こちらのバスも日本と同じで、料金は自動券売機で払う。ただ、コインしか使えない。料金が90センターボだったので、1ペソを投入すると10センターボのお釣りが出てきた。そしてそのお釣りが、自動券売機から飛び出して下に落ちた。今まで何度となくバスを利用しているが、お釣りが下に落ちたのは初めてのこと。なんでこんなときにこうなるのか。反射的にしゃがんで拾おうとしたら、ビッキーンと左足に激痛が走った。固まった姿勢で痛みに耐えていると、コインを見失ったのかと思った子連れのご夫人が、親切にも「そこにありますよ」と教えてくれた。しかしホルヘは、「しゃがめないんです。拾えません」と涙目で答えるしかなかった。ああ、情けない。

 神経痛などという病気は年寄りのなるものだと思っていたので、まさか自分が患うとは考えてもみなかった。しかし神経痛になったということは、ホルヘはすでに年寄りなのか。あるいは神経痛と年齢は関係ないのか。ただハッキリいえることは、座骨神経痛になった人が意外に多いということだ。ホルヘのアミーゴの中で3人が、「オレも昔やった」といっている。そのうちの1人は軽症だったが、残り2人は重症だった。重症者の1人は、「医者を5人変えたけどダメだった。これは医薬じゃ治らないものだ」といっている。結局彼は、ストレッチや水泳で克服したそうだ。一方、もう1人はお尻に注射を打って回復したという。インターネットで調べてみると、神経ブロック注射というのがある。たぶん、これだろう。痛みがすぐになくなるのなら、試してみる価値がありそうだ。

 通っている鍼灸医は内科医でもあるので、注射のことを相談してみた。なにしろ、針を打ったり灸をすえたりしているが、痛みは一向に治まらないのだ。すると、「じゃあ、処方せんを書いてあげましょう」という。その処方せんをもって薬局に行き、そこで打ってもらうのだそうだ。しかし神経ブロック注射というのは、かなりの技能が必要なはずだ。MRIとかCTスキャンで患部を特定し、ピンポイントで打つものではないのか。脊髄(せきつい)とか、かなり微妙な部位に針を刺すので危険も伴いそうだ。薬局で「毎度あり」といっているオジサンやオニイサンが気軽に打っていいものなのだろうか。こういった疑問がわき、要するにビビッたホルヘは、結局注射はやめた。

 しかしそれでも1週間目から痛みが薄らぎ始め、快方の兆しがみえてきた。注射も薬も飲まず、針と灸と酒だけで座骨神経痛に打ち勝ったのだ。医者から酒は飲むなといわれていたが、あんなに痛けりゃ飲まずにゃおれぬ。飲んで治ったのだから、まさに百薬の長である。もっとも、まだ全快にはほど遠いが。

 ちなみに、薬局で打つ注射というのは神経ブロックではなく、痛み止めの一種だということが判明した。ピンポイントが必要ではなく、そのあたりに打っておけばある程度の効果があるのだとか。本当の神経ブロック注射は、脳神経外科で行うのだそうだ。これで疑問が晴れた。再発したら、今度は薬局へ行ってみよう。

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