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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■南米予選、苦戦の二強

2008.9.16

 ワールドカップ南米予選の第7節と第8節が連続して行われた。第6節終了時での順位は1位パラグアイ(勝ち点13)、2位アルゼンチン(同11)、3位コロンビア(同10)4位チリ(同10)、5位ブラジル(同9)、6位ウルグアイ(同8)……となっていた。

 第7節の注目カードはアルゼンチンvsパラグアイの首位決戦。他にもチリvsブラジル、コロンビアvsウルグアイという上位陣の直接対決があった。ホルヘが足を運んだのはアルゼンチンvsパラグアイ。そして、ひそかにパラグアイを応援した。まだ10節以上残っているので気の早い話ではあるが、この一戦でアルゼンチンを突き放せれば、予選1位突破の可能性が出てくる。これまで南米といえば、ブラジルかアルゼンチンだった。大昔はウルグアイも加わっての三強だったが、今は二強時代。そこに風穴を開ける刺客として、グアラニ魂のパラグアイが登場したのだ。これは応援せずにはいられまい。

 氷雨の中で行われたこの試合、リケルメのFKがバーを叩くなど、立ち上がりはアルゼンチンが優勢。しかし12分、アトランタオリンピックの日本vsブラジルみたいなことが起こる。パラグアイの中盤から蹴ったボールに対し、DFエインセは相手FWと競りながら追い、GKアボンダンシエリは飛び出した。そして両者が激突し、その際にボールがエインセの頭に当たってゴールイン。アボンダンシエリはこれで負傷退場というおまけもついた。さらに、30分にはテベスが2枚目のイエローで退場。「よーし、これでもらった」と思ったが、後半から入ったアグエロが、60分にゴールを決めて引き分けに終わった。戦犯となったエインセは、たぶん周囲から相当攻められたのだろう。「もう、代表ではプレーしない」と口にし、今度は他の選手がそれをなだめるなど、今後に禍根が残りそうな雰囲気もある。

 チリvsブラジルは、この節だけでなく、今予選でホルヘがいちばん気に入った試合だった。ビエルサ監督の下、今年から若手中心で再出発したチリは、なかなかの好チームに仕上がってきた。しかしいかにアウェイとはいえ、相手はブラジル。普通なら、守備的な戦い方となる。しかし、この一戦よりも将来につながる戦い方を望んだビエルサは、格上相手に真っ向勝負を挑んだ。攻めては攻め返されのスリリングな展開。見ていて興奮した。結果はルイス・ファビアーノの2発とロビーニョのFKで0-3の完敗だったが、ブラジルゴールを脅かすシーンもあった。チリにとっては、非常に価値のある敗戦だったはずだ。今予選で守備の強さが光っていたコロンビアは、ホームでウルグアイに0-1で敗れた。

 第8節で爆発したのはチリ。コロンビア相手に4-0の勝利。ブラジルには通じなかったが、チーム力は確実に向上している。来月のアルゼンチンを迎えてのホームゲームが待ち遠しい。一方、ここまで守備だけで上位につけていたコロンビアは、売り物の賞味期限が切れて連敗。攻撃面で見るべきものがなく、早急に立て直さないと、このまま消えてしまう。中盤に、リズムを変えられる選手を起用すべきだろう。

 ブラジルは、最下位のボリビアをホームに迎えた。会場は、リオデジャネイロのジョアン・アベランジェスタジアム。4万5000人収容のキャパシティーをもっているが、かなり空席が目立った。「アンチドゥンガ」とすれば、当然の勝利で彼のクビがつながるのを見たくもなかったのだろう。しかし、相手が10人になったにもかかわらず、なんとスコアレスドローを演じてしまった。これはもう、言い訳できません。

 アルゼンチンのバシーレも窮地に立った。アウェイでのペルー戦は苦しみながらも、82分にカンビアッソのゴールで先制。しかしロスタイムに決められて痛い引き分け。アルゼンチンはこれで5試合勝っていない。第4節から4分け1敗なのだ。バシーレはマスコミ受けが良く、その結果ファンからの受けも良かった。理論派でなく、細かい戦術を押しつけないので選手からも気に入られている。しかし、この成績ではどうしようもない。先のエインセ問題がこじれれば、選手との対立という事態になるかもしれない。今や南米二強によるレースは、どちらの監督が先に辞めるか、という争いになっている。

 しかしホルヘ思うに、アルゼンチンに関しては、今回は予選でたっぷり苦労してほしい。というのは、前回と前々回は予選を楽にクリアして、本番で期待を裏切ったからだ。これは、理論派のビエルサとペケルマンの両監督が、予選中に早々とチームを完成させてしまったことに一因がある。これにより格下との実力差が大きくなり、接戦を経験することが少なかった。またヨーロッパのライバルたちには、分析用の試合サンプルをたっぷり提供することにもなった。だから、今回は同じ轍を踏まないよう、生みの苦しみを味わうべきなのだ。


北京オリンピック決勝でもゴールを決めた、ディ・マリア
北京オリンピック決勝でもゴールを決めた、ディ・マリア
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