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オリンピックが開幕した。アルゼンチンでは、TyC(テー・イ・セー)というケーブルテレビのスポーツ専門チャンネルがメインで放映している。土曜日の朝テレビをつけたら、女子サッカーのアルゼンチン対スウェーデンと女子柔道の48kg級をやっていた。サッカーでスウェーデンが1点先取してしばらくすると、アルゼンチン代表のパレットが登場する柔道の3位決定戦に画像が切り替わった。そこで彼女は北朝鮮の選手を破り銅メダルを獲得。当然、実況も盛り上がった。しかしそのおかげで、谷ヤワラ(こういう呼び方ってあるのだろうか)が出場したもうひとつの3位決定戦が、VTRやインタビューによって追いやられてしまった。このアルゼンチン選手は谷ヤワラに敗れているのだが、インタビューの中で、「あの日本人選手は、(サッカーでいえば)マラドーナみたいな存在だから」と語っていたのが面白かった。
オリンピックには、体操や新体操などの採点競技がある。たまには“疑惑の採点”みたいなものもあるが、真面目にやっているとすれば、採点を下す審判員は大変な仕事だと思う。ホルヘも先日審査員を経験したから、よくわかる。何の審査員かというと、ラプラタ市で行われた日系人による“歌のフェスティバル”である。ようするに、歌合戦というかカラオケ大会みたいなものだ。しかし、今年で24回目を迎えたこの大会は、数ある日系の歌合戦の中でも格式とレベルが高い。最近は、祖母が日本人だという黒人演歌歌手ジェロが有名だし、古くはブラジルの日系人マルシアも活躍した。そしてアルゼンチンからも、矢沢豪やバネサ大城などが日本で歌手デビューしている。彼らも、この大会の常連だったそうだ。日系とはいえ2世、3世ともなれば、日本語がカタコトだったりほとんど話せないという者が少なくない。そんな彼らが、ド演歌からポップスまでを見事に歌い上げるのは、ちょっとした感動ものである。
実はホルヘ、審査員を務めるのは今年で4回目。したがって、そうとう慣れてはいる。しかし、初めてのときは大変だった。もちろん、音楽の素人が採点をするということにも苦労したが、一番気を使ったのは、「自分がここにいていいのだろうか」ということだった。ホルヘに審査員を依頼してきた主催者サイドの人は、「音楽の力量は関係ない。長くここに住んでいる日系人ではなく、新鮮な人にお願いしたい」と趣旨を説明してくれた。したがって、音楽的なことについては開き直ることができたが、他の審査員の顔ぶれを見てビビッてしまった。なにしろ、領事、大使館員、大手企業の現地法人社長などのそうそうたるメンバーである。その中に“フリーのサッカージャーナリスト”といったヤクザな稼業のホルヘが入るのだから、いやー、居心地の悪かったこと。しかし、それも初回のみ。回を重ねるごとに図々しくなっていき、今年は審査員8名中4名が初参加だったこともあり、「採点では、こういうことに注意したほうがいいですよ」とか、「あの子(若い参加者)は、1年間でずいぶん成長したな」などと偉そうなことをほざいていた。
採点で大変なのは、当然ながら、歌を集中して聴かなければならないこと。カラオケボックスやスナックで、酒を呑みながら、次に歌う自分の歌を探しながら、適当に聴いて義理の拍手を送るのとはわけが違う。団体戦兼個人予選56人、個人決勝15人、延べ71人の歌を集中して聴くのはえらく疲れる。採点は小数点第1位までを入れた100点満点で、審査員が8名だから最高点が800点。優勝者は722.6点だったが、上位は僅差の争い。8位が712.3点で7位が712.4点と0.1点差。そして4位は716.5点で3位が716.8点と0.3点差。オリンピックなら、800点満点での0.3点が銅メダルの分かれ目となったのだ。こういう結果を見ると、審査員としての重責をひしひしと感じる。そして、「来年も呼ばれたら、誠心誠意務めさせていただこう」と心から思うのだ。採点競技に限らず、オリンピックに参加しているすべての審判員は、是非、このホルヘのような清い心をもってジャッジしてもらいたい。 |