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少し前のことになるが、アルゼンチンにいる日本人たちとミニサッカーをした。このコラムにときどき登場する、現地で元プロ選手だったツッシー(津島輝彦)たちが、日曜日に仲間を集めてプレーするというので、交ぜてもらったのだ。いきなり5vs5のゲームになったのだが、チーム編成がかなり偏っていた。相手はサッカー留学生や選手など、現役ばかり。平均年齢は20歳ちょっとか。わがチームは、現役が一人いるものの、ツッシー、元留学生、日系学校の日本語教師、アルゼンチン人の陸上中距離選手(現役かどうかは不明)、そして47歳のホルヘという顔ぶれである。こちらは6人なので交代が可能とはいえ、とても歯が立ちそうにない。
実はホルヘ、元々サッカーはヘタクソなうえに、3カ月以上にも渡り、プレーするどころか走ってさえいない。さらに、10日ほど前にかぜをひき、気管支炎になってセキがひどく、呼吸器系が弱っている。そして2週間ほど前の寒い日に、左ヒザを痛めた。なぜか知らぬが、ヒザに問題があるのだ。使いすぎたり冷えたりすると、階段を下りるときにピキッとなって、そのまま痛みが数日続く。ようするにホルヘは、最悪のコンディションだった。しかしわがチームのツッシーは、自分に対してはどうかわからないが、他人には非常に厳しい。そして、言い訳が大嫌いときている。したがって、「あそこが痛い、調子が悪い」などとはとてもいえない。遊びのサッカーで軽く楽しもうと参加したのが大間違い。レベルは高いし、みんな本気だ。これじゃ、さぼることもできない。ああ、来るんじゃなかった。
現役が相手だというのに、わがチームはポンポンと2点を先取。しかもその2点目は、ホルヘのトーキックから生まれたのだった。しかし、喜んでいたのもつかの間。そこからは守備に振り回される。寄せては抜かれ、寄せてはパスされを繰り返し、ボールにはほとんど触れぬまま、前後左右へドタバタ走る。すると突然、頭がクラーッとしてきた。目まいと吐き気がする。これはヤバイ。中高年の激しいスポーツは、ときとして生死にかかわる。「もう、ツッシーになんていわれてもいい」というわけで、わずか10分で交代。その後は調子をみながら、フィールド、キーパー、ベンチというローテーション。フィールドでのプレーは少なかったものの、久々のサッカーで足はパンパン。ストッキングを下ろしたら、ふくらはぎに「乳酸」という文字が浮き出ていたはずだ。
疲れていたのは、現役も同じ。なにしろ、約2時間やりっぱなしだったのだ。コートは1時間しか借りていなかったが、この日は日曜で客が少なかったため、大幅な時間オーバーを黙認してくれた。ちなみに、正規の料金は1時間120ペソ(約4千円)。日本の感覚だと1万円くらいだろうか。床は人工芝で、更衣室もしっかりしている。
現役チームの中の4人は、ラプラタ市からやってきた。現地で練習しているが、いろいろと問題があるという。そこで、ツッシーと相談しに来たらしい。留学生が抱える問題はたくさんあるが、その中でも多いのが、登録や試合出場に関するもの。「実力次第で試合に出られる」といわれて留学したが、試合出場はおろか、協会に登録もできない、というケースは多い。アルゼンチンでは、選手登録は厳格だ。未登録では、公式戦に出られない。そして登録するためには、何らかの滞在ビザが必要。パスポートのみの入国(観光目的)では、登録できないのだ。「手続きはお任せください」といっておきながら、何もしない悪徳業者もいるそうだ。「登録は完了した。試合に出られないのは、実力がないからだ」といわれたが、調べてみると登録などされていなかったというケースもあるという。これなどは、完全な詐欺だ。留学に際しては、業者選びを慎重にしたい。
さて、疲れきったホルヘは、バスで帰途に着き、「明日は筋肉痛だな。いや、この歳だと、痛みが出るのは明後日か」と考えていた。やがてバスは、家の近くに到着。そしてステップを降りたときに、右ヒザにビキッときた。たぶん、軽く悲鳴でもあげたのだろう。ドアに挟まれたのかと心配したバスの運転手が、「どうした、大丈夫か」と聞いてきた。「サッカーで痛めたのだ」というと、自分の非ではないことを確認した運転手は、「心配させやがって」という感じで、軽く舌打ちをしてバスを発進させた。明日や明後日どころではない、1時間後に痛みが来た。しかも、これまでで最大の痛み。右ヒザの曲げ伸ばしは、ほとんどできない。快復するまでに10日を要し、「無理のきかない歳になったな」と実感したのだった。 |