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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■歓喜! リーガ・デ・キト

2008.7.8

 やったー! リーガ・デ・キトが優勝だ! ホルヘの念願ついにかない、エクアドルのチームがコパ・リベルタドーレスを制した。これには、ワールドカップ初出場を決めたときとは別の感慨がある。ワールドカップ予選は10カ国の総当り。それで4位以内に入れば、本大会の出場権が得られる。つまり、優勝しなくてもいいのだ。ところが、今回は優勝である。南米チャンピオンである。アジアチャンピオンとはわけが違う。ブラジルやアルゼンチンの強豪が参戦している中での栄冠である。これはもう手放しで称賛し、エクアドルファンとしては狂喜乱舞するだけだ。いやー、最近は特に酒がウマイ。

 しかし、ここにたどり着くまでは長い道のりだった。過去にバルセロナが2回決勝に進出しているが、1勝もできなかった。98年の決勝第2戦には、ホルヘも現場へ行っていた。それだけではなく、準決勝も準々決勝にも行っていた。コロンビア代表のアントニー・デ・アビラなんかがいて、実に素晴らしいチームであった。しかし、バスコ・ダ・ガマには全く歯が立たなかった。あれから10年。エクアドルのチームが三度目の正直に挑んだ。

 決勝第1戦はリーガのホーム。フルミネンセ相手に目を見張るような猛攻を仕掛け、前半で4-1とした。「これで決まった」と思ったが、後半に1点を返されて4-2で終了。「あの1点が余計だよ。2点差じゃ、危ないぞ」と、一挙に不安になってきた。

 本来は現場に行きたかったのだが、7月30日に大阪でガンバと戦うアルセナル絡みの仕事があり、やむなくテレビ観戦。しかし、一人では耐えられなくなるかもしれないので、援軍を呼んだ。元プロの津島ことツッシーやサッカー留学中の狐塚たちである。彼らはホルヘの家でメシを食べながら、ボカを応援したことが2回ある。ホルヘはボカファンではないが、慈愛に満ちたボランティア精神から、彼らに場所と食事を提供したのだ。今こそ、その恩を返さねばならないはずだ(どこが、慈愛に満ちているのか)。「今度の水曜日、また家で一緒にメシ食おう。メシ食いながら、リーガを応援しよう」と誘った。するとツッシーは、「リーガ? 興味ないですよ」と答えたではないか。なんというイホ・デ・プッタであろうか。すっかり、自分本位のアルゼンチン人になりきっている。日本人としての義理人情はどこへいった。しかし、「監督のバウサをはじめ、リーガにはアルゼンチン人選手がいる。ゲロンはボカにいたことがある。フルミネンセを倒すのは、ボカの敵討ちでないか」という、ホルヘの理路整然たる説得により、彼らもリーガを応援することになったのだった。

 試合は、本当に心臓に悪いものだった。食事をしながらだったからよかったものの、空腹だったら、ストレスで胃酸があふれ、胃に穴の2つ3つは開いたところだ。やはり、援軍を呼んでよかった。ひとりだったら卒倒していたかもしれない。リーガが先制して、「やったー、これで決まった」と思ったのもつかの間、ポン、ポン、ポンと3点を取られてしまう。そして、その後もフルミネンセがゴールに襲い掛かる。そのたびに、血圧は上がり、脈拍が高まり、ときには止まる。苦痛から逃避すべく、酒の量が増える。しかし、GKセバージョスのファインセーブと相手のシュートミスで奇跡的に追加点は生まれない。絶不調のワシントンには大感謝だ。

 結局、1-3で90分が終了。第1戦が4-2のため、アウェーゴール方式が適用されれば、フルミネンセの勝ちだ。しかし、その方式は準決勝まで。このルールに救われて、延長戦に突入する。ここではリーガが持ち直し、後半にはヘディングシュートが決まる。しかし、判定はオフサイド。ホルヘの歓喜は、一瞬にしてぬか喜びと変わった。ビデオで見ると、微妙だが、オフサイドではないようだ。しかし、やむをえまい。実はそれ以前に、PKとなるリーガの明らかな反則を、主審のバルダッシが見逃しているのだ。去年取材で知り合い、写真を数点送ってあげたのが、きっと功を奏したに違いない。

 そして延長でも決着がつかず、ついにPK戦へ突入。アーッ、心臓がバクバクする。もっと酒を飲まねば。この日のGKセバージョスは当たっているので、1~2本は止めるのでないかと思った。予想というよりも、心理学的にいうならば、自分にそう信じ込ませて極度の緊張に対抗したのだろう。しかしセバージョスは、アミーゴであるホルヘの1~2本というチンケな願いをあざ笑うかのように、なんと3本も止めたのだ。思えば、10年前に決勝で敗れたバルセロナのGKがセバージョスだった。あのときのリベンジを、自らの手で果たしたのだ。えらいぞ、セバージョス。あめでとう、セバージョス。

 こうして日本行きを決めたリーガだが、今大会のキーマンだった怪人ゲロンはスペイン行きが決定。他にも何人かは移籍するだろう。となると、戦力ダウンは必至。世界クラブ選手権での活躍は期待薄だ。しかし、クラブ選手権なんてどうでもいい。南米チャンピオンになったことで充分だ。準決勝で日本のチームと当たったら、決勝への切符をプレゼントしてやればいいではないか。

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