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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■神様のスタジアム

2008.6.30

 アルゼンチンリーグの07-08年後期最終節、ウラカンの加藤友介はまたもベンチ入りを果たした。前節は途中出場しているので、この試合でもピッチに立つ可能性が高い。レセルバ(2軍)の試合は取材したが、1軍でプレーする姿を撮影していないホルヘは、機材を担いで会場へ足を運んだ。ウラカンのスタジアムが改修中のため、会場はアルヘンティノスのスタジアム。アルヘンティノスとは、あのマラドーナを輩出したクラブだ。このスタジアムは1940年に造られたが、4年前に全面改築が行われ、それを機に、スタジアムの正式名称が“ディエゴ・アルマンド・マラドーナ”に改められた。

 アルゼンチンに限らず南米各国では、スタジアムに人の名前が冠せられることが多い。初代会長やクラブの功労者、あるいは歴史的人物の名前がスタジアムの正式名称となるのだ。しかし一般的には、その名前が呼ばれることはない。エスタジオ・デ・○○、またはカンチャ・デ・○○(○○はクラブ名)が通称となる。あるいは、ボカのボンボネーラ、リーベルのモニュメンタルのように、スタジアムをニックネームで呼ぶ場合もある。これは、報道でも同様だ。しかし、アルヘンティノスのスタジアムだけは違う。実況でも、「エスタジオ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナで行われているウラカン対サンロレンソの試合は、前半15分を経過して0-0です」と、正式名称を必ず使う。さすが、神様マラドーナ。みんなから崇め奉られている。

 さて、この神様のスタジアムだが、欠点は狭いこと。アルゼンチンの街は、碁盤の目のようになっている。それぞれの碁盤の目、つまり一区画は約100メートル四方というのが標準だ。スタジアムの多くは、このような碁盤の目と関係ない広大な敷地内に建っているが、アルヘンティノスのスタジアムは、住宅地の一区画内にギチギチに収まっている。たぶんこの一区画は、一辺が120メートルくらいであろう。ここに公称100メートル×66メートルのピッチと、正面スタンド、バックスタンド、片側のみゴール裏スタンドが詰め込まれている。収容人員は24,600人だ。

 ボカのボンボネーラもグラウンド面積は小さいが、ここはそれ以下。ゴールラインとタッチラインの外の部分が非常に狭い。加藤を狙いに行ったホルヘは、当然、ウラカンが攻めるサイドのカメラマン席に陣取った。カメラマン席は、ゴールラインの後方で看板の後ろ。試合は後半に入り、両チームのサブメンバーがアップを始めた。ホームのウラカンはタッチライン沿いで行っているが、アウェイのベレスは、なんとゴールラインと看板の間で始めたではないか。つまり、カメラマン席の前でランニングの往復をしたり、ストレッチなんかをしているのだ。これにはビックリ。彼らが邪魔で、写真なんか撮れたものじゃない。逆のコーナーのほうへ移動しようにも、ゴール裏がふさがって通行できない。実はアウェイのチームも、本来はウラカンと同じようにタッチライン沿いがアップ場所だが、スタンドが近すぎて、金網越しにツバを吐きかけられるから避難してきたのだった。アップをしながら、ゴールラインを超えてピッチの中に入るし、ボールが来るとフィジカルコーチが、「来たぞ!」と知らせて、選手は看板にへばりつく。邪魔ではあったが、とても面白いものを見せてもらった。

 ところで、肝心の加藤のほうだが、試合前、元ヴェルディのウベダ監督に挨拶し、さり気なく「彼を撮りに来たよ」と加藤投入のプレッシャーをかけたものの、全く効果なし。勝負とは厳しいものである。しかし願いどおり加藤が出ても、サブ選手のアップが邪魔で写真が撮れなかっただろうから、まあ、よしとしよう。


ベンチに座る加藤友介
ベンチに座る加藤友介

ピッチにはみ出しながら、ウォーミングアップ
ピッチにはみ出しながら、ウォーミングアップ
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