|
つい先日、家にサッカー小僧たちを招き、すき焼きを食べながらコパ・リベルタドーレスのボカを応援した。集まったのは、相変わらずウラカンのレセルバ(サテライト)で活躍している加藤友介と、元プロ選手の津島輝彦、そして下部リーグのルガーノで修行中の狐塚崇宏(たかひろ)という面々。加藤は一人暮らしで、津島と狐塚は同居だが、いずれもロクな食生活はしていないに違いない。そこでホルヘが、にわか栄養士としてバランスのよい食事を提供しようという企画である。
まあ、こういえばカッコイイのだが、他にも理由がある。料理も洗い物も洗濯も苦にならないホルヘだが、なぜか掃除だけができない。掃除だけでなく、整理整頓もだめだ。テーブルの上には物が散乱し、非常に見苦しい状況下で暮らしている。しかし羞恥心(しゅうちしん)は人一倍強く、汚れた部屋を他人に見られたくない。ホルヘのマンションでは、好都合にも、殺虫剤散布業者が月に一回各部屋へやってくる。このような業者にも汚い部屋は見られたくないので、「殺虫剤散布のお知らせ」の告知があると、あわてて掃除していたのだ。しかし告知が前日で掃除ができなかったり、朝の8時半(ホルヘにとっては早朝である)に来たりするので、いつからか居留守を使うようになってしまった。つまり、月に一度の掃除もしなくなったのだ。荒れ果てた部屋を見て、ホルヘは思った。「誰かを呼ぶしかない」と。誰かを呼べば、恥をかかないためにも掃除をしなくてはならない。自らを窮地に追い込んでの、クリーン大作戦である。
そんな魂胆もあり、初めて彼らを呼んだのが、約1カ月半前のこと。そして2回目は2週間前。ついに、掃除のペースが2週間に1回となった。ホルヘにとっては画期的なことだ。作戦は大成功といえるだろう。そして彼らを招待するのには、さらにもうひとつの理由がある。それは、思いっきり料理したいから。「あれが食べたい、作りたい」と思うことがあっても、自分一人のためでは気がなえる。ある程度満足がいくように仕上げるには、それなりの食材を調達し、数人分の量を作らなければならない。そのうえ、ホルヘのレパートリーは和食か中華なので、アルゼンチン人を招待しても意味がない。味のわからん連中に、お世辞で「ムイ リコ」(とても旨い)といわれても、ちっともうれしくない。そこで招待客として、欠食サッカー小僧に白羽の矢を立てたのだ。
第1回目のメニューは、ポテトサラダ、ソース焼きそば、肉じゃが、ダシ巻き玉子、塩鮭などであった。いずれも、通常のアルゼンチン空間には存在しないものである。ポテトサラダは大好評で、大どんぶり2杯が消化された。野菜たっぷりのソース焼きそばは、日本のソースが貴重品のため、こちらで市販されているウスターソース、中国醤油、ケチャップなどをぶち込んだ。これも大皿2枚が消化された。そのうえ、白米4合が彼らの腹に収まった。魚屋で塩鮭は売っていないため、これも生鮭からの手作り。しかし、これは評判悪かった。
第2回目のメニューは、前回好評だったポテトサラダ、ナスとピーマンの炒め煮、麻婆豆腐、豚肉のしょうが焼き、豚の角煮など。豚のブロック2キロを入手し、数日前から角煮を仕込んだ。当日はトロトロに仕上がっていた。残りをスライスして作ったしょうが焼きもまあまあだったが、初挑戦のナスとピーマンの炒め煮と、鶏ひき肉で作った麻婆豆腐が絶賛を浴びた。津島はナスにハマった。加藤は麻婆豆腐を食べ、「これが今日のフィグーラ(MVP)ですね」といった。狐塚は前回に引き続き、ゲームに負けて皿洗いとなった。
そして3回目の今回は、メインがすき焼きで、サブはカボチャの煮物とベロのサラダ。アルゼンチンには元々、サパージョというカボチャ系の野菜がある。しかし最近は、サパージョ・ハポネスとかKABOTIAといって、日本種のカボチャが出回るようになった。ベロは、クレソンのこと。日本ではつけ合わせに使われる程度だし、値段も高い。こっちでは、日本のホウレン草2束くらいで約100円。ただし、虫やドロがたっぷり付いているから掃除が大変。サラダだけでなくゆでても旨いので、すき焼きにもぶち込んでみた。実は前回、「ベロって何だ?」という話になった。「クレソンだよ」と教えたが、加藤はクレソンも知らないようであった。そこで、今回メニューに追加したのだ。さて、次回はどんな料理に挑戦しようか。 |