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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■モンテビデオのFC東京

2008.4.28

 ウルグアイのモンテビデオへ行ってきた。コパ・リベルタドーレスのナシオナルvsシエンシアーノの取材のためだ。シエンシアーノには、日本人の澤昌克がいる。昨年は大活躍で、ペルーリーグの最優秀外国人選手に選ばれたうえ、帰化してのペルー代表入りも要請された。最近は日本でも、彼を鹿島アントラーズが獲得する、といったニュースが報じられている。ホルヘは5年ほど前から澤を知っており、まあ、いってみればアミーゴである。試合前日に宿泊先のホテルを訪ね、雑談を楽しんだ後でインタビューを行った。ここには詳しく記さないが、アントラーズではなくヨーロッパの一流クラブへ移籍する可能性もあるようだ。  

 試合は3-1でナシオナルの勝利。シエンシアーノはグループリーグでの敗退となった。「ウルグアイのチームで、決勝トーナメント進出の可能性があるのはナシオナルだけ。つまり、われわれはウルグアイ代表である。したがって、試合前に観客全員で国家を斉唱しよう」とナシオナルの会長が呼びかけたせいで、パルケ・セントラルスタジアムは超満員。選手も気合全開で、いつもと違い前線から積極的に動き回った。これでシエンシアーノの中盤が崩壊。澤はほとんどボールに触れなかった。「予想外でしたね。あんなにガンガン来るなんて」と澤も相手の豹変(ひょうへん)に驚いていた。また、「ピッチが狭くてやりにくかった」ともいっていたが、後でスタジアム事務所へ行って図面で確認したら、105メートル×68メートルの公式サイズだった。虚偽記載かも知れないが、もしそうでなければ、正規のピッチを狭く感じさせるほどナシオナルの動きがすごかったということだ。

 モンテビデオでは、もうひとつのミッションを遂行しなければならなかった。この街には、ホルヘ行きつけのバーがある。もう、10数年来の付き合いになる。立ち飲みのカウンターとテーブル4個の大衆バーで、地元の常連のたまり場となっている。ここで、ルベンという男と知り合いになった。このルベンは、すぐ近くにある安キャバレー「BICOS」の雇われマネージャー。モンテビデオは港町で、外国人船員が多い。彼の店は、こうした船員を相手に女の子が接待をするところ。そしてそこには、各国のサッカークラブのフラッグやマフラー、ユニホームなどが飾ってある。客たちが自分の贔屓(ひいき)チームのグッズを記念に置いていったのだという。そこで以前から、「何か、日本のチームのものを持ってきてくれ」と頼まれていたのだ。しかし、わざわざ買って持って行ってやる義理はない。何かが手に入ったら、ついでのときに渡してあげよう、と思っていた。

 東京は明大前に、LIVRE(リブリ)なるカフェバーがある。今冬の日本滞在中に知ったのだが、ここはFC東京サポーターが集まる店で、いわゆるペーニャだという。そこで、マスターにこの話をしてみた。「何か余りものの応援グッズがあれば、分けてやってください」というお願いである。ホルヘは別にどこのチームのものでも構わなかった。ここで断られたら、また別の機会を待とうと考えていた。しかしマスターは、二つ返事でこの依頼を了承。しかも、「そういう面白い話は、浦和や鹿島に先を越されるわけにはいかない」と、やたらに気合が入っているのだ。さらに、「開幕戦の後にみんながここに集まるので、そこで今年のフラッグにメッセージを書いてもらいます」と、話が大げさになっていった。たかだか、安キャバレーの装飾品のひとつになるだけなのに、まるでFC東京がウルグアイに牙城(がじょう)を築く、みたいな勢いになっている。南米暮らしが長いせいで、ホルヘの日本語での説明が正確に伝わらなかったのではないかと心配したほどだ。まあ、そんなこんなで、サポーターの熱い思いがつづられたメッセージ入りのフラッグを託された。そして今回、それを無事にルベンに渡してミッションは終了。手渡すまでは、常に変なプレッシャーを感じており、まるで聖火リレーのランナーになったようだった。


シエンシアーノ所属の澤昌克(さわ まさかつ)
シエンシアーノ所属の澤昌克(さわ まさかつ)

モンテビデオに飾られたFC東京フラッグ

モンテビデオに飾られたFC東京フラッグ

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