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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■煙で大混乱

2008.4.21

 山火事という言葉はあるが、野火事という言葉もあるのだろうか。ブエノスアイレス州北部からエントレリオス州南部にかけて、7万ヘクタール以上の野原が燃え続けている。7万ヘクタールというのが東京ドーム何個分なのか知らないが、たしか100メートル×100メートルが1ヘクタールなのだから、その7万倍というのはかなりの面積に違いない。野焼きの火が燃え広がったのだという。火事といえば、火と煙だ。無人の野原をジワジワ焼いているだけなので、火のほうはたいしたことがない。とはいえ、人力での消化は不可能で、すべて燃え尽きるか、雨が降るのを待っている状況。

 問題は煙だ。3日ほど前から、現場とは約100キロ離れているブエノス市内でも煙害が始まった。そしてそれは、日増しにひどくなっている。「バカと煙は高いところが好き」というが、きっと、この煙は利口なのだろう。市内は霧が降りたように視界が悪く、外にいるだけで目が痛くなり、鼻の奥とノドがツンツンする。喫煙者で煙に慣れているホルヘですらそうなのだから、子供などはたまらない。眼科や耳鼻科は大繁盛だ。また、ぜんそくの発作や何かのアレルギーを発症する人も多いらしい。テレビでは、「一酸化炭素はあるものの、植物の煙だから、それ以外の有毒物は含まれていない」と不安を払拭(ふっしょく)しながら、「目を洗い、目薬をさし、うがいをし、水分を取るようにしてください」と繰り返し伝えている。このコラムを書いている4月18日午後3時現在、一酸化炭素濃度は9.2ppmだそうだ。ちなみに、通常が2ppmで、限界値は35ppmらしい。

 交通機関もダメージを受けている。視界不良のため、何本もの主要道路が通行止めとなった。通行止め以前には事故が続出し、9名が死亡した。長距離バスの多くが運休し、ブエノス市内の国内線空港も閉鎖。中長距離交通はマヒ状態。煙は市内を走る地下鉄の線路にも侵入し、運行不能の路線もある。輸送機関がダメージを受けているのだから、食品が不足して値段が上がるのは必至だ。火災現場近くのサラテという街にトヨタの工場がある。聞いた話だが、この工場ではコスト削減のためか何かで、在庫を置かない方針らしい。この交通事情では、部品の補給も滞るにちがいない。操業にも影響が出るだろう。

 他人事(ひとごと)ながら心配になる。トヨタは、今年からコパ・リベルタドーレスの冠スポンサーをサンタンデール銀行に譲ったものの、今でも大会を支援している。昨夜は、同大会のリーベルvsサンマルティン(ペルー)が、この煙の中で行われた。街にいるだけで目や鼻やノドが痛くなるというのに、走り回って大量の煙を吸い込まなければならないのだから、選手は災難だ。選手の健康と移動の問題を考えれば、週末の国内リーグの試合を延期したほうがいいと思う。しかし、協会は先ほど会議を開き、予定通り行うことを確認した。

 これは偶然なのだが、ホルヘは21日からウルグアイ。しばらく雨は降りそうもなく、この火災はまだまだ続きそうだ。したがってウルグアイ行きは、この煙害から避難するのにちょうどいい。そう思って喜んでいたら、煙はラプラタ河を渡りウルグアイにまで届いたという。この分では、ホルヘの目的地であるモンテビデオ市も煙で覆われそうだ。まあ、そうなれば、顔なじみのバーで一杯やりながら“煙が目にしみる”(プラターズ)でも口ずさむとするか。

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