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南米にキナ臭さが漂いはじめた。ベネズエラが、隣国コロンビアとの国境に兵力を大量増員し、戦闘態勢を整えているのだ。きっかけは、コロンビアにある。同国にはFARC(コロンビア革命軍)という反政府組織があり、これがテロや誘拐を繰り返している。これに対して政府は、警察だけでなく軍隊をもって対抗。ジャングル内のアジトを急襲して血生臭い成果を度々挙げている。するとFARCは、重要なアジトをエクアドル領土内に構えるようになった。そうすれば、コロンビア軍は手を出せないと考えたからだ。ところが、コロンビアは手を出してしまった。越境してFARCメンバー21人を殺害した。これは、問題になる。
エクアドルのコレア大統領は、「重大な裏切り行為だ」といって、外交関係中断を通告した。これには、国際的な政治背景も関係している。コロンビアの現体制は親米右派政権だが、エクアドルは反米左派政権。そしてエクアドルのバックには、ベネズエラのチャベス大統領がついている。したがって、ベネズエラもコロンビアから大使館員を引き上げ、国境に戦闘態勢を敷いたのだ。今のところ、これは一種のパフォーマンスだし、コロンビア側も迎撃態勢を取っていない。常識的に考えれば戦火に繋がる可能性は低いが、チャベスが噛んでいるだけに予断は許さない。なにしろコロンビアの発表では、「ベネズエラはFARCに3億ドルの資金提供をしている」のだ。アメリカの介入が絶対にない、と判断したら、FARC政権樹立支援のためにコロンビアへ侵攻しないとも限らない。
あれは確か、94年W杯予選の頃だと思うが、エクアドルとフジモリ政権下のペルーが国境問題で戦火を交えた。戦争といっても、ジャングルの中での局地戦。戦況はマスコミが頻繁に伝えるし、街中には愛国心を高揚させるポスターが貼られていたが、どうも、国民は他人事みたいに感じているようだった。日本とはエライ違いだ。太平洋戦争では、遠く南方での戦況に一喜一憂し、「銃後は任せろ」とばかり、国民皆兵、軍事教練、婦人部隊、学徒動員、敵性語(英語)禁止と、国中が戦時下だったと聞く。しかし、エクアドルもペルーも国民の生活に変化はなく、両国間の国際試合も普通に開催された。とても、戦争中とは思えない。そんな中、ホルヘは一度だけ、戦時下らしい体験をした。エクアドルにいたホルヘは、同国在住の日本人へ電話をするため、売店に入った。公衆電話が少ないので、電話は売店で借りるのが一般的だ。日本語で電話をしていると、売店のオヤジが珍しそうに耳を傾けていた。そこで、ホルヘと一緒にいたエクアドル人のアミーゴが、よせばいいのに、「こいつは日本人で、今、フジモリと話しているんだ」と冗談をいった。すると売店のオヤジは、「このスパイめ」と叫んで殴りかかってきたのだ。すぐにアミーゴが、「冗談だ」と止めに入ったが、危ないところであった。そもそも一番悪いのは、このアミーゴだ。さらに、売店のオヤジも間抜けだ。なぜなら、この電話は市内通話で、相手先へはオヤジ自身が掛けている。当然、転送なんていうシステムは知らないのだから、フジモリと話していると思うほうがおかしい。しかし、緊張感のない戦時下にもこのような国士がいるのだ。それを知っただけでも、ひとつの収穫だった。
話は変わるが、この前のスーパーカップで主審のジャッジが話題になった。日本では、審判問題がマスコミで取り上げられるのは珍しいことだ。この点、アルゼンチンではどうなのだろうか、またアルゼンチンの審判員育成はどのようになっているかをホルヘが書いた「アルゼンチンの審判事情」が、雑誌「サッカー批評」(双葉社)に掲載されている。取材したホルヘも驚いたほど、日本のそれとは大きな違いがあった。これは、読んで損はしない。同じサッカー雑誌とはいえ、「ストライカーDX」と「サッカー批評」はライバル関係でないと解釈し、この場を借りて宣伝させていただく。 |