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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■謝りは、誤り

2008.2.13

 まずは、前々回の「ホルヘ、ルールに泣く」の内容に誤りがあったことの訂正とおわびをする。ユニホームが半そでで、その下にアンダーシャツを着る場合、「アンダーの色はシャツの主たる色と同色」と書いたが、これは誤りで、「そでの主たる色と同色」が正しい。したがって、アーセナルのように身とそでの色が違う場合は、アンダーはそでと同色にしなければならない。これについて誤った記述をした部分は、現在、削除させていただいた。読者および関係各位にご迷惑をおかけしたことを陳謝します。

 謝罪といえば、マラドーナが86年メキシコワールドカップのイングランド戦で行った“神の手ゴール”について、イギリスの新聞のインタビューで謝った、という報道があった。これを見たとき、ホルヘは目を疑った。なぜなら、マラドーナに最も似合わない行為は、謝罪することだからだ。もちろん、個人的には「ゴメン、ゴメン」と謝ることはあるだろうが、公の場で非を認めて許しを請うといった言動は、おそらく彼はやったことがないのではないか。ドーピング発覚、記者を撃ったエアガン事件、交通事故や違反、何度かの傷害事件などの際も、「濡れ衣だ」「相手が悪い」「オレはやっていない」といった自己弁護に徹していた。コカイン中毒であることを告白したときは、「後悔している」「間違ったことをしてしまった」と反省の弁を口にしたが、謝罪というものではなかった。まあ、こういった自己中心的な考え方は、マラドーナだけでなく欧米人に共通したものではある。日本のように、些細(ささい)な事件や失言をした有名人が世間に謝罪する、あるいは世間が謝罪させる国は、世界でも少数派のはずだ。

 ホルヘがマラドーナの謝罪報道を信じられなかったのは、前述した彼の人格に加え、“神の手ゴール”が謝るべきものでないからなのだ。謝罪というのは、悪いことや間違ったことをし、それの許しを請うために行う。つまり、悪いことをしていなければ、謝る必要はない。そこで問題となるのは、“神の手ゴール”が悪いことであるかどうかだ。現在は、手でボールをゴールに押し込み、それが審判員に見つかれば、イエローカードを食らう。イエローカード、すなわち警告処分を受けるということは、悪いことであろう。ここでの警告は、手を悪用したことが反スポーツ的行為だという解釈で下される。しかし、ハンドの反則そのものが悪いことかというと、そうではないだろう。相手を蹴ったり倒したりすれば、「ごめん」といって謝る選手もいるが、ハンドの反則を取られて、相手に「ごめん」ということはない。謝罪好きの日本人ですら謝らないということは、これは“悪い”ことではないのだ。つまり、ハンドは悪くない、悪いのは反スポーツ的行為、ということになる。

 そして、その反スポーツ行為(以前は非紳士的行為)が、86年当時は、今よりもかなり緩やかであったことに着目したい。故意のハンドでプレーを妨げることは警告の対象であったものの、実際にカードを出されるのは、故意が明らかなものに限られていた。警告されるのは、相手のチャンスを手で止めるといった、守備側の反則がほとんどだった。FWが手や腕を巧みに使ってトラップしても、警告なしのフリーキックだけ。大体、手でシュートするようなヤツはいなかった。要するに、攻撃側の故意のハンドについては、正しく取り締まられていなかったのだ。マラドーナの性格からすると、警告されないのだから、故意のハンドは非紳士的行為ではないと思っていたに違いない。となれば、悪いことをしたという意識はないはず。だから、“神の手ゴール”を謝罪するのは、筋が通らないのだ。

 悪いことをしても謝らない人間が、(本人が)悪いことをしていないと思っているのに、謝るはずがない。この考えは的中し、マラドーナはすぐに、「オレはそんなこといってない」と謝罪発言を全面否定した。それでこそディエゴである。ホルヘもこの図々しさを見習って、これからは軽々しく謝らないようにしたい。ということで、今回はこれで終わりにするが、最後に改めて、前々回で間違えた記述をしたことを、深くおわび申し上げます。

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