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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■パレルモのお漏らし

2007.12.27

 たしかに、カカとミランはすごかった。世界王者にふさわしいチームだと思う。しかし、ボカの戦い方には疑問が残る。戦力の差は明らかなのに、まともに勝負してしまった。立ち上がりなどは、ミランより攻撃的だった。これでは、幕下が横綱相手にガップリ四つになるようなもの。寄り切られたのは、当然の結果だ。いかに南米びいきのホルヘとはいえ、両者の戦力に大きな差があることは認めざるを得ない。ボカに限らず南米のチームは、優秀な人材がヨーロッパへ流出するので、その構成は、流出前の若手と出戻りのベテランとなる。25~30歳の中堅は少なく、まるで終戦間近の帝国陸軍のようなもの。そしてヨーロッパの一流チームには、優秀な中堅選手がゴロゴロいるわけだ。この差を埋めてさらに勝利を手中にするには、やはり、それなりの戦術が必要となる。これまでのトヨタカップでは、ボカも他の南米代表もそうやって戦ってきた。そして、予想を覆して優勝したのだ。

 ホルヘはカメラマンとしてピッチにいたが、試合前の整列や写真撮影の段階で、ボカにすごく気合が入っているのを見て驚いた。「よし、いくぞ!」「やるぞ、クソったれ!」みたいな掛け声が飛び交い、まるで高校選手権に挑むチームのようであった。こんなボカは見たことない。南米では、控え室で気合を入れるが、ピッチに出てからは冷静なのが普通。したがって、クラブワールドカップでのボカは、“入れ込んでいる”という表現がピッタリ。「カウンター狙いでは面白くない。堂々と戦って勝ってやる」という自信過剰だったのか、「守備を固めても守り切れない」という判断での玉砕戦法だったのか定かでないが、結果は惨敗。まあ、次はがんばってください。

 いつものボカの試合と違っていたもう一つの点は、サポーターの応援。約2000人のサポーターがつめかけて、試合中歌い通しだったが、ホルヘの記憶では、曲目は3曲だけ。アルゼンチンでは、こんなことはない。入場の歌に始まり、称賛、叱咤(しった)、激励などの歌を、場面に応じて10曲程度は歌い分ける。そして、この音頭を取るのが、“ラ・ドセ”と呼ばれるバラブラーバ(ウルトラス)。半ば暴力団と化しているバラブラーバとクラブは密接な関係があり、チケットはもちろん無料で提供される。バラブラーバの幹部は、そのチケットを転売して利益も得る。したがって、今回の大会にも、クラブが数名の幹部を連れてきた可能性はあるし、裏金で潤っている幹部は、自腹でも来日できたはずだ。しかし、一般会員はそうはいかない。応援ツアーは約2700ドルからあったが、これは日本の感覚でいうと60~70万円。低所得者が多い一般会員には手が出ない。したがって、今回のスタンドを埋めたサポーターのほとんどが、非バラブラーバ、つまり普通のサポーターだった。そして、たぶん数名のバラブラーバ幹部はいたが、とても仕切れなったのだろう。しかし、一般サポーターも熱い。髪を青と黄色に染めた日本人が、ボカサポーターに交ざって騒いでいたが、何か不始末をしたらしく、アルゼンチン人にボコボコにされているのを、ホルヘは目撃した。

 ミランの優勝を、当事者のミランとそのサポーターの次に喜んだのは、ボカのライバルであるリーベル。早速ボカをからかうポスターを製作し、町中の広告掲示板に張り出した。横長のポスターの左半分はカカで右半分はパレルモ。そしてそれぞれに、KAKAとPOPOの文字が入っている。スペイン語でカカ(スペルはCACA)はウンコのことなので、それに引っかけて、「偉大なカカ」と「お漏らしのパレルモ」という内容に仕上げていた―。

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