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ホルヘ・三村

南米通信 ~ラ・ビダ・デ・ホルヘ~

ホルヘ・三村
1960年10月23日生まれ。東京都出身。元々の南米サッカー好きが、89年のコパ・アメリカ取材を契機に沸騰。91年、気がつけば職を捨て、単身エクアドルに立っていた。現在はアルゼンチンのブエノスアイレスを拠点に、コパ・リベルタドーレス、コパ・アメリカ、ワールドカップ南米予選や各国リーグを取材している。そのかたわら、酒を中心とした南米各国のナイトライフにも造詣が深い。というよりそれに溺れ、酒とサッカーの日々を送っている。

アルゼンチン

■先祖のDNA

2007.12.19

 クラブワールドカップに合わせ、約8カ月ぶりに帰国。今回の往復には、初めてアトランタ経由のデルタ航空を利用した。デルタの売り物は、預けた荷物を経由地のアトランタでピックアップする必要がないこと。以前はほとんどすべての航空会社も同様で、成田で預ければ、荷物は目的地で受け取るだけだった。しかし9.11後、テロ対策のためにアメリカでのチェックが厳しくなり、経由地で自分の荷物を一度ピックアップしなければならなくなった。ところが、なぜかデルタの場合はその必要がないのだ。これは、便利。

 旅行者にとって便利ではあるが、テロ対策はどうなるのだろうか。そこで、3月に成田をたつとき空港のデルタ職員に、「ブエノスアイレスまで行くのだが、スーツケースにかぎをかけていいのか」と聞いてみた。すると、「お荷物をピックアップする必要はありませんが、アメリカで検査のために開けられる可能性があるので、かぎは閉めないでください」との答え。なるほど、テロ対策もちゃんと行われているようだ。ところが、同じ質問をブエノスアイレスのエセイサ空港でデルタの職員2名にしたところ、「アメリカでの検査はないから、かぎをかけても大丈夫」と異口同音の答え。結果からいうと、成田に着いたとき、ホルヘのバックには「INSPECTED」のテープが巻かれ、アメリカで開けられたことを物語っていた。当然、ホルヘはエセイサ空港での言葉を信用していなかったので、スーツケースにかぎはかけなかった。もしかけていたら、アメリカで壊されたわけだ。アルゼンチンに限らず、南米ではこのようなことがたくさんある。彼らはうそをついているわけでも、特別に無知なわけでもない。この場合、「デルタはアメリカでピックアップ不要。目的地まで直接届く」ということを、「アメリカでの検査はない」と勝手に解釈したに過ぎない。ようするに誤った判断を下しただけで、意図的なうそでも、でたらめでもないのだ。とはいえ、それを信じてしまった人は、少なからず被害を被ることになる。

 そこへいくと、日本人は偉い。わからないことは「わかりません」と答える。仕事であれば、わからない場合は上司に相談する。その上司もわからないと、さらに上へ回っていき、質問した人が延々と待たされたりする。これは、間違わないように、という配慮よりも、間違うことを恐れているからのようである。間違ったことをいうと、うそつき呼ばわりされ、やがてはのけ者にされるような閉鎖的村社会に生きた先祖のDNAが受け継がれているのだろう。これに対し南米人の祖先は、侵略したりされたりのヨーロッパがルーツで、侵略者からの逃走や貧しさを経験して南米へ移住した者が多い。彼らのDNAは、「信じられるのは、自分だけ」である。だから今の南米人も、自分の考えや判断を大切にする。その結果間違っても、それはそれで構わない、という考えだ。

 この違いは、サッカーにも現れている。戦術通りに戦おう、ミスをしないようにしよう、というのが日本のタイプ。日本人でも個人競技であれば、「他人に迷惑かけるわけじゃねぇ」と突飛なことをする選手もあるが、チーム競技では少ない。だから、特に攻撃においては、相手にプレーを読まれやすい。しかし南米では、チームワークという囲いの中でも選手は自己を埋没させていない、というか、失っていない。だから、戦術通りにプレーしながらも、「ここは、こうやったほうがいいんじゃないのか」と常に考え、ときには自分の判断で、監督の指示以外のこともやる。そして失敗することもあるが、監督はこのことに対する許容範囲をもっている。このあたりが、南米のサッカーに人間くささを感じさせる理由だろう。人間くささが出るということは、プレーの意外性につながる。だから見ていて楽しいし、相手はやりにくい。日本のサッカーにも“人間くささ”を取り入れてほしいものだが、先祖のDNAは取り除けないかな。

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