平成29年度全国高等学校総合体育大会
サッカー競技大会 男子 準決勝
日本大学藤沢高校-船橋市立船橋高校

2017年08月03日

松尾祐希(サッカーライター)取材・文・写真

17年8月3日(木)12:00キックオフ/みやぎ生協めぐみ野サッカー場 Aグラウンド(宮城県)/観客400人/試合時間70分+PK戦
日本大学藤沢高校
1 0-0
1-1
5PK3
1
船橋市立船橋高校
菊地大智(後半35+3分) 得点者 郡司篤也(後半23分)

優勝候補の筆頭で連覇を目指す市立船橋に、躍進を続ける日大藤沢が相まみえた準決勝。前半は互いに決定打を繰り出せず、0−0で折り返すことになった。その中で先手を取ったのは市立船橋だった。後半23分、途中出場の⑩郡司篤也がCKのこぼれ球に反応して先制弾。これで勝負の行方は見えたかと思われたが、ここから日大藤沢が猛反撃。なかなかゴールをこじ開けられなかったが、ラストプレーで途中出場の⑭菊地大智が起死回生の同点弾。この勢いのままPK戦も5人全員が決め、日大藤沢が初の決勝進出を決めた。

躍進を続ける日大藤沢
図太い伏兵・菊地が
チームを初の決勝進出に導く

出番が回って来たのは後半34分だった。表示されたアディショナルタイムは3分。それを含めてもプレー時間はあっても4分前後だろう。しかも本職のボランチではなく、「今日は左SBの⑤(中村)翔輝が調子良かったので、1つ前に上げて残り5分で⑭菊地を入れて勝負しよう」という佐藤輝勝監督の思惑もあり、慣れない左SBでの起用。どこでもできるのが強みの⑭菊地だが、「サイドバックでこの時間から何をすればいいのかと思っていた」と語るように本意でなかったのは事実だ。

しかし、ラストプレーとなった後半35+3分。ハーフライン手前からGK①竹内暢希がFKをゴール前に蹴り込むと、こぼれ球が彼の下へ。「チャンスが回ってきたので思い切り打った」という⑭菊地が何も考えずに思い切り右足を振り抜くと、市立船橋GK①長谷川凌の手を弾きながらきれいな弧を描いてネットに吸い込まれた。この一撃で崖っぷちから生還した日大藤沢。この勢いのままPK戦も制し、最後は同点弾を決めた⑭菊地がきっちり決めて初の決勝へと駒を進めた。

今大会は土壇場で試合をひっくり返して、しぶとく勝ち上がってきた日大藤沢。スーパーサブを担う⑰三田野彗や⑯ギブソン・マーロンが躍動するなど、日替わりヒーローの活躍がなければここまでの勝ち上がりはあり得なかった。ただ、準決勝勝利の立役者⑭菊地はスーパーサブを担うようなタイプではなく、むしろ伏兵と呼べる存在だ。そんな彼を指揮官が市立船橋戦の最後に投入したのには訳がある。試合前のちょっとした行動がきっかけだった。ゲームのアップ前、選手が集まっているロッカールームに顔を出した佐藤監督。日藤イレブンは思い思いの時間を各自過ごし、大一番に向けて集中力を高めていた。しかし、⑭菊地だけは人目も気にせず、大胆な行動を取っていたのである。

「環境が変わると寝られなくて、夜も全然寝られていなかった。それが朝のきつさにつながっていたので、少しでも時間があれば寝るようにしていた。なので、バスでも寝ていて、監督にどう思われているかも気にしないでコンディションのためにやっていました」

慣れない環境で睡眠不足に陥ったこともあり、このタイミングで仮眠を取っていたのだ。しかし、それを見た指揮官は彼の行動をとがめるのではなく、「こいつは度胸がある(笑)。だから、PKになればいちばん度胸がいる最後に蹴らせよう」と逆の発想で起用を決断。もし、この行動を監督が見ていなければ、今日の同点弾は生まれていなかっただろう。オフ・ザ・ピッチでの動じない⑭菊地のメンタリティー。決勝でも彼の度胸がチームにとって欠かせないはずだ。

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