第97回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第97回全国高校サッカー選手権大会
3回戦 尚志-前橋育英

2019年01月04日

安藤隆人(サッカージャーナリスト)取材・文
佐藤博之 写真

19年1月3日(木)12:05キックオフ/埼玉県・浦和駒場スタジアム/観客7,590人/試合時間80分
尚志
2

0-0
2-1

1
前橋育英
沼田皇海(後半9分)
染野唯月(後半11分)
得点者 高橋尚紀(後半31分)

東福岡を撃破した勢いそのままに尚志が立ち上がりから⑥坂下健将と⑮大川健のダブルボランチを軸に、テンポのいいパス回しと鋭いサイド攻撃で前橋育英に襲いかかった。後半9分に尚志はFKを得ると、DF⑤沼田皇海が壁を無力化にする鮮やかなシュートを直接沈め、先制に成功する。同11分にはMF⑪加瀬直輝が鋭いターンで右サイドを破り、グラウンダーのパス。これをエースストライカーの⑨染野唯月が今大会初ゴールをたたき込んだ。前橋育英は、同31分にFW⑩高橋尚紀がMF⑭秋山裕紀とのワンツーで抜け出すと、豪快にゴールに突き刺し1点を返すが、時既に遅し。2−1で尚志が準々決勝進出を決めた。

勝負を分けた『とっさのひらめき』
途中出場の高橋海大が試合を動かす!

『とっさのひらめき』が試合を大きく左右した。

0−0で折り返したハーフタイムに、尚志・仲村浩二監督は2トップの一角だったFW⑦二瓶由嵩に代えて、2回戦の東福岡戦で貴重な追加点をたたき込んだDF⑭高橋海大をそのまま2トップで起用する決断を下した。

その⑭高橋が後半9分にドリブル突破を仕掛け、ゴール右45度の絶好の位置でFKを獲得すると、これをDF⑤沼田皇海が得意の左足で決めて、待望の先制弾をたたき出した。これで勢いに乗った尚志は同11分にFW⑨染野唯月が2点目を挙げ、その後に1点を返されるが、2−1の勝利を掴みとった。

⑭高橋のFW投入が流れを引き寄せたといってもよかった。仲村監督は⑭高橋を「野性味があって、身体能力がハンパない。前への推進力もあってウチの『スーパーサイヤ人』のような存在」と語るように、もともと左サイドバックとして高い守備力と積極的なオーバーラップを得意としていた。だが、このポジションには高性能の左足を持つ⑤沼田がいた。

「彼をベンチに置いておくのはもったいない」と、仲村監督は彼に『エース封じ』のタスクを与えた。大会前の12月中旬に行われたプレミアリーグ参入決定戦の横浜F・マリノスユース戦では、相手のエース椿直起に対し、「椿を止めるのは、(⑭高橋)海大しかいない」と、左サイドハーフの椿に対し、⑭高橋を右サイドバックで起用。見事に対応して、2−1の逆転勝利に貢献をした。

そして、2回戦の東福岡戦でも「東福岡の場合は誰が一番いいかというと、仕掛けられるし、中に入ってゲームを作れる(右サイドバックの)中村拓海(FC東京内定)を止めるために」と、左サイドハーフに起用。彼の攻撃力を食い止めただけでなく、2点目のゴールまで決めてみせた。

前橋育英に対して、当初は相手の左サイドハーフの⑬森隼平に彼を当てるつもりだったが、「2回戦でベンチスタートだったので、もしかするとスタメンで使って来ないかもと思ったので、とりあえずベンチスタートにして、右サイドバックに②石川竣祐を起用した」(仲村監督)。

ふたを開けてみると、⑬森はスタメン出場だったが、前半を見る限り②石川がうまく対応していた。その一方で⑦二瓶は疲労も目立ち、攻撃が機能し切れていないことを感じた仲村監督の頭に、冒頭のひらめきが生まれた。

「FW起用の頭はなかったのですが、ふと『⑭高橋がFWでいいじゃないか、あいつで行くしかない!』と直感したんです。もう自分の直感を信じて、『お前に懸ける。お前が何かをしないとこの試合は勝てない』といって送り出しました。FKをちゃんと取ってくれて、彼の能力はすごい」

仲村監督のこの直感が生まれたのと、それをすぐに実行に移したのは、すべて⑭高橋への絶大な信頼が合ったからこそ。そして、その信頼に彼は見事に応えた。

次なる準々決勝の帝京長岡戦で、指揮官は彼をどこに置くのか。それともこの試合のように直感に委ねるのか。いずれにせよ、彼の起用法が尚志の勝敗の大きな鍵を握ることになるだろう。

監督・選手コメント
尚志・仲村浩二監督
⑨染野がよく決めてくれました。全てが決勝戦だと思ってやっています。震災後初のベスト8まで来られたので、福島県のために頑張りたいと思います。今年、Jヴィレッジが復活して、そこに大変お世話になって、綺麗な人工芝で練習も試合もさせてもらって、僕らのわがままを全部聞いてもらって、トレーニングをさせてもらいました。天然芝で好き勝手やらせてもらって、素晴らしい準備ができた。Jヴィレッジの復活は「福島県は元気だぞ」ということを伝えられる重要なことだと思っています。

尚志・⑨染野唯月
辛い所で点を取れたことで成長していると思います。頭のケガはもう完全に大丈夫です。自分達の目標は全国制覇。これからも厳しい試合が続くので、1試合1試合チームの団結力を深めて、自分達が成長をして行って、最終的には優勝という結果を福島に持ち帰りたいです。

尚志・⑤沼田皇海
キックは軸足が重要なので、そこはずっと意識をしてきました。壁が飛ぶと思っていたので、壁を越そうと思っていました。

前橋育英・山田耕介監督
尚志はスペースを消してきましたし、『持たされている感』はありました。昨日のゲーム内容に比べると今日のほうがよかった。尚志は全員の守備意識が高くて、ポジショニングもしっかりしていました。さすがに今日は3試合目だったので、最後のほうは足がつっていましたが、ハードワークもできて、基本に忠実にできるチームだという印象を受けた。そんなにうまく行かないのがサッカー。毎年、毎年勝てるとは限らない。「まだまだ力がないぞ」という所だと思います。最終的には彼らの力をもうちょっと引き出せなかった監督だったと思います。彼らは本当はもっともっとやれると思うんです。選手達にはもうサッカーはこれで終わりではない。負けたことは仕方が無いけど、サッカーを続けて頑張って欲しいという話をしました。

前橋育英・⑭秋山裕紀
14番は特別な背番号で、僕もこの1年間チームに迷惑をかけて来たので、最後の選手権の舞台でもっとしっかりとプレーしたかった。Jが決まって周りのプレッシャーもありますが、自分らしくやろうと思いました。初戦は途中から出場をして、絶対にチームの流れを変えてやろうと思っていた。そこは切り替えて今日はピッチに立っている以上、前橋育英の代表なので、みんなで上に行くことを考えてプレーしました。

前橋育英・⑨榎本樹
連覇、連覇といわれ続けて、僕らは「自分たちの代で初優勝しよう」と話していたのですが、心の何処かに「厳しいかも」という想いがあって、ちょっと堅い試合になってしまったと思います。去年の優勝も、今年の負けも自分に大きな成長を与えてくれると思います。悔しさが残りましたが、この悔しさをプロに活かしていきたいと思います。

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