第97回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第97回全国高校サッカー選手権大会
2回戦 星稜-明秀日立

2019年01月03日

本田好伸(フットボールライター) 取材・文・写真

19年1月2日(水)12:05キックオフ/千葉県・県立柏の葉公園総合競技場/観客3,004人/試合時間80分
星稜
1 0-0
1-0
0
明秀日立
尾﨑佳洋(後半40+3分)
得点者  

1回戦と同じ布陣の明秀日立に対して、星稜は相手の2トップを封じるため守備時に5バックを敷いて対抗。立ち上がりから前線に起点を作りたい両者だったが、中盤の制し合いで譲らない。それでも、星稜が徐々に押し込む場面を増やしていくと、前半36分にPKを獲得。キッカーを務めたのは1回戦で2得点の⑩岩岸宗志だったが、左に蹴ったシュートは明秀日立の守護神・⑫木村謙一が完璧に読み切ってシャットアウトした。その後、0−0ながら後半も星稜の攻撃が目立つ展開となるが、明秀日立もGK⑫木村とセンターバックの④高嶋修也、⑲深町琢磨を中心とした固いブロックで崩れない。しかし、PK戦の決着と思われたアディショナルタイム3分、星稜は途中交代の⑭川本虎太郎が右サイドからクロスを上げると、中央の⑧尾﨑佳洋が頭で合わせて劇的な決勝点に。昨年の2回戦と同カードの対決は、星稜が雪辱を果たして3回戦進出を決めた。

ハイレベルな“矛と盾の対決”は
1年生アタッカーのクロスで決着

 星稜の河﨑護監督は後半21分、夏のインターハイで10番を背負っていた中軸・⑨有馬大勢に代えて、1年生の⑭川本虎太郎を投入。結果的に、この試合で星稜の唯一となった交代が、勝敗を大きく分けた。

「相手の空中戦は激しいですし、(クロスを上げるのではなく)うまく中で切り返して逆を取りながら、仮に前に抜けなくても(エリア内でファウルを誘って)PKをもらうこともできるとアドバイスしました」

 ⑭川本は、そんな指揮官の期待に堂々としたプレーで応えた。右サイドでボールを持つ度に果敢に仕掛ける姿勢を見せると、決勝点を生んだ場面でも、右サイドでボールを持ちながら相手守備陣の注意を引き、フリーで待つ⑧尾﨑佳洋にふわりと浮くドンピシャのクロス。初めて明秀日立の守備がほころんだシーンだった。

 展開的には、星稜が最初から最後まで押し込んだゲーム。しかし、1回戦でも際立った明秀日立の守備力はこの日さらにパワーアップした威力を発揮していて、彼らのゴール前には、センターバックの④高嶋修也、⑲深町琢磨、それにGK⑫木村謙一による強固なトライアングルが形成されていた。

 明秀日立にとって「前半に風上に立ちたくはない思惑は裏目に出て、そこで点を取りたかったものの相手の技術が高く思うようにいかなかった」(萬場努監督)ことは痛手だったが、信条とするチャレンジ&カバーを存分に発揮した守備力で終盤までスコアレスで持ちこたえたことは想定内だったはず。GK⑫木村が前半のPKのピンチで相手シュートを読み切ってセーブした“いいイメージ”も重なり、PK戦にもつれ込めば、勝負強い明秀日立に分があるのではないかと思われた。しかし、彼らの“盾”は1年生アタッカーに破られた。

「⑭川本は、スピードで勝負するタイプではなく、ドリブルで緩急をつけて、ボールを足元に置いて運ぶ選手です。(最後にアシストの場面は自分で)シュートに行ったのかクロスを狙ったのかよくわからなかったのですが、最後、吸い込まれたなと。(フリーで走り込んだ⑧尾﨑も)あそこにうまく入ってくれた」

 河﨑監督が「吸い込まれた」と振り返ったが、あのときの明秀日立の守備陣は逆に、⑭川本に“吸い寄せられて”いた。④高嶋も⑲深町も⑭川本の動きに釣られ、気がつけば星稜の⑧尾﨑と⑪西部悠大に対して、明秀日立の守備は遅れながらカバーリングに入ってきた右サイドバックの⑤飯塚翼だけだったのだ。

 甲乙つけがたい、ハイレベルな攻防は、まさにラストワンプレーで決着。「同じチームに2年連続で負けるのは悔しいですから、OBが一番、喜んでくれたのかなと思います」(河﨑監督)と、星稜にとってはリベンジ成功となった。昨年は1−0で勝利した明秀日立がベスト8へ、そのちょうど1年後、1−0で勝利した星稜は、この先どこまで勝ち上がれるか。次は、今大会の優勝候補・流通経済大柏に挑む──。

監督・選手コメント
星稜・河﨑護監督
明秀日立の1回戦を見て、前線の2人は破壊力、スピード、フィジカルもあって、うちのセンターバック2人だけでは抑えられないだろうということで、3バック(で守備で両ワイドが下がる5バック)でいくと決めました。こちらのチャンスもありましたが、危ない場面でも失点しないで切り抜けてくれて、後半も0−0のままでPK戦を覚悟していました。試合前は4:6でうちの分が悪いと思っていたのですが、相手の2トップと中盤をうまく分断できたことが勝因だと思います。その点では(ボランチの)⑥中村(日向)がよくやってくれました。(ゴールをアシストした)⑭川本(虎太郎)は最後、一番いいところにいました。1年生ですが堂々とプレーしていましたし、冷静に仕事をしてくれました。今思えば、同じチームに2年連続で負けるのは悔しいですから、OBが一番、喜んでくれたのかなと思います。

明秀日立・萬場努監督
選手はよく力を出し切ってくれました。(終了間際に失点する)その前に決定的なチャンスを取り切れなくて、勝負の世界は一つのちょっとしたことで(明暗が)分かれてしまうと改めて感じました。一生懸命にやりましたが、甘くはないですね。勝つにしても負けるにしても接戦になると思っていたので、(前半にPKの大ピンチを止めたことは)望みがつながりました。今日はPK戦になっても仕方がないという想定があったので、最後まで粘り強くやるしかないだろうと。この先、大学で続ける選手も多いですし、ここで終わりではなく、ああいう際どいところで自分たちにいい結果をもたらせる選手になってもらいたいです。うちで培ってきた粘り強さやファイティングスピリッツをベースにして、次のステージでも輝いてもらえたらと思います。

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