第97回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第97回全国高校サッカー選手権大会
2回戦 秋田商業-富山第一

2019年01月03日

本田好伸(フットボールライター) 取材・文・写真

19年1月2日(水)14:10キックオフ/千葉県・県立柏の葉公園総合競技場/観客2,800人/試合時間80分
秋田商業
1 0-0
1-0
0
富山第一
鈴木宝(後半29分)
得点者  

1回戦と同じ先発メンバーで臨んだ両者は、序盤から相手の背後を狙うボールで攻め込むが、先に試合のペースをつかんだのは富山第一。左サイドや中央を使いながら、⑩小森飛絢を中心にゴール前の圧力を強めていった。しかし、秋田商業はエリア内に人数を掛けてスペースを与えず、しぶとく守り抜いていく。後半に入っても富山第一が攻め込み、秋田商業が徹底的な守備からカウンターでFW⑦長谷川悠に集める展開は変わらない。すると、富山第一に疲れが見え始めた中盤以降、少しずつ秋田商業が攻める時間を増やすと、後半28分にハーフウェー付近で間接FKを獲得。⑦長谷川がその位置からゴール前に送った低弾道のボールはそのまま流れたが、GKの取りこぼしにいち早く詰めた⑨鈴木宝が左足で押し込んで先制に成功する。残り時間10分を切って後がなくなった富山第一はさらに攻勢を強めてチャンスを作ったが、ネットを揺らせず。最後まで集中した粘り強い守備を続けた秋田商業が、秋田県勢として19大会ぶりとなる2回戦突破を果たした。

耐えて耐えて耐え抜いて勝ち取った
秋田商業、県勢19大会ぶりの2回戦突破

 秋田県勢として14大会ぶりとなる1回戦突破を果たした秋田商業は、2回戦でも強豪・富山第一を撃破して、今度は19大会ぶりとなる3回戦進出をつかみ取った。まさに、死力を尽くした勝利だった。

 敗れた富山第一の大塚一朗監督は試合後、「プランどおりに押し込むことはできていましたが、最後のシュートのところと、相手の粘り強い守備をなかなか突破できませんでした」と振り返ると、監督を囲む記者陣に「シュート何本ですか?」と問い掛けた。公式記録を見ると、富山第一の7本に対して、秋田商業は6本と拮抗している。しかし、秋田商業の前半は0本だったことも含めて、試合を目撃した誰の目にも明らかなほど、序盤から立て続けに攻め込んでいたのは富山第一のほうだった。

 左右のタッチラインからゴール前へ放つロングボールや、CK、FKなど、セットプレーで何度もチャンスを作り、左サイドバックの㉙真田滉大や左サイドハーフの⑥橋爪晃広を使ったサイド攻撃、トップ下でゲームをコントロールする高校総体得点王の⑩小森飛絢を中心としたアタックなど、前半はほとんど秋田商業の陣地で試合が繰り広げられた。しかし、秋田商業の守備に対する忍耐強さは、相手の攻撃力を上回った。

「止める・蹴る・走るスピードという面でも相手の能力のほうが高いと思っていたので、勝ちたいという気持ちを継続できたことが勝因だと思います」

 秋田商業の小林克監督はそう話した後、「どうしてそれほど走れるのか?」と問われて逆に、記者陣に「一緒に走りますか? 2日間でかなり痩せると思います」と答えて笑いを誘った。そして、「走ることについては、(3年間の練習で)選手は相当、苦しい思いをしたと思います。でもそこを耐えたからこそ、今日も耐えられたのかなと思いますし、積み重ねてきてよかったです」と続けた。

 もともとチームカラーに「走力」があるものの、夏の高校総体で全国大会出場を逃してからは、さらに過酷なトレーニングを積んできたのだという。決勝点を挙げたキャプテンの⑨鈴木宝が「近くの砂浜や山に行って、毎日毎日、走りました。1年生では冬場、毎年恒例となっている雪上でフィジカルトレーニングをして、2年生からはボールを少し使いながら技術を磨いて、両方を鍛えてきました」と説明するが、最後の最後で踏ん張る力を養ったのはやはり、走り込みのトレーニングなのだという。

「3年間、一番頑張ってきたのが走ることで、辛い時でもみんなで頑張ってきた積み重ねが出ました」

 3年生にとって集大成となるこの舞台でようやく、積み重ねの価値を知るのだろう。ただ一方で、“勝負の綾”というものが、残酷なほどにその積み重ねをあざ笑うことがある。富山第一は、2013年の第92回大会で、大塚監督の息子であり、10番を背負った主将・大塚翔を擁して初優勝を遂げた。そんな、積み重ねの先に日本一の経験を味わったチームでも、“勝てそうな展開で決められない危険な流れ”には勝てない。

「前半からずっと攻めていて、決定機が何回もあるのに決められなくて、そのときにパッと浮かんだのは、大塚監督が(富山第一の)選手だったころに、選手権でずっと攻めていて、シュート1本でやられたと聞いていたことでした。そういうことがあるのかもしれないという思いがありました」

 センターバックとして守備ラインを統率したキャプテンの⑤中田青の頭に、そんな悪い予感がよぎってしまったのだという。そして予感は的中してしまう。失点に直結した間接FKは、自陣でクリアした瞬間、相手陣内でわずかに前に出ていた味方がオフサイドを取られたことによる、ささいなファウルだった。

 耐えて耐えて耐え抜いたからこそ巡ってきたチャンス。一方で、攻めて攻めて攻め抜いて決め切れなかったからこそ招いてしまったピンチ。いずれも積み重ねの結果であり、勝負の綾でもあるのだ。

 次は佐賀県の龍谷との対戦。秋田県勢として3回戦を突破すれば、秋田商業がベスト4に進出した昭和61年の第65回以来、32大会ぶり。「秋田は進学校も、実業高校のスポーツ部も文化部も頑張っています。商業高校として金足農業に近づけたら実業高校への注目も集まると思うので、そういった意味でも頑張りたい」(小林克監督)。夏は甲子園準優勝の「金農旋風」に沸いたが、冬は「秋商旋風」を巻き起こせるか──。

監督・選手コメント
秋田商業・小林克監督
相手のロングスローやCKなどセットプレーが脅威でしたし、それを受ける時間がすごく長かったので辛かったです。これまでこんなに耐えられたことがなかったので、選手の集中力、今大会に懸ける気持ちがものすごいものだと改めて感じました。止める・蹴る・走るスピードという面でも相手の能力の方が高いと思っていたので、勝ちたいという気持ちを継続できたことが勝因だと思います。走ることについては、(3年間の練習で)選手は相当、苦しい思いをしたと思います。でもそこを耐えたからこそ、今日も耐えられたのかなと思いますし、積み重ねてきてよかったなと。サッカーとしての内容が魅力的かどうかはわからないですが、一生懸命に頑張ることは大事ですし、地元の小学生や中学生にも、必死に頑張ることがつながるものもあると伝えたいです。また、目標になるようなチームにして、明日もやっていきたいと思います。

秋田商業・⑨鈴木宝
(⑦長谷川)悠がFKを蹴るときにボールが来ると確信していたので、信じて走り込んだらそこにボールが来ました。相手に当たって取られてしまうと思ったのですが、最後まで信じてゴールに詰めて決められてよかったです。プリンスリーグで今シーズンやってきたことで、(⑦長谷川)悠との信頼関係が固いものになったと感じているので、その経験が生きたと思います。それにこの3年間、一番頑張ってきたのが走ることで、辛いときでもみんなで頑張ってきた積み重ねがここで出たのかなと思います。

富山第一・大塚一朗監督
プランどおりに押し込むことはできていましたが、最後のシュートのところと、相手の粘り強い守備をなかなか突破できませんでした。前半のうちに先制点を決めることができず、後半になって相手の勢いが出てきたところで決められてしまいました。(失点につながった相手FKの)低いボールに誰も反応できなかったところにも隙があったと思います。最後はパワープレーで決定的な場面もありましたが、チャンスで決めることができないというところが今のうちの力ですし、弱さだと思います。(ベスト8に進んだ高校総体で)得点王の(⑩小森)飛絢は無得点でしたし、将来に向けてもっと力をつけてほしい。それに2年生は、上級生になったときにチャンスで確実に決められるような、そんなチームにしたいと改めて思いました。

富山第一・⑤中田青
試合終了の笛が鳴った瞬間は、3年間が終わったんだなって。でも、この仲間とサッカーができて楽しかったですし、サッカーはこれで終わりではなく、僕は大学サッカーに進むので、4年間で成長して絶対にプロになろうと、そのときに思いました。(試合後、千羽鶴を秋田商業のロッカールームに渡しに行ったのは)自分たちの分まで頑張ってほしいという正直な気持ちです。(1回戦で勝った)西京からももらっていたので、その分まで戦っていたのですが、彼らが渡すときもこういう気持ちだったんだなと……。全国の舞台は誰もが立てるわけではなくて、勝ち抜いてきた者しか立てないので、一番に思うのは、楽しかったという感想です。

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