第97回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第97回全国高校サッカー選手権大会
1回戦 明秀日立-大阪学院

2019年01月01日

本田好伸(フットボールライター) 取材・文・写真

18年12月31日(月)12:05キックオフ/千葉県・県立柏の葉公園総合競技場/観客4,379人/試合時間80分
明秀日立
1 1-0
0-0
0
大阪学院
二瓶優大(前半25分)
得点者  

試合序盤は、風上の大阪学院が左サイドの⑩田中英哲を中心に相手陣深くまで進入するシーンを何度も作り出していた。対する明秀日立も、右サイドバックに入った⑤飯塚翼や、センターバックの④高嶋修也、⑲深町琢磨が堅い守備で食い止めると、その奮闘ぶりに攻撃陣も応え始める。前半25分、2トップの一角、⑩津村夢人がペナルティーエリア外からミドルシュートを放つと、クロスバーに当たった跳ね返りを⑪二瓶優大が押し込んで先制に成功。この1点をきっかけに試合は明秀日立のペースになっていった。試合終盤、大阪学院は2トップから3トップにシフトしてパワープレーを仕掛けてきたが、明秀日立は最後まで集中力を切らさずに対応。初出場の大阪学院を相手に最少スコアで逃げ切り、ベスト8まで勝ち進んだ昨年の強さを継承する戦いを披露した。

徹底的「チャレンジ&カバー」
明秀日立、守備でリズムを作って勝利

この試合は間違いなく、明秀日立の「守備力の勝利」だった。前半、大阪学院は左サイドハーフの⑩田中英哲を中心にサイドから果敢に攻略を狙い、実際に何度も、縦へ、中へと進入してみせた。しかし、明秀日立は最後のところでことごとくそれを封じ込めた。ほかにも、前半に6本ものCKを与えたが、長身がそろう守備陣がすべてをはじき返して、「守備では絶対に負けない」という気迫を、試合を通して見せていた。

「相手の10番を抑えたい気持ちがありました。いつもの形ではなく、器用な⑤飯塚(翼)をそこに当てれば、最悪でも帳消しにできるかなと思っていて、そこの決断が今回は難しかった」

萬場努監督は、スカウティングに基づいて、自分たちから仕掛けていく指揮官だ。この試合における一つのキーポイントを、相手のテクニカルなドリブラーがいる自陣右サイドに定め、その対応を普段は左サイドバックの⑤飯塚に託した。その戦略は「逆だったらもっとやられていたと思うので、よくやってくれました」と、及第点の出来。しかし、実際に突破されるシーンも多く、完璧に封じることはできなかった。

そこで生きたのが、明秀日立が信条とするチャレンジ&カバーだ。

「今日は右サイドバックが⑲深町(琢磨)くんだったので、試合前からチャレンジ&カバーをしっかりしようと。それに、自分の裏のスペースも狙われていたので、そこの修正も試合中に話していました。正直、自分のところでやられたくはなかったんですけど、もし裏を取られても⑲深町くんがいる信頼があったので」

⑤飯塚は、右サイドで相手を追い込みながら、かわされたとしても、カバーに来ている味方が対応している間に再びカバーリングする動きで、決定打を与えなかった。そうやってサイドから最終的に崩されなかったことで、後半は大阪学院も中央から右サイドを使うようになり、明秀日立が守備でペースを手に入れた。

この試合は、同時に中央の対応も秀逸だった。萬場監督が「代えの効かないというか、いるだけで違うことをよく感じましたし、彼を中心に作ってきたので、ダメでも心中しようと思った」と絶大の信頼を寄せるセンターバックでキャプテンの④高嶋修也が中央全域をケアした。しかし、④高嶋はつい数週間前に負ったヒザの負傷を抱えながらの出場であり、ハイパフォーマンスではなかった。実際、「入れ替われることを嫌がって、ラインを下げてしまっていた」と、積極性や試合勘で鈍さをかいま見せる場面もあった。

ただ、ここでも明秀日立のチャレンジ&カバーがポイントになった。

「大阪を勝ち上がってきただけあって、前半にその実力を感じて、後半はかなり危険だろうと思っていました。だから最終ラインは気合いを入れ直そうと。チャレンジ&カバーをはっきりすれば、2人目のところで絶対に取れると話しました。それで⑲深町や⑤(飯塚)翼が積極的にチャレンジしてくれて助かりました」

④高嶋が100パーセントではない分を周りがカバーしたことで、中央のピンチは皆無。さらにそこは、アンカーを務める⑥成島茉宏の存在も大きかった。「あそこでどっしりと構えてくれるのは、最終ラインの自分としては安心できます。対人でも負けない強じんな体もありますから」と、④高嶋が裏を取られても、あらかじめカバーリングしてくれる“縦のパートナー”がいたことも、明秀日立の守備を強固にしていた。

「守備から攻撃しようというのはずっと心掛けていたことです。前には⑩津村(夢人)や⑪二瓶(優大)などテクニックとスピードのある選手が多いので、大きくクリアしてもそれがアシストになって点が決まることもあります。だから守備から攻撃につなげようという意識はいつも持っています」

④高嶋がそう話すように、彼らの強さは守備からリズムを作るところにある。フィジカルや高さという武器に加えて、積極性と味方のサポートという、チームワークが生み出す最高の守備力。昨年、2回目の出場ながらベスト8に勝ち上がる快進撃を見せた彼らは、さらにパワーアップした姿で大会に戻ってきた。

監督・選手コメント
明秀日立・萬場努監督
真面目な選手が多いですし、手堅くといいますか、先に1点を取ったら勝てると思っていたので、ある程度は想定の範囲でできて慌てることはありませんでした。後半、相手よりも先に交代カードを切りましたが、一発勝負ですし、後出しで対応するのではなく自分たちの積極性を出したいので、迷ったらゴーだなと思っています。昨年はベスト8までいきましたが、今日きちっと勝つことでしか先はないと思っていました。ですがベスト8は確実に超えたいですし、ここが決勝のつもりではなく、決勝にいくための一つのポイントとして、着実に勝ち進んでいきたいです。次もしっかりと準備をして臨みたいと思います。

明秀日立・④高嶋修也
相手のサイドハーフは脅威でしたが、1年間、練習してきた自分たちの守備はしっかりと出せたと思います。ただ、自分自身は、相手に入れ替わられることを嫌がって守備ラインを下げてしまい、積極的にコントロールできませんでした。全国レベルではそういったスキを突かれてしまうので、次の試合までには頭も体もリセットして調子を整えたいです。今年は昨年を経験しているメンバーが半分くらいいて、全国の難しさを知っていますし、そういう経験を周りにも共有できています。真面目で、サッカーに熱心な選手がたくさんいるので、それが今年のチームの結果にも表れていると思います。

明秀日立・⑤飯塚翼
いつもは左サイドバックですが、今日は右でした。ただ紅白戦などではやっていたので準備はできていましたし、相手の10番を抑える仕事もわかっていました。ですが、かなりやられてしまったのでそこは改善して次に臨みたいです。自分は昨年も出ているので引っ張る立場だという気持ちが強くて緊張してしまったのか、試合に入るのが遅すぎました。ただ後半は逆サイドを使われることが多かったので、そこは自分の長所でもあるカバーリングに集中してやれました。明秀日立は攻撃よりも守備からリズムを作るので、もっと安定させないといけないなと思っています。

大阪学院・小野原明男監督
相手は最後までスピードを落とすことなく守り切られてしまいましたし、そうした相手の素晴らしさもありますが、自分たちの甘さやスキを出してしまった試合でした。そこについてはこうしたトーナメントは結果がすべてで言い訳はできないですが、選手は積極的にプレーしてくれましたし、強気な姿勢やファイトする姿勢をこの夢の舞台で存分に見せてくれて誇りに思います。このレベルでサッカーをするためにも、やはり相手どうこうではなく、自分たちの甘さや弱い部分を見せてしまうと戦えないと感じました。そういった選手としても人間としても戦える選手を育成できるよう、(今大会の経験を)今後の指導に生かしていきたいと思います。

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