第95回全国高校サッカー選手権大会 全試合完全レポート

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第95回全国高校サッカー選手権大会
準々決勝 東海大仰星-東福岡

2017年01月05日

鈴木智之(スポーツライター)取材・文
高橋学 写真

17年1月5日(木)12:05キックオフ/神奈川県・等々力陸上競技場/観客6,353人/試合時間80分
東海大仰星
1 0-0
1-0
0
東福岡
⑤吉田純平(後半26分) 得点者  

強風吹きすさぶ等々力陸上競技場。前半、東海大仰星が風下で東福岡の攻撃を迎え撃ち、無失点で後半に突入する。東福岡はボールを保持するものの、東海大仰星の堅い守備と風の影響で決定機は数えるほど。均衡が破れたのは後半26分。左からのコーナーキックをファーサイドで③玄尚悟が折り返し、ゴール前の混戦から⑤吉田純平が蹴り込んだ。東海大仰星は試合を通じて唯一のシュートが決勝点となり、優勝候補の東福岡を撃破。準決勝進出を決めた。

東海大仰星がダブルボランチを中心に
守備で主導権を握り、東福岡に快勝!

東海大仰星からすると、プランどおりの快勝だった。DF4人とMF4人の2ラインを整然と保ち、ゾーンを埋める守備をしつつ、進入してくる東福岡の選手をブロック。アグレッシブな守備で試合の主導権を握り、少ないチャンスをゴールに結びつけた。

チームの生命線である守備をリードしたのが、④大崎航詩と⑧原田紘汰のダブルボランチ。⑧原田は守備時の認知・判断が驚くほど的確な選手で、東福岡の精巧なパスワークと対じしながらも、いつボール保持者にプレスに行くのか、どの状況で横のラインをキープするのか。一度マークを外した相手を、どのタイミングで再びつかまえるのかといった、守備時に重要なプレーの判断を的確に行っていた。

⑧原田に東福岡ボールになったときの、守備の仕方を尋ねると「相手の6番(アンカー)が自分たち中盤のラインとFWの間でボールを受けることが多かったのですが、そこでボランチの自分が前に出てボールを奪うと、後方のスペースを空けてしまうので、FWを6番の位置まで降ろさせて、守備の陣形が整ってから前に出ようとしていました」と、理路整然と話してくれた。

スタンドから見ていると、マークのズレやスペースの空きなどは一目瞭然だ。しかしピッチの中に入り、平面かつ、敵味方入り乱れた状態で認知するのは非常に難しい。そんな中、⑧原田は自身をピッチ上空から見ているかのように、的確な認知・判断で中央部の守備を構築していた。たとえJリーガーでも、守備の認知・判断をミスなくやり続けることは難しい。その意味で、類まれな能力を持つ選手だと言えるだろう。

相棒の④大崎はこの日、元フランス代表のマケレレのようにセカンドボールを拾い続け、東福岡に攻撃の主導権を握らせなかった。

「東福岡の攻撃は10番(藤川虎太朗)と11番(髙江麗央)から始まるので、そこにボールが入ったときは意識して早くつぶしに行こうと思っていました。セカンドボールをどちらが拾うかで、攻撃の回数が変わる。セカンドボールはいちばん意識しているところです。その部分で相手より上回れたのはよかった」(④大崎)

東福岡の⑩藤川(ジュビロ磐田加入内定)が「相手の4番(大崎)と8番(原田)の守備が速くて、2人で挟みに来るのでやりづらかった。ツーシャドー(⑩藤川と⑪髙江)とボランチ(⑥鍬崎祐弥)のトライアングルをうまく使えれば、もっと相手を惑わせられたと思うけど……」と悔しがったが、J内定コンビを彼らが封じたことが、勝因のひとつであることは間違いない。

東海大仰星の中務雅之監督も、殊勲のダブルボランチに対して「(東福岡は)中央に能力の高い選手がいますが、彼らに怯むことなく立ち向かってくれた」と賛辞を与えた。

東海大仰星の準決勝の相手は、青森山田に決まった。東福岡同様、攻撃に定評のあるチームであり、中盤にはジェフ千葉内定のMF⑩高橋壱晟がいる。

エースキラーの④大崎が「⑩高橋壱晟くんは攻撃のキーマンなので、今日以上に仕事をさせないようにしたい。僕がやられたら、相手のチャンスになる。相手にチャンスができるのは自分の責任だと思ってやりたい」と闘志を燃やせば、相棒の⑧原田も「良い経験になるので、すごく楽しみ。全国でも守備は通用すると思う」と言葉に力を込める。

準決勝で青森山田が攻めあぐねることになったとしたら、要因はこのダブルボランチにあるだろう。東海大仰星、躍進のキーマンであり、チームの命運を握る二人から目が離せない。

監督・選手コメント
東海大仰星
中務雅之監督

前半は風が強くて、前に行くことが難しかった。後半にうまくゴールを奪ってくれて良かったです。風下の前半を無失点で抑えられたことが1つのポイントでした。東福岡はアタッキングサードでのパフォーマンスが非常に高いチーム。前半は辛抱をしようと、ベンチサイドから声をかけました。ハーフタイムには、前半は攻撃の数が少なかったので、自信を持ってやろうと言いました。東福岡の攻撃は、ワイドオープンでの関わりや全体的なバランスのずらし方。その対応で慌てないという話をしました。

④大崎航詩
昨年度の優勝チームに勝てたことは自信になります。試合前は攻められる時間が長くなるのでしっかり耐えて、少ないチャンスをものにしようと話をしました。個々の能力は相手が上ですが、1人に対して2人、3人と足していけば絶対にボールを奪えると思ったので、バランスを保ちながら人数をかけて守備をして、攻撃につなげた結果、セットプレーから点を取ることができました。今日の出来は、相手の⑪髙江君にシュートを打たれたので60点ぐらいです。

⑧原田紘汰
相手の個人能力が高いので、一人がボールに行って、もうひとりがカバーに行くというバランスを意識しました。後半、相手の10番(藤川)にシュートを打たれた場面がありましたが、ディフェンスが体を張ってくれるし、キーパーも止めてくれるだろうと信頼していました。自分たちはあまり失点をしないので、先制点を取れればと思っていました。次の相手(青森山田)は強敵ですが、良い経験になるのですごく楽しみです。

⑩松井修二
東福岡の対策というのは、この1カ月間しっかりとやっていたので、そこが試合に表れたのかなと思います。チームとしてやるべきことを徹底して試合で出せたので、それが結果につながりました。東福岡のストロングというところでは、⑪髙江麗央であったり、2年生の⑱福田湧矢であったりが調子がよかった。彼らにはやらせないということをチームとしてやってきました。それに、ひとりひとりの特徴というのがあり、⑩藤川虎太郎であったり、③小田逸稀の高さであったりというのを警戒していました。そこは抑えられたかなと思います。相手は前半から中央で崩したいという部分が見えました。後半には⑪高江がサイドへ出て数的優位を作って攻撃したいということはわかっていました。⑪高江は左サイドからの攻撃が得意なので、そこを抑えればなんとかなるかなと思っていました。そういう意味で彼に仕事をさせなかったところはよかったです。一人が抜かれてもほかの選手が助けるというところは日々のトレーニングでも意識していて、僕らは組織力を1年間磨いてきたので、それが試合に出てよかったです。

東福岡
森重潤也監督
残念な結果に終わってしまった。前半は風上に立っているところから、ゴールに対する貪欲さが足りなかった。後半に向けて、先取点を取りたいということで、ゴールに対する意識を高めていこうと伝えました。相手のプレスに対して、前に行くという気持ちからドリブルが多くなってしまい、局面で数的優位を作りながらという崩しにはならなかった。ボールの失い方が悪い分、相手ボールになったときに押し戻されてしまう。サイドでパスをつなげずにタッチラインを割ってしまい、相手のロングスローで再開するといったように、相手のペースになってしまったところがあった。ブロックを敷いて守る相手を崩し切る、攻撃力が足りなかったと思います。

⑩藤川虎太朗
自分たちのサッカーができなかったことが、いちばんの敗因です。自分のプレーは今大会全然ダメでした。なぜダメだったかをしっかり考えて、次のステップに生かさなければいけないと思います。コンディションは問題なかったのですが、相手の寄せが速く、シュートを打つ前のプレーができませんでした。

③小田逸稀
試合終了のホイッスルが鳴った瞬間は、高校サッカーが終わったなと思いました。3年間、仲間と厳しい練習に耐えて、日本一になろうと頑張ったのに、それが終わってしまって申し訳なかったです。(プロに進むが)今よりも厳しい環境に行くことになります。今日の自分はチームのために何もできなかったので、チームに必要とされるサイドバックになっていきたいです。

④児玉慎太郎
失点してしまってから、どうしても勝ちたいという思いが強くなってしまいました。本当は落ち着かせるのがよかったんですけど、チームとして気持ちが前に出すぎてしまって負けてしまったんじゃないかなと思います。正直なところ、個人の質としては全然負ける気がしませんでした。大会に入る前から、それなりの努力はしてきたつもりです。チームとして戦ったときの難しさ、相手のしたたかさに苦戦する場面がありました。今日はそれにやられてしまいました。

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