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第90回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム

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トーナメント表
大会概要
2012/1/8

第90回全国高校サッカー選手権大会 準決勝 四日市中央工-尚志

菊地芳樹(本誌) 取材・文

12年1月7日(土)/14:20キックオフ/東京都・国立競技場/観客22201人/試合時間90分

四日市中央工
2-0
4-1
尚志
國吉(前半35分)
田村翔(前半41分)
松尾(後半20分)
浅野(後半32分、後半44分)
オウンゴール(後半44分)
得点者 山岸(後半37分)

一進一退の攻防の後、前半35分に四日市中央工が左CKのサインプレーから⑰國吉が先制すると、41分にも⑨田村翔が裏へ抜け出し追加点。尚志は後半、前に出て点を取りにいったが、逆に四日市中央工に2点を追加されてしまう。37分に⑨山岸のミドルが決まって1点を返したものの、その後も勢いの止まらない四日市中央工が終了間際に立て続けに2点を挙げ、結果6-1の大差で四日市中央工が勝利。1991年度の第70回大会以来、20年ぶりに決勝へ進出した。

四日市中央工攻撃陣爆発
20年ぶりの決勝進出

 立ち上がり、尚志はトップ下に入る⑨山岸祐也が絡んだ展開で数度シュートチャンスを作るも、ゴールが決まらず。次第に相手のプレスに後ろの選手が思うような縦パスを入れられなくなり、⑨山岸にボールが入らなくなってくる。一方の四日市中央工は、2トップと両サイドMFの、4人のアタッカーによるドリブル攻撃が強み。だがこちらも、3人のボランチを使って中盤のスペースを消してきた尚志の守りにあい、4人にいい形でボールを預けられなかった。

 しかし、35分に四日市中央工はカウンターから⑨田村翔太が裏へ抜け出しGKとの1対1になる決定機。これは防がれてしまったものの、その後の左CKから先制点を挙げる。キッカーの⑱田村大樹がゴールライン沿いにグラウンダーのボールを出し、走り込んできた⑯浅野拓磨が左アウトでマイナス方向へフリック。ここに⑰國吉祐介がフリーで入ってきてシュートを打つサインプレーだった。四日市中央工は41分にも右サイド⑧寺尾俊祐のクロスに⑨田村翔が抜け出す。球際でGKとの争いになったが、こぼれたボールにいち早く反応しゴールを決め、2点のリードでハーフタイムとなった。

 尚志DF陣のラインコントロールに幾度となくやられていた四日市中央工の2トップだったが、うまく抜け出せたときは持ち前のスピードを生かして、一気にゴールへ迫って得点に結びつけた。「相手がトリプルボランチで中に絞っていたので、両サイドのMFとSBが空いて攻撃の基点になれるだろう。そこから2トップが裏へというイメージ。それがうまくいったのだと思う」(樋口士郎監督)

 後半、尚志は⑨山岸をFWに上げ、両サイドからのクロス攻撃を繰り返したがチャンスが生まれない。しばらくすると前掛かりになる尚志に対して、逆に四日市中央工がカウンターを中心にチャンスを作り始める。活躍したのはFWの⑯浅野拓磨だった。20分。右からのクロスをゴール前で受けて、一度切り返してから左足シュート。これはDFにブロックされたが、こぼれ球に反応した⑦松尾和樹が鮮やかなミドルシュート決めて3点目。さらに32分。今度は⑯浅野が右サイドからカットインでスルスルっと中へ入り、左足でインカーブシュートをファーサイドへ決める。4点目が入り、試合の大勢が決まった。

 FWの⑩福永祐大を入れていた尚志は、それでもDFの④大貫峻士を前線に挙げてパワープレーを試みる。そして37分に左クロスからのゴール前の競り合いのこぼれを、⑨山岸がペナルティーエリア外からミドルで決めて、遂に1点を返した。東日本大震災の被災地である県の代表として今大会注目された尚志。「福島県に勇気と感動を与えようを合言葉にやってきたが、最後に希望の1点が取れたのではないかと思う」(仲村浩二監督)

 だが、四日市中央工も、一度暴れ出した⑯浅野が止まらない。44分。自陣から左サイドをドリブル突破して、そのままシュートを決めると、さらに最後⑯浅野絡みの攻撃から相手のオウンゴールとなり、2点を追加し大差をつけた。

 震災の影響で練習環境が制限され、かなり苦しいシーズンを余儀なくされた尚志。今季参加したプレミアリーグでは負けが続き、試行錯誤の中で生まれてきたのが今大会の堅い守備からのカウンターサッカーだった。「それが高校選手権という一発勝負のトーナメントにはまったのだと思います」と仲村監督は分析する。「あきらめない心と姿を(福島)県民の人たちに見せたかった」(⑤三瓶陽キャプテン)という姿勢は、多くの人に響くものがあっただろう。立派なベスト4だった。

 決勝に進出した四日市中央工は、先発メンバーのうち、3年生が3人、2年生が6人、1年生が2人と若いチーム。2年生にタレントが多いのは、この代の選手たちが高校進学時に県外にあまり流出しなかったからだという。「三重県のタレントがしっかりと集まれば全国で戦えるんです。だからみんな残れと(笑)。これは書いとってください!」というのは、準々決勝勝利後の樋口監督のコメントだ。

 樋口監督曰く「まだイケイケでしかサッカーができていない」という2トップの⑯浅野、⑨田村翔を擁するスタイルは、確かにツボにはまれば、スピーディーで迫力があり、立て続けにチャンスを作れる力があるので魅力だ。アタッカーの4人はボールを持つと、敵に向かっていきながら仕掛けられるのが大きい。それで相手のDFラインを下げて、先手を取って攻めることが可能になっている。

 ところが決勝では、チームにとって「心臓以上のもの」(樋口監督)というキャプテンの3年生⑰國吉が出場停止と苦しい状況。アンカーの位置で相手の攻撃の芽を果敢につぶしまくりながら、長短のパスを使って後ろと前をつなげていた選手だった。「(チームメートには)、自分たちのやってきたことを出してほしいです」と⑰國吉。

「フィジカルが強く、高さのある市立船橋に対して、ウチはグラウンダーのパスで勝負しないとしょうがない」と樋口監督。大黒柱がいない中で自分たちのサッカーに持ち込むには、残ったメンバーの共通意識として「怖がらずに攻められるかが勝負」(樋口監督)になる。


(監督・選手コメント)
四日市中央工・樋口士郎監督

我慢の展開でしたが、セットプレーで練習の形から1点取れて、気持ちが楽になったという感じです。2トップはスペースがあれば高校サッカーのレベルではある程度プレーできますが、Jのユースなどと戦うとまだ通用しません。サンフレッチェ広島やヴィッセル神戸と試合をしましたが、まったく次元が違うんです。ただ、このひのき舞台で戦うことで、U-19になったときに上になれるような意気込み、観点で指導してます。

四日市中央工・⑯浅野拓磨
3点目も欲しかったです。市立船橋にはチャレンジャーとして当たれるので、いい対決になると思う。パスをしっかり回す自分たちのプレーができれば、勝てる試合だと思います。みんなが一人一人頑張り、自分が1点取って絶対に優勝したいです。自分たちが100パーセントの力を出し切って、自分たちの新しい伝説を作りたいです。

四日市中央工・⑨田村翔太
⑯浅野は1年生のときからスーパーサブとして試合に出ていて、僕は負けたくない、追い越してやろうと思ってここまで来ました。チーム内に争える相手がいるのはいい環境だと思います。決勝は出られるない選手もいるので、一体感を出して戦いたいです。

四日市中央工・③西脇崇司
国立でのプレーはすごくうれしかったし、自分のプレーが出せたと思います。決勝は2校しか出られない重みを感じながらも楽しみたい。自分がキャプテンマークをつけますが、声を出して出られない選手の分も頑張ります。市立船橋とは12月に対戦して1-2で負けたのですが、後半は圧倒していたので自信を持って戦いたいです。

尚志・仲村浩二監督
相手の2トップが速いのは分かっていましたが、先に点を取られたことで1点を取りに前に出なければいけなかった。その裏を突かれてやられてしまった感じです。この1年は、2度とないだろうという経験をし、苦しかったですけれども、すごく思い出に残る大会になったのではないかと思います。これからもウチだけでなく、福島県のチームで全体で頑張って、福島県に元気を与えていきたいです。

尚志・⑤三瓶陽
いちばんの目標は全国制覇でしたが、ベスト4になってしまいました。ただあきらめない心をテーマにうやってきたので、その点ではよかったと思います。プレミアリーグでJの下部組織のチームと戦い、負け試合が多かった。その中、守備的なシステムで戦い、辛い時間をどれだけ頑張れるかとやってきたのですが、それが選手権で生かせたと思います。

尚志・⑨山岸祐也
先制されても大丈夫という雰囲気でしたが、2点目を取られ、3点目を取られて、パワープレーもうまくはがされて、相手の攻撃にはまってしまったところがありました。今はすごく悔しくて、今すぐもう1回試合をしてリベンジしたい気持ちです。今大会は特別な年だったので優勝したかった。ハーフタイムではあきらめないで戦おうといっていました。そこで1点取れたのは次につながると思います。

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