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Match Report マッチレポート

第90回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム

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トーナメント表
大会概要
2012/1/9

第90回全国高校サッカー選手権大会 決勝 市立船橋-四日市中央工

小池正人(本誌) 取材・文

12年1月9日(月・祝)/14:09キックオフ/東京都・国立競技場/観客43884人/試合時間90分(延長20分)

市立船橋
0-1
1-0
延長
0-0
1-0
四日市中央工
和泉(後半46分、延長後半4分) 得点者 浅野(前半1分)

立ち上がり、四中工は右CKのファーストチャンス。ゴール中央にこぼれたところを⑯浅野拓磨が蹴り込んで、早々と四中工が先制する。フィジカルの部分で勝る市船は、特に後半終盤にかけてジリジリと圧力を増していく。ロスタイム、執拗に繰り返すCKから⑩和泉竜司が押し込んで、土壇場で市船が同点に追いつく。延長後半4分、市船はペナルティーエリア内左でボールを受けた⑩和泉がDF1人を巧みにかわして右足シュートをブチ込み、大激戦にピリオドを打った。

名門同士のファイナルは
激闘・劇的な名勝負に

 野球では、1回に取った1点が徐々に重たくなっていき、結局「スミ1」=1-0という試合がときどきある。多くの人が、この「野球事象」をイメージしたに違いない。市船の朝岡隆蔵監督が試合後、「立ち上がりや得点直後の失点が多いチーム」と話していたが、四中工の『先頭打者ホームラン』は、気持ちの部分で試合に入りきる前に、ピッチャーが不用意にストライクを取りにいったところをたたかれた一発、という印象だった。

 前半開始1分足らずの右CK。173センチの③西脇崇司がニアサイドで179センチの市船⑤鈴木潤に競り勝ち、ファーへつながったボールを⑨田村翔太がシュート。GKに当たってこぼれたところを⑯浅野拓磨が蹴り込んだ。

 貴重な1点。四中工にしてみれば、あと1アウト、あと1ストライクでこの1点を守りきれるというところまで市船を追い詰めたのだが……。

 四中工先制後、両チームともメンタル、フィジカル充実の攻防が続いていく。

 四中工にとっては、キャプテンでアンカー、樋口士郎監督が「チームの心臓」と評価する⑰國吉祐介の、警告累積での出場停止が大きなポイントだった。「チーム全員が穴を埋めようと強い気持ちを持ってくれた」(樋口監督)こと、また代わりに入った25生川雄大が、『控え選手』という印象を全く感じさせない働きで機能したことが、90分間、市船を苦しめ続ける原動力になった。

 ⑨田村、⑯浅野の2人が前線をかき回し続けつつ、右も左もサイドではMFとSBが連動。中央から、サイドから、そして一発でグサッと仕留める狙いのカウンターと、多彩な攻撃のバリエーションを四中工は披露した。それを遂行するだけの高い技術もあった。そのことが、多くのチームが屈していった市船の高圧的ともいえるスタイルを薄める結果につながった。

 一方の市船も、グイグイ仕掛けるプレス、⑨岩渕諒のポストプレー、シュートまで結びつけて獲得するCKと、自分たちの武器を生かすべく戦った。だが、91分目までゴールが生まれなかった、自発的な、おもに攻撃面での要因は、⑩和泉の出来が今一つだったことと、それも含めて、フィニッシュワークに持っていく最後の部分の1プレーや工夫がうまくいかなかったこと。⑩和泉はなんとなくボールフィーリングがしっくりいっていなかった印象で、ドリブル、パスともにミスが多かった。

 だが、その⑩和泉が、それでも同点、勝ち越しゴールという決定的な仕事を、最後の最後にやってのける。準決勝から中1日で迎えた決勝は延長まで110分間の大激戦。そんな厳しい状況下を全力で戦いきる中で、しっかりと結果を残した。

 圧巻だったのは延長後半4分の決勝ゴール。ペナルティーエリア内左でボールを受け、左足でシュートの体勢へ。懸命にブロックにくるDFを、キックフェイントからのクライフターンでかわし、右足でニアサイド上へズドンと決めた。トータルタイム104分のことだ。それだけの時間、気力も体力も100パーセントのプレーを続けてきた中で、慌てず、クールにDFをキックフェイントのワナにかけ、バランスよく正確にクライフターン。さらにダブルタッチ気味に右足のアウトを添えてセンター方向に持ち出して、たとえDFがリカバリーしてきても絶対に届かない位置にボールを置く。そして仕上げのニア上ズドン。疲労はピークのはずだが、思いっきり踏ん張りを利かせて腰を回し、ファーサイドではなくて、アングルがつくことでGKが反応しにくいニアへ決めきる強靭(きょうじん)さがまだあった。メンタル、フィジカルともに、本当に「スゲェなぁ」と思わされた。

 四中工にしてみれば9回裏を締めくくり、1点を守りきる戦いができなかった。もしキャプテン⑰國吉がいたら、セットアッパー役をどうやって務めただろうか?

 昨夏のインターハイベスト4がすべて予選で敗れ、今大会も山梨学院大付、青森山田、作陽と、ここ数年、上位進出の常連だったチームが早い段階で姿を消す。一方で、尚志、大分、桐生第一、市立西宮などの躍進はフレッシュな印象を受けたが、そんな大会のファイナルで見せてくれたのが高校サッカー界の名門同士、市船vs四中工の激闘だった。数年後、「90回大会の市船vs四中工を見て、自分も絶対にこの舞台に立ちたいと思った」という、現小中学生の高校生がきっと現われているに違いない。


(監督・選手コメント)
市立船橋・朝岡隆蔵監督

本当に強い心を持った選手たちだと改めて感じた。選手たちを心からたたえたい。感謝の言葉しかない。表彰式でスタンドを上がる選手たちを見て、夢かと思った。そのくらいたいへんなことを成し遂げてくれた。

市立船橋・⑩和泉竜司
今までやってきた、自分たちの力を発揮できてよかった。相手の2トップの得点力があること、サイドバックが上がってくることを注意して、そのスペースをうまく使っていこうと話してました。相手は背が小さいので、セットプレーは勝てると思ってました。僕は小さいので、常にこぼれ球を狙ってました。(同点ゴールは)それでいいところにこぼれてきたので、あとは決めるだけでした。先制されたけど、初戦(2回戦)でも早い時間帯に失点したので、そのときの経験が生きた。スタミナには自信があったので、延長戦に入れば勝てると思った。決勝点は、シュートまでイメージどおりだった。自分でもびっくりしたくらいです。コースをしっかり狙って打ちました。最後まであきらめることなく戦えました。本当にいいチームでプレーできてよかったです。

市立船橋・③種岡岐将
このチームはよく開始直後に点を取られていた。初戦でも。だから、意識して守っていたけどやられてしまった。でも前の選手を信じて、これ以上失点しないように頑張りました。相手は、遠めからのシュートや、難しいことをしてこなかった。きれいに崩そうとしていたので、逆に守りやすかった。この感覚をまた来年も絶対味わいたいです。

市立船橋・⑨岩渕諒
準決勝では自分ところにボールが収まらず、監督から「出し惜しみしているのか」といわれていたので、今日の試合に入る意気込みは強かったです。前半はCKが取れていなかったけど、後半は取れるようになって、チームに勢いがつきました。優勝して自分たちで歴史を作りたかった。周りからも「昔は強かったね」といわれていたので。

市立船橋・⑧杉山丈一郎
失点は早い時間だったので、そのときはまだ焦りはありませんでしたが、後半の終盤は焦りました。ウチはセットプレーでチャンスを作れるので、CKを取る意識がありました。全部入る雰囲気だったんですけど、1本入ったよかったです。

四日市中央工・樋口士郎監督
アンカーで、心臓部である⑰國吉がいないところをどうしようかと思ったが、攻撃のよさを出したいと思い、そのまま25生川を入れた。⑰國吉の穴を感じさせず、よく頑張った。市船はフィジカルや交代選手の能力が高く、こらえきれずに失点してしまったが、四中工とすれば、精いっぱいのプレーをしてくれた。

四日市中央工・⑯浅野拓磨
市船の高さのあるパワープレーは厳しかった。僕のこれからの課題は決定機をきちんと決めることです。そして、自分のところにボールを収めて、攻撃の基点になれるようなプレーをしたいです。

四日市中央工・⑨田村翔太
先制できたのはよかったんですけど、2点目が取れませんでした。追いつかれたときは1-1になっただけなので、焦りはありませんでした。ただ、最後に決勝点を決められたのは悔しかった。

四日市中央工・⑱田村大樹
早い時間帯に点が取れて、自分たちのゲームがやれたんですが、後半は相手のロングボールを跳ね返し切ることができませんでした。セットプレーでは相手の背が高いので、スピードがあるボールを入れようと思っていました。得点のシーンはあまりいいキックではなかったんですけど、中の選手がいい感じで入れてくれました。勝って終わりたかった。最後の試合で負けてしまって、悔しいです。

四日市中央工・②坂圭祐
最後押し込まれて失点したのは、カバーが間に合いませんでした。本当に悔しいです。2年生、3年生に引っ張ってもらって、僕自身この大会では何もできなかった。来年活躍できるように、1対1の守備やポジショニングを磨きたいです。

四日市中央工・③西脇崇司
キャプテンとして、ピッチに入る前は責任を感じて緊張した。でも、ピッチに入ってからは、カバーリングや声出しなど自分のプレーはできました。試合前には、みんなで悔いのないように頑張ろうと話した。自分たちのペースで試合に入れた。前半のうちに2、3点欲しかった。1点では危ないのはわかっていたから。だんだん市船ペースになって、相手のサッカーに合わせてしまい、つながずにロングボールが増えてしまった。そこがよくなかった点。

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