11年1月5日(水)/12:05キックオフ/神奈川県・ニッパツ三ツ沢球技場/観客2976人/試合時間80分+PK戦 |
| 久御山 |
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関西大学第一 |
| 塚本(前半24分) |
得点者 |
井村(後半17分) |
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| 久御山は前半24分、CKから④塚本がヘディングシュートを決めて先制。しかし後半、関西大学第一は⑩井村がゴールを決めて同点、そのまま1-1でPK戦へ突入する。久御山は2人目の⑭足立が外して1点リードされるものの、あきらめずに食らいつき、3人目で同点、5人目で逆転、奇跡の勝利を収めた。 |
「ウチは勇気を持ってパスをつなぐことに徹底的にこだわる。それで負けるなら本望だ」(久御山・松本悟監督)
「いつもバスの中でバルサの試合を見ている。大会中はずっとクラシコ。特にシャビとイニエスタのプレーを見ている」(久御山・⑭足立拓眞)
久御山は、バルセロナを理想とするポゼッション志向チームである。システムは4-3-3、中盤がダブルボランチとなる形だ。全体が大きく広がって、中盤にスペースを作り、⑭足立を中心にビルドアップしながら、3トップにできるだけ有利な状態でボールを渡す。
セオリー破りとされるゴール手前を横切るようなパスでも、必要であれば出す。たとえ自陣のペナルティーエリア内であってもパスをつなぐ。インターセプトされてピンチを招くこともあるが、それでもつなぐ。
選手権は一発勝負の世界であり、失点のリスクを極力避けようとしてロングボールを使うチームが多いのだが、久御山はそれらとは全く違う信念を持つ。パスをつなぐことに徹底的にこだわり、1回戦から準々決勝まで、その一途な思いを貫いてきた。
……いや、1回戦からどころの話ではない。
実は、久御山の松本監督がパスをつなぐスタイルにこだわり始めたのは、もう30年以上も昔のことなのだ。
「ハッキリとこだわりを持つようになったのは、静岡学園の井田さんのチームを見たときから。浦和南と決勝を戦ったとき(1976年、第55回高校サッカー選手権)。そのとき自分は現役で出場していて、高校生がこんなにやるのかと驚いた。パスをつなぐことによって、相手を体力的にも精神的にも疲れさせて、本来の力を半減させられる。相手はゴールに近づいたときのプレーの精度を欠くことにもなる」(久御山・松本悟監督)
静岡学園にルーツを持つ、久御山のポゼッションへのこだわり。ポゼッションを行う上で、最も大切なのは落ち着きである。ちょっとプレッシングされただけでバタバタ慌てるようではパスはつなげないが、30年以上の伝統がある久御山の選手からは十分な落ち着きが感じられた。
ただし、関西大学第一もそれは百も承知だ。
「相手にボールを回されるのはわかっていたので、不用意に飛び込まずに、回させておけばいいと。ボールに食いつかないようにとはいった。ミーティングでは、相手の⑩坂本樹是や⑭足立がカギになると思っていたので、飛び込まずに食らいついていけと。そこは徹底したつもりだったが……。全体的に見て、ディフェンスがよくなかったと思う」(関西大学第一・佐野友章監督)
関西大学第一のシステムは4-4-2。久御山のポゼッションに対してプレスをかけながらも、深追いをしないように、時折ディフェンスラインからは「行くな! 下げろ!」という声が前線に向かって飛んでいた。これがなければ全体が間延びしてしまい、スペースを自由に使われてしまう。プレッシング意識を持ちつつも、バランスを崩さないように気を使っていた。
ここまでは、それほど問題がないように見えた。実際、久御山はボールポゼッションした時間の割りには敵ゴールに近づけておらず、前後半で9本しかシュートを打てていない(関西大学第一は4本)。
しかし、中盤でサイドに追い込んでボールを奪うとき、関西大学第一は、ディフェンスラインと、縦のラインが『L』の字のようになり、ワンサイドでボールを奪い切れずに突破されるとき、ガラガラの中央のスペースを使われるシーンがあった。
その大きな原因は、逆サイドハーフの⑦浅井哲平と⑤濱野友旗がそのままディフェンスラインに吸収されて5バックのようになってしまったことだろう。ボランチが2人ともワンサイドに寄ってプレスするので、逆サイドハーフは大外に広がっている敵ウイングを捨てて、よりゴールへの危険性が高い中央をカバーする意識が必要だったのではないかと思う。
ただし、関西大学第一もディフェンスゾーンでは集中して体を張って守り、また、久御山のシュートやラストパスも精度を欠いたため、前半半ばまでは両チーム無得点で、大きなチャンスも少なかった。
ここで大きな効果を発揮したのが、セットプレーだ。
前半24分、久御山は2回戦の座間戦での決勝点と全く同じ形、キッカー⑭足立の左足での右CKから、ニアサイドで④塚本健介がヘディングシュートをたたきつけて先制。ポゼッションに注目が集まる久御山だが、実はセットプレーが重要な得点を挙げていることも確かだ。
1-0とリードを奪った久御山だったが、後半に入ると、関西大学第一もギアを入れ替えて攻撃に転じる。
後半17分、⑨梅鉢貴秀のドリブルカットインがDFに当たって跳ね返ったボールが、久御山の選手にもう一度当たり、なんと関西大学第一のFW⑩井村一貴の元へぽろり。⑩井村はこのチャンスボールを決めて同点に追いつく。試合はそのままPK戦へ。
PK戦は、先攻を取ったチームが有利といわれている。
余談ではあるが、研究機関の調査でも、豊富なサンプルに基づく先攻チームの勝率は60パーセントとデータでも証明されており、PK戦前のコイントスに勝ったチームの90パーセント以上は先攻を選ぶ。どうしても後攻のチームのキッカーは、ポイントを先行されて「相手の得点に追いつかなければならない」と、心理戦で無意識のうちに自分にプレッシャーをかけてキックに悪影響を及ぼしてしまう傾向があるのだ。
この不公平を是正すべく、近年のサッカー界は、PK戦の先攻と後攻を入れ替えながら蹴る、テニスのタイブレーク式の導入が検討されている。先攻と後攻にパフォーマンスの差が生まれるのを防ごうというわけだ。
ところで、今回勝利した久御山は後攻だった。
しかも2人目の⑭足立が外したことで窮地に陥ったが、関西大学第一の3人目⑦浅井が外し、久御山の3人目⑬山本大地はプレッシャーのかかるキックを決めて再び同点に追いつく。さらに4人目はお互いに決め、5人目は関西大学第一の⑨梅鉢が外し、最後は⑪安川集治が決めて久御山が逆転勝利を収めた。
先攻の関西大学第一は常にリードした場面、あるいは同点場面でのキックだが、久御山は常にビハインド、決めなければ追いつけない、というプレッシャーがかかる中で蹴った。
ただでさえ、先攻チームよりも強くかかるプレッシャー。それを跳ね除け、ビハインドの展開をひっくり返した、そのメンタルパワーは素晴らしい。
試合後に久御山の監督、選手に話を聞くと、メンタル論について面白い話をしていた。
「(PK戦の前は)みんなに念力を与えて、元気よくいこうぜといった。お互いに盛り上がってハメを外しておいて、悪い場面が来ても落ち込まないように。メンタルトレーニングはずっと行ってきた。たとえ外しても、まだ終わってない。マイナスに考えると体力の消耗も激しくなる。うなだれるんじゃなくて、悪いことをサッと忘れてプラス思考で、切り替えを早くする。昔はPK戦になると、ああ怖いと思っていたが、今はあきらめない。あきらめたら相手にも失礼だし、最後まで戦う。そういう思いが運を呼び寄せる」(久御山・松本悟監督)
「PKを外したときは、頭が真っ白になった。だけどみんなに顔を上げろ、笑え、といわれた。同点に追いつかれても、みんな笑っていた。常に笑顔、緊張はしているけど、常に前向きになれば、運も回ってくる。みんなのおかげで次につながったので、謙虚な気持ちで臨みたい」(久御山・⑭足立拓眞)
たしかに、久御山の選手たちは常に笑顔でプレーしている。PK戦前にも大きな笑い声が聞こえてきた。
ポゼッションを保つ上で必要な落ち着きも、PK戦の後攻&ビハインドという不利を跳ね飛ばした奇跡も、この久御山ならではのメンタルパワーが根底にあったのは興味深い。
サッカーの奥深さがぎっしり詰め込まれた素晴らしい試合だった。
(監督・選手コメント)
久御山・松本悟監督
立ち上がりを落ち着いて入れた。今までゲームをこなす中でパスをつなげる自信がついている。ディフェンスが広がって中盤のスペースを作って、パスをつなげたことが勝因。得点シーンに関してはズバッと侵入されたが、パスをつなぐことによって相手を精神的に疲れさせて、本来の力を半減させられる。ゴールに近づいたときのプレーの精度を欠くことにもなる。
PK戦、⑥二上浩一はメンバーに考えてなかった。⑲東松孝治を考えていたが、⑥二上がオレにやらせてくれと。二上はキープ力もテクニックもあるけど、ときどきとんでもないところに蹴ることがある。追いつかなきゃいけない場面で、すごくビクビクして見ていた。
メンタルトレーニングはずっと行ってきた。マネージャーにいって、スラムダンクと、スラムダンクの勝利学を無理矢理読ませた。だけど、教室に持って来たら罰金やぞと。うちは遅刻したら500円、罰金制度にしている。そのほうが明るく怒れる。「(罰金取れたら)毎度ありがとう」みたいな。オランダでは少年でも罰金制度にしているらしい。もちろん最終的に払うのは親だが、子供もおこづかいが減ったり自分自身が痛む。ただ、最近はお金が集まらない。高校生なのでいつまでも変わっていける。
久御山・⑭足立拓眞
先制点は狙いどおり。僕から見たら、ニアが空いていたので④塚本と合わせて狙った。相手の運動量があるので、ちょっとでも体力を削ろうと。同点に追いつかれても、みんな笑っていた。常に笑顔、緊張はしているけど、常に前向きになれば、運も回ってくる。進路はまだ決まっていない。大学でサッカーをしたい
関西大学第一・佐野友章監督
全体的に見て、ディフェンスがよくなかったと思います。前半は相手のサッカーにはまってしまいましたし、うちのサッカーができなかったと思います。ケガ人を抱えて大会に臨んだので、正直、いっぱいいっぱいでした。
PK戦の5人のメンバーは私が決めたが、順番は選手たちが決めた。PK戦については仕方ない。梅鉢は試合を通じてPKは外していないですし、本人は自信を持っていたので。結果については仕方ない。PKは苦手という意識はあるので、練習はしていましたが、こういう一発勝負の緊張の中でやるのはかわいそうだった。このままでは、これまでやってきたことが実らないぞといった。もう一度、うちのサッカーを思い出してやらないといけないといった。大きな声で怒鳴ったわけではない。向こうのチームは、一人一人がうまかった。久御山のほうが大人のサッカーをしていた。
関西大学第一・⑨梅鉢隆秀
蹴り合いのサッカーになってしまった。試合を落ち着かせることができず、守備に追われる時間が多かった。もっとボールに絡めればよかった。セットプレーから失点して、チームが動揺していたことがわかったので、気合いを入れ直したが……。(PK戦に関しては、)自分が最後に蹴るといった。最後に蹴る選手にはプレッシャーがかかるので、自分しかできないと思っていた。自分がやるしかないと思っていたが、今まで1年間PKを外したことはなかったのに、この舞台で外してしまうというのは、自分の実力がないのだと思う。1年前と同じ状況で同じ失敗をしてしまったので、成長できていなかったと思う。成長した姿を見せたかったので、自分が情けなかった。
関西大学第一・①樫根啓人
チームの期待に応えることができなくて、不甲斐なさでいっぱい。「PK戦では負けていなかった。GKコーチがいるので、宮崎での合宿では20本~30本はPKの練習をしていた。この大会中もやっていた。 |